目次

  1. 1. 1億円の相続税はゼロ~最大約1464万円
  2. 2. 相続税の基本的な仕組み
    1. 2-1. 基礎控除を超えると相続税がかかる
    2. 2-2. 相続税の計算方法
  3. 3. 1億円の相続税はいくらかかる? ケース別シミュレーション【早見表で解説】
    1. 3-1. 相続人が「配偶者と子ども1人~4人」の場合
    2. 3-2. 相続人が「子ども1人~4人のみ」の場合
    3. 3-3. 相続人が配偶者のみの場合
    4. 3-4. 相続人が「故人の兄弟姉妹(1人~4人)のみ」の場合
    5. 3-5. 相続人が故人の親のみの場合
  4. 4. 【知らないと損】相続税が減らせる特例や制度
    1. 4-1. 【影響大】配偶者の税額軽減を活用する
    2. 4-2. 【影響大】小規模宅地等の特例を活用する
    3. 4-3. その他の控除を活用する
  5. 5. 生前からできる相続税対策
    1. 5-1. 年間110万円以内の「生前贈与(暦年贈与)」をする
    2. 5-2. 相続時精算課税制度で贈与する
    3. 5-3. 贈与税のかからない特例を活用する
    4. 5-4. 不動産を購入する
    5. 5-5. 生命保険を契約する
    6. 5-6. 養子縁組をする
  6. 6. 相続税の申告と納付のポイント
    1. 6-1. 申告と納税の期限は「死亡を知った日の翌日から10カ月以内」
    2. 6-2. 申告漏れや遅延には追徴課税が発生する
    3. 6-3. 納税は「現金一括」が原則
  7. 7. 相続税を抑えたいなら、二次相続までの考慮が大切|トータルの税負担を減らす
  8. 8. 相続税対策と相続トラブル予防はセットで|遺言書が有効
  9. 9. 1億円の遺産を相続した場合に税理士に相談するメリット
    1. 9-1. 特に不動産などの資産を正しく評価してくれる
    2. 9-2. 適切な特例や控除を活用してくれる
    3. 9-3. 二次相続までを見据えた節税設計をしてくれる
    4. 9-4. 申告漏れや期限遅れによるペナルティーを回避してくれる
    5. 9-5. 税務調査に対応してくれる
  10. 10. まとめ 多額の遺産を相続する場合は税理士に相談を

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1億円の遺産を相続した場合の相続税は、ゼロ円から約1464万円の間で決まります。これほど大きな幅が出るのは、誰が相続するか、何人で相続するのか、どの控除や特例を使うのかによって、税額が大きく変わるためです。

たとえば、配偶者には「配偶者の税額軽減」という特例があり、配偶者が相続した財産のうち一定額までは税額が軽減されます。配偶者が1億円の遺産をすべて相続した場合はこの特例が遺産全額に及び、相続税はゼロ円となります。

一方、被相続人(亡くなった人)に子どもも配偶者も親もおらず、兄弟姉妹のうちの誰か1人だけが相続する場合は基礎控除額(相続税の計算で遺産総額から控除できる金額)が小さく、さらに「相続税の2割加算」というルールが上乗せされるため、相続税の額は最大で約1464万円となります。

また、配偶者と子ども4人で相続した場合は税額が225万円となるなど、両者の中間となるケースも幅広く存在します。

このように同じ1億円の相続でも、誰が、何人で、どのように相続するかによって税額に大きな差が出るのが相続税の特徴です。

相続税の額がいくらになるのか、という不安を解消するためには、まず自分の相続がどのケースに該当するのかを正確に把握する必要があります。

ここでは、相続税の基本的な仕組みについて解説していきます。

相続税には「この金額までなら相続しても税金はかからない」という非課税枠があり、これを「基礎控除」と呼びます。

基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出できます。

たとえば、父親が亡くなって妻と子2人の3人が法定相続人となる場合、基礎控除額は「3000万円+600万円×3人=4800万円」となります。父親の遺産が4800万円以下であれば相続税はかからず、相続税申告も不要です。

遺産の額が4800万円を超えている場合は、超えた部分が相続税の対象となります。たとえば遺産が1億円だった場合は「1億円−4800万円=5200万円」が課税対象額となります。

相続税の基礎控除を図解。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出する
相続税の基礎控除を図解。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出する

なお、基礎控除の「法定相続人の数」の数え方には細かいルールがあります。相続を放棄した人も法定相続人の数に含めます。一方、養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで含めるという上限があります。ただし、実親による養育が困難な子を実子として迎え入れる「特別養子」や、配偶者の連れ子を養子にしたケースは対象外で、これらの場合は実子と同じ扱いとなります。

法定相続人の数え方を間違えると基礎控除額も変わりますので注意してください。

相続税を計算するときは、次の3ステップを踏みます。

①遺産の総額から基礎控除を引き、課税遺産総額を算出する
②課税遺産総額を法定相続分で分けた場合の相続税の総額を計算する
③相続税の総額を実際の相続分で按分し、各種税額控除を行う

【STEP① 遺産の総額から基礎控除を引き、課税遺産総額を算出する】
前述のとおり、遺産総額から「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除を引き、課税対象となる遺産の総額を計算します。基礎控除額を超えた部分に相続税がかかります。

【STEP② 課税遺産総額を法定相続分で分けた場合の相続税の総額を計算する】
「法定相続分」とは、民法が定めた相続人ごとの取り分の目安を指します。たとえば、配偶者と子どもが法定相続人となる場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1です。子どもが複数人いる場合は、2分の1を人数で等分します。実際の相続割合は相続人同士の話し合いによって自由に変えられますが、相続税は法定相続分で分けたものとして計算します。

以下の「相続税の速算表」を使って、法定相続分で分けた場合の各人の相続税額を算出します。取得金額に応じて税率が10%から55%まで段階的に上がる仕組みになっています。

【相続税の速算表】
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

たとえば亡くなった父親の遺産が1億円で、相続人が妻と子2人のケースでは、課税遺産が5200万円となり、法定相続分は妻が2分の1の2600万円、子が残り2分の1を2人で等分するため、それぞれ1300万円となります。

これらの金額を相続税の速算表に照らし合わせて計算すると、妻の相続税額は「2600万円×15%−50万円=340万円」、子の相続税額はそれぞれ「1300万円×15%−50万円=145万円」となり、相続税の総額は「340万円+145万円×2=630万円」となります。

【STEP③ 相続税の総額を実際の相続分で按分し、各種税額控除を行う】
STEP②で算出した相続税額を、実際の相続分で按分します。たとえば、相続人全員で話し合って、1億円の遺産を妻が8000万円(遺産の80%)、2人の子どもが1000万円(遺産の10%)ずつ相続することにした場合、相続税の総額630万円を以下のように負担します。

妻:630万円×80%=504万円
子ども1:630万円×10%=63万円
子ども2:630万円×10%=63万円

ただし、妻は配偶者の税額軽減を適用できるため、相続税額はゼロとなります。このほかに利用できる各種税額控除については「4. 【知らないと損】相続税が減らせる特例や制度」で説明します。

ここからは、遺産総額1億円をもとに、相続人の家族構成ごとに相続税額がいくらになるかを、早見表で見ていきます。各早見表は、法定相続分で分けた場合の、相続人全体の税額合計を示したものです。

遺産を法定相続分で分けた場合、「配偶者の税額軽減」により、配偶者の相続税額はゼロ円となります。つまり、表の金額は子どもたちが合計で負担する相続税額です。

【相続人に配偶者がいる場合の子どもの相続税額】
遺産総額 子ども1人 子ども2人 子ども3人 子ども4人
5000万円  40万円 10万円 0円 0円
6000万円 90万円 60万円 30万円 0円
7000万円 160万円 113万円 80万円 50万円
8000万円 235万円 175万円 138万円 100万円
9000万円 310万円 240万円 200万円 163万円
1億円 385万円 315万円 263万円 225万円
1億5000万円 920万円 748万円 665万円 588万円
2億円 1670万円 1350万円 1218万円 1125万円

遺産が1億円である場合、子どもが1人であれば相続税額は385万円、子どもが4人であれば225万円となります。

子どもの人数が増えるほど基礎控除額が上がるうえ、法定相続分で分けた場合の取得額が小さくなることで適用される税率が下がり、結果として相続税額も下がります

配偶者がすでに亡くなっていて、子どもだけで相続するケースでは、配偶者がいないぶん法定相続人が減り、基礎控除も小さくなります。さらに、配偶者の税額軽減も使えないため、配偶者がいるケースと比べて税額は重くなります

【相続人が子どものみの場合の相続税額】
遺産総額 子ども1人 子ども2人 子ども3人 子ども4人
5000万円 160万円 80万円 20万円 0円
6000万円 310万円 180万円 120万円 60万円
7000万円 480万円 320万円 220万円 160万円
8000万円 680万円 470万円 330万円 260万円
9000万円 920万円 620万円 480万円 360万円
1億円 1220万円 770万円 630万円 490万円
1億5000万円 2860万円 1840万円 1440万円 1240万円
2億円 4860万円 3340万円 2460万円 2120万円

遺産1億円を子ども1人で相続した場合は1220万円、子ども2人では770万円、子ども4人では490万円の相続税がかかります。同じ1億円の遺産でも、配偶者が相続するケースでは子ども1人で385万円であるため、およそ約3倍の税負担となります。

被相続人に子どもや親がおらず、配偶者だけが相続する場合、相続税はかかりません。

配偶者の税額軽減は、配偶者が相続する遺産が「1億6000万円まで」または「法定相続分まで」のどちらか大きいほうまで非課税になる制度です。配偶者しかいない場合、法定相続分は100%となりますので、1億円の遺産はすべて配偶者の税額軽減でカバーされます。

ただし、税額がゼロ円でも相続税の申告が必要である点には注意が必要です。配偶者の税額軽減は、相続税の申告をして初めて適用されるものです。相続税がかからないから何もしなくていいわけではありません。

被相続人に子どもがおらず、親が全員亡くなっている場合は、兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹の相続税には「2割加算」というルールがあり、算出された税額に20%が自動的に上乗せされます。

下表は、被相続人に配偶者、子ども、親がおらず、兄弟姉妹のみが法定相続人となる場合の相続税額の早見表です。

【相続人が兄弟姉妹のみの場合の相続税額】
遺産総額 兄弟姉妹1人 兄弟姉妹2人 兄弟姉妹3人 兄弟姉妹4人
5000万円 192万円 96万円 24万円 0円
6000万円 372万円 216万円 144万円 72万円
7000万円 576万円 384万円 264万円 192万円
8000万円 816万円 564万円 396万円 312万円
9000万円 1104万円 744万円 576万円 432万円
1億円 1464万円 924万円 756万円 588万円
1億5000万円 3432万円 2208万円 1728万円 1488万円
2億円 5832万円 4008万円 2952万円 2544万円

遺産1億円で兄弟姉妹1人が相続人となる場合、相続税額は約1464万円となります。これは遺産1億円の相続における最大税額です。被相続人の兄弟姉妹が1人で相続するケースが、相続税額が最も高額になります

兄弟姉妹が4人の場合は、合計の相続税額は588万円となります。子どものみが相続するケースでは子ども1人の場合で1220万円、4人の場合は490万円ですので、比較すると兄弟姉妹のみの場合は2割加算分だけ重くなっていることがわかります。

被相続人に配偶者や子どもがおらず、親が生きているケースでは、親が法定相続人になります。親が1人ならその1人が全額、2人なら半分ずつを相続します。父母がいずれも亡くなっている場合は祖父母が法定相続人になります。

親のみが相続する場合は、配偶者の税額軽減が使えないぶん、配偶者ありのケースより税額は高くなります。ただし、親は「2割加算」の対象ではなく、相続税の税額は子のみが相続するケースと同額になります。1億円の遺産では、親1人の場合は約1220万円、親2人の場合は合計で約770万円となります。

同じ1億円の遺産でも、家族構成と相続人の数で相続税の税額には数倍の開きがあります。「配偶者と子」のような典型的な構成の場合は税負担が抑えられる一方、被相続人に配偶者や子がおらず、兄弟姉妹のみが相続するケースでは、相続税額が1000万円を超えるケースも珍しくありません

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ここでは、相続税を減額できる特例や制度を紹介していきます。

相続税の節税策のなかで圧倒的に効果が大きいものとして、配偶者の税額軽減が挙げられます。配偶者の取得財産が次のどちらか大きい金額まで、相続税はかかりません。

  • 1億6000万円
  • 法定相続分

遺産1億円のケースでは、配偶者が全額を相続しても1億6000万円の枠内であるため、配偶者の相続税はゼロ円となります。

ただし、この特例を使うには相続税の申告が必須で、税額がゼロ円でも申告書を出さなければ特例は受けられません。

さらに、一次相続で相続税を抑えるために配偶者が多くの遺産を相続すると、二次相続での税負担が重くなる可能性があります。二次相続についてはのちほど詳述します。

被相続人が住んでいた自宅、事業や貸付けに使っていた土地など特定用途の宅地は、評価額を最大80%下げられます。これが「小規模宅地等の特例」です。

対象となる土地は特定居住用、特定事業用、特定同族会社事業用、貸付事業用の4種類で、それぞれ減額割合が異なります。また、減額対象の面積には上限があり、特定居住用宅地等は330平方メートルまでです。超過部分は通常の評価額で相続税を計算します。

たとえば、路線価で8000万円と評価された330平方メートル以下の自宅の土地は、小規模宅地等の特例が適用された場合は80%減額となり、1600万円として相続税を計算できます。相続財産の大部分が不動産の場合は、この特例を使えるかどうかで税額が数百万円単位で変わるケースも珍しくありません

ただし、配偶者が相続する場合を除いて、特例の適用には厳格な要件があります。たとえば自宅の土地においては、以下の要件を満たす必要があります。

【同居親族が相続する場合の要件】
相続税の申告期限までその土地を保有し、かつその建物への居住を継続すること

【一定の要件を満たす別居親族が相続する場合の要件】
・被相続人に配偶者や同居相続人(法定相続人)がいないこと
・相続開始前3年以内に、自分や配偶者、三親等内の親族などの持ち家に居住していないこと
・相続開始時に自分が住んでいる家屋を、過去に自分が所有していたことがないこと
・相続税の申告期限までその土地を保有すること

この特例を適用する場合は、結果的に相続税がゼロ円になるとしても相続税の申告が必要です。

【関連】小規模宅地等の特例とは? 適用要件から計算例、必要書類までわかりやすく解説

配偶者の税額軽減や小規模宅地特例ほどの減額は期待できないものの、状況に応じて税負担を下げられる以下のような控除もあります。

  • 贈与税額控除:相続開始前の贈与で納付した贈与税を相続税から差し引ける
  • 未成年者控除:相続人が18歳未満であれば、年齢に応じて一定額が控除される
  • 障害者控除:相続人が85歳未満の障害者の場合、年齢と障害の程度に応じて一定額が控除される
  • 相次相続控除:10年以内に別の相続があった場合、前回支払った相続税の一部が今回の相続税から控除される
  • 寄付金控除:相続財産を国や地方公共団体、公益法人などに寄付した場合、そのぶんが相続税の課税対象外となる

これらの控除は、それぞれ要件と計算式が細かく定められています。活用できそうなものがある場合は、申告前の税理士への相談をお勧めします。

被相続人の生前であれば、税額を大きく減らせる選択肢がたくさんあります。ここでは代表的な6つの方法を紹介します。

もっともシンプルな対策が、生きている間に財産の一部を無償で譲り渡す「生前贈与(暦年贈与)」です。財産をもらう側1人あたり年間110万円までの贈与であれば、贈与税も申告も不要となります。

ただし、生前贈与には、亡くなる前の一定期間になされた贈与については相続財産に含めて課税対象とする「持ち戻し」の制度があります。

持ち戻しの対象期間はもともとは3年でしたが、2024年1月1日以降の贈与については、相続開始日に応じて持ち戻し期間が3年から段階的に7年へ延長され、2031年1月以降の相続からは完全に7年になります。なお、3年から7年に延長される4年間の贈与については、4年間で合計100万円まで持ち戻し対象外となる救済措置があります。

また、生前贈与をする際に「毎年、同額の贈与を10年間続ける」と事前に契約しているような場合は、あらかじめ期間と金額を取り決めて定期的に贈与を行う「定期贈与」とみなされ、最初の年にまとめて贈与税がかかる扱いになる場合があります。贈与の都度、贈与契約書を整えるなど、手続き面の配慮も必要になるため注意してください。

【関連】生前贈与とは? 効果的なやり方からデメリットまでわかりやすく解説

「相続時精算課税制度」は、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する場合に、累計2500万円までは贈与税がかからない制度です。控除額を超える部分には、一律20%の贈与税が課税されます。

贈与した財産は相続発生時に相続財産と合算され、相続税の計算対象となります。贈与時の評価額で相続税の計算がなされるため、不動産などのちに資産価値の上昇が見込まれる財産については、節税が見込めるというメリットがあります。

この制度を使うには、贈与の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。期限を1日でも過ぎると、その年の贈与では相続時精算課税制度を適用できなくなります。また、一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年贈与に戻せなくなるため、慎重に選ぶ必要があります。

なお、2024年1月の改正で、相続時精算課税制度に年110万円までの基礎控除が新設されました。年110万円までの贈与には贈与税がかからず、贈与税申告も相続財産への加算も不要となり、使いやすくなっています。

新しい相続時精算課税制度の仕組み(2024年1月〜)。年110万円までの基礎控除が新設され、その枠内の贈与は申告も相続財産への加算も不要となった
新しい相続時精算課税制度の仕組み(2024年1月〜)。年110万円までの基礎控除が新設され、その枠内の贈与は申告も相続財産への加算も不要となった

暦年贈与が向くケース、相続時精算課税が向くケースは以下になりますので、参考にしてください。

【暦年贈与が向いているケース】
・贈与者が健康で、相続発生までに持ち戻し期間の7年を超える期間が見込めるケース
・年110万円以下のペースで贈与するケース

【相続時精算課税が向いているケース】
・相続発生までの期間が短いと予想されるケース
・年110万円を超える財産をまとめて贈与したいケース
・値上がりが見込まれる財産を早めに贈与したいケース

【関連】相続時精算課税制度とは?【改正内容を図解】年110万円非課税 2500万円まで贈与税もかからない

贈与税には、110万円の非課税枠と併用可能な特例がいくつかあります。

【住宅取得等資金の贈与税の非課税措置】
2026年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、省エネ等住宅は1000万円まで、それ以外の住宅は500万円までが非課税になります。

【結婚・子育て資金贈与の非課税措置】
2027年3月31日までに、18歳以上50歳未満の人が父母や祖父母などから結婚費用や出産費用、育児費用の一括贈与を受けた場合、1000万円までは贈与税が非課税になります。なお、このうち挙式費用や新居費用など結婚に関連して支払われる費用は300万円までが非課税になります。

【教育資金の一括贈与の非課税措置(2026年3月終了)】
30歳未満の人が、父母や祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合、上限1500万円、うち学校など以外への支払いは500万円までが非課税になります。ただし、この特例は2026年3月31日で終了となりました。2026年3月31日までにこの特例を利用して贈与を受けた資金については、引き続き非課税扱いとなります。

「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」と「結婚・子育て資金贈与の非課税措置」の制度はいずれも要件や手続きが細かいため、早めの計画が大切です。

現金で1億円を相続するよりも、不動産にしておいたほうが相続税評価額が下がる傾向にあります。土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価され、一般的に時価よりも低い金額で相続税が計算されるケースが多いためです。目安として、土地は時価の7割から8割程度、建物は建築費の5割から7割程度と言われています。

賃貸アパートやマンションを建てれば、「貸家建付地」や「貸家」として、さらに評価額が下がります。

ただし、2024年1月以降、タワーマンションの高層階ほど市場価格と評価額の差が大きくなる点を利用して相続税を圧縮する、いわゆる「タワーマンション節税」の効果は大きく縮小しました。居住用の区分所有マンションの相続税評価額について、市場価格との乖離が大きい物件は評価額を時価の60%以上に引き上げる新ルールが導入されたためです。

加えて、不動産は管理や維持の手間、空室リスク、修繕コストなど、現金にはない負担も伴います。賃貸経営として収益が見込めるかどうかも含め、節税だけを目的にした安易な購入は注意が必要です。

相続人が受け取る生命保険金には、「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。相続人が妻と子ども2人の計3人であれば、「500万円×3人=1500万円」までの保険金は相続税の対象になりません。同額の現金をそのまま残すより、生命保険に変えておくほうが相続税は安くなります。

また、生命保険金は受取人固有の財産であるため、遺産分割協議の対象となりません。節税だけでなく、将来の相続トラブル対策としてもメリットがあります。

ただし、非課税枠が使えるのは法定相続人が受取人の場合に限られます。相続放棄者や法定相続人ではない孫などが受取人の場合はこの非課税枠は使えないため、受取人の設定は慎重に行いましょう。

【関連】生命保険に相続税はかかる? 非課税枠や計算方法を具体例を交えて解説

節税対策の一つに、相続税の基礎控除額を増やす方法も考えられます。基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」であるため、法定相続人が増えれば基礎控除額も増えます。

法定相続人の数を増やす方法として、養子縁組も検討の余地があります。養子が1人増えれば基礎控除額は600万円増え、生命保険の非課税枠も500万円広がります。さらに、相続人が増えれば1人あたりの取り分が小さくなって税率も下がるため、1億円規模では大きな節税効果が期待できる場合があります。

ただし、法定相続人に含められる養子の数は、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までです。

また、孫を養子にした場合、その孫養子の相続税額には2割加算が適用されるため、節税効果が小さくなります。

さらに、養子は遺留分(最低限保証された遺産の取得分)を持つ法定相続人となるため、相続人間に新たな火種を生む可能性もあります。節税目的が露骨な場合は税務署に否認されるリスクもありますので、慎重な判断が必要です。

相続税の申告と納付は期限内に済ませる必要があり、守らなかった場合はペナルティーの対象となる可能性があります。

相続税の申告と納付の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内です。たとえば死亡を知ったのが1月15日であれば、10カ月後にあたる同年の11月15日が申告と納税の期限となります。

期限の延長は原則として認められません。災害などやむを得ない理由があれば期限の延長を申請できるものの、遺産分割協議の長期化などは期限延長の対象外です。

10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合は、いったん法定相続分で分けたことにして申告・納付をし、あとで修正申告や更正の請求で調整します。当初の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくと、修正申告や更正の請求の際に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用することができます。

申告期限に遅れた場合や申告内容が実態と違う場合は、本来の相続税に加えて以下のような追徴課税が発生します。

  • 無申告加算税:期限までに申告しなかった場合にかかる税金。税額の最大30%が加算され、自主申告をすれば税率が軽減される可能性がある
  • 重加算税:意図的に事実を隠した場合や偽った場合にかかる税金。税額の35%から40%が加算される
  • 延滞税:納付が期限から遅れた日数に応じて発生する税金

2024年以降、無申告税額の300万円を超える部分に関しては、無申告加算税の税率が30%に引き上げられました。申告漏れに気づかなかった場合でもペナルティーは軽くないため、注意してください。

相続税は、申告と同じく被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に、現金で一括納付するのが原則です。相続財産の大半が不動産や株式の場合は、納税資金の確保に困る可能性もあります。

現金一括での納付が難しい場合は、以下の制度を利用できます。

  • 延納:最長20年で分割納付する制度。ただし利子税あり
  • 物納:現金の代わりに不動産など相続財産そのものを納める制度。ただし要件あり

一時的な資金繰り対応としては、納付完了が最長2年間にわたって猶予され、分割納付ができる「申請による換価の猶予」を税務署に相談できます。延納、物納、申請による換価の猶予のいずれも申請と審査が必要で、誰でも使えるわけではありません。納税資金の確保は生前対策の重要ポイントです。

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一次相続で「配偶者の税額軽減」をフル活用すれば、目の前の相続税は低く抑えられます。ただし、配偶者が亡くなったときの二次相続では配偶者の税額軽減は利用できず、法定相続人の数も減るため、税率が高くなります。一次相続で配偶者の相続分を増やしすぎると、一次相続と二次相続の相続税を合算した場合に、より多額の相続税を納めなければならなくなる可能性があります。

たとえば、遺産1億円で法定相続人が配偶者と子2人の計3人のケースで、一次相続において配偶者が全財産を相続する場合と、法定相続分で分けた場合で比較してみましょう。なお、両パターンとも配偶者の固有財産がゼロであると前提としたシミュレーションです。実際は配偶者の預貯金なども二次相続の対象となるため、税額はさらに大きくなる傾向があります。

【パターンA:一次相続で配偶者が遺産1億円をすべて相続→二次相続で子2人が相続】
一次相続では配偶者の税額軽減が適用されて相続税額はゼロ円となります。配偶者が亡くなって二次相続が発生し、子ども2人で遺産1億円を相続する場合、相続税額は合計770万円となります。一次相続と二次相続の相続税額の合計は770万円です。

【パターンB:一次相続で配偶者5000万円、子2人が合計5000万円を相続→二次相続で配偶者の相続分5000万円を子2人が相続】
1億円の遺産を法定相続分で分けた場合、一次相続では配偶者が5000万円、子1人あたり2500万円の取り分となります。配偶者の税額軽減を適用しても、相続税額は約315万円です。

配偶者が亡くなり二次相続が発生した場合、子ども2人で配偶者の遺産5000万円を相続することになります。この場合の相続税額は約80万円です。したがって、一次相続と二次相続の相続税額の合計は約395万円となります。

同じ1億円の遺産でも、一次相続と二次相続の相続税を合算すると、数百万円単位の差が出ます。二次相続までを見据えた分割を検討する意義は十分にあると言えるでしょう。

筆者の税理士事務所でも、1億円規模の遺産で、被相続人の配偶者に遺産を多く残したい意向と二次相続における節税を両立した事例があります。そのケースにおいては、配偶者居住権で配偶者の住まいを守りつつ所有権を子どもへ移転し、相続税の総額を100万円以上軽減しました。また、二次相続時の登記負担も回避できました。

相続税を抑える工夫と同じくらい大切なのが、家族間のトラブルの回避です。遺産分割でもめて家族関係に深い亀裂が入り、修復に年単位の時間を要するケースもあります。兄弟姉妹が相続をきっかけに口をきかなくなる例も珍しくありません。一度こじれた関係は、税額とは別の損失として残ります。

トラブル回避に向けた最大の対策は遺言書の作成です。遺言で財産の分割方針を明確にしておけば、遺産分割協議での混乱を大きく減らせるでしょう。遺言書を作成する際は、2人以上の証人が立ち会い、公証人が公証役場で作成する「公正証書遺言」がお勧めです。

それでもトラブルになりそうな場合は、公平公正かつ税負担を最適化した分割案について税理士に相談したり、交渉自体を弁護士に依頼したりすることも検討してください。「節税」と「もめない相続」は表裏一体です。

筆者の税理士事務所でも、被相続人の兄弟姉妹2人、甥姪6人の計8人が相続人となるケースで、被相続人が生前に専門家と相談して作成した公正証書遺言によって円滑にまとめた事例があります。

遺産1億円規模の相続は、専門知識のないまま進めると、相続税を数百万円単位で余分に払う可能性があります。相続専門の税理士に相談するメリットには以下があります。

  • 特に不動産などの資産を正しく評価してくれる
  • 適切な特例や控除を活用してくれる
  • 二次相続までを見据えた節税設計をしてくれる
  • 申告漏れや期限遅れによるペナルティーを回避してくれる
  • 税務調査に対応してくれる

遺産に不動産が含まれている場合は、評価額を出して相続税を計算します。不動産を評価する際の路線価や倍率方式、減額要因の判断には経験が重要です。評価が高すぎても低すぎても問題となりますので、税理士による正しい評価が求められます。

税理士への依頼により、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例、各種控除の要件などをチェックし、活用漏れを回避できます。特例の適用には書類の提出が必要になることもあるため、税理士に任せれば手間を削減できる点もメリットです。

税理士であれば、一次相続だけでなくその先の相続における税負担までを含めた最適な分割案を提案できます。

相続税申告は、申告漏れがあったり10カ月の期限を過ぎたりすると、加算税や延滞税がかかる可能性があります。税理士に依頼すれば、名義預金や生前贈与財産などを漏れなく拾い上げ、適正な相続税額を計算してくれます。また、期限内に必要書類の収集、相続税の申告と納付などを確実に進めてくれます。

相続税は税務調査が入りやすい税目です。「書面添付制度」を活用すれば、本格的な調査に発展するリスクが下げられます。書面添付制度とは、税理士が申告書の作成過程などを説明する書面を添付するもので、税理士に依頼した場合にのみ利用できる制度です。万が一、税務調査が入ったとしても税理士に対応を一任できます。

筆者の税理士事務所では、遺産2億円規模で、被相続人の口座から生前に多額の出金があった案件がありました。生前贈与、名義預金、手許現金など考え得る使い道を家族からヒアリングし、計上すべき財産をもれなく反映して申告するとともに、書面添付制度も活用して税務調査なしで完結しました。

遺産1億円の相続税は、家族構成や特例の使い方次第で、相続税がゼロ円から最大約1464万円まで大きく変わります。

特例には「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などさまざまなものがあり、経験のない方が自力で制度を網羅し、申告書を仕上げるのは現実的ではありません。遺産の規模が大きいほどミスの代償も大きくなります。

相続税は2024年改正で大きく変わり、特例や贈与制度の選択は判断が難しい場面が多い分野です。相続専門の税理士への早めの相談をお勧めします。

(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)

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