目次

  1. 1. 相続の開始があったことを知った日とは
    1. 1-1. 死亡した被相続人と同居していたケース
    2. 1-2. 被相続人と疎遠だったり、遠方に居住しているケース
    3. 1-3. 先順位の相続人の廃除・欠格・相続放棄によって相続人になったケース
    4. 1-4. 戸籍調査で発覚したケース
  2. 2. 相続を知った日が重要になる場面
    1. 2-1. 相続放棄・限定承認
    2. 2-2. 相続税の申告期限
    3. 2-3. 所得税の準確定申告
    4. 2-4. 遺留分侵害額請求権の時効
    5. 2-5. 所得税の青色申告承認申請
    6. 2-6. 遺産分割協議や遺言無効の訴えには影響しない
  3. 3. 相続を知った日を証明する方法
    1. 3-1. 相続を知った日を証明する証拠を用意する
    2. 3-2. 手続きが遅れた理由をきちんと説明する
    3. 3-3. 相続を知った日周辺の記録を残す
  4. 4. 死亡日がはっきりしない場合の「相続の開始があったことを知った日」はいつか
    1. 4-1. 認定死亡の場合
    2. 4-2. 孤独死の場合
    3. 4-3. 行方不明(失踪)の場合
    4. 4-4. 臓器提供の場面では脳死判定がされた時点を基準にする
  5. 5. 相続を知った日に関連する、よくある質問
  6. 6. まとめ 「相続を知った日」は手続きの起点 記録と確認が大切です

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相続の手続きでは、「相続の開始があったことを知った日」が重要な基準となります。これは、相続放棄や相続税の申告など、多くの法的な期限の起点になるからです。

まず、「相続の開始があった日」とは、被相続人(亡くなった方)が死亡した日を指します。これは通常、死亡診断書に記載された日付です。

一方で「相続の開始があったことを知った日」とは、被相続人の死亡を知り、自分が相続人であると認識した日を意味します。手続き上はこちらの日が起点となるため、正確に理解しておくことが大切です。

ただし、これは「本当に知っていたか」ではなく、社会通念上「知り得た」と判断される日が基準になります。たとえば「知らなかった」「勘違いしていた」といった理由では、起算日を遅らせることはできません。以下に、代表的なケースをご紹介します。

被相続人と同居しており、死亡時にその場に居合わせた、あるいはすぐに知り得た場合は、死亡日=相続の開始を知った日とみなされます。特別な事情がなければ、その日から手続きの期限が始まります。

被相続人と長く疎遠だったり、遠方に住んでいたりした場合は、死亡の連絡を受けた日や、自分で戸籍を取り寄せて死亡を確認した日が「知った日」とされることがあります。

たとえば、兄が相続放棄をしたことで自分が繰り上がって相続人になった場合などは、その放棄の事実を知った日が「相続の開始を知った日」となります。

相続人の範囲を調査する中で、被相続人の死亡を戸籍で初めて確認したようなケースでは、その戸籍を受け取った日が基準日となる場合があります。

「相続を知った日」とは、被相続人(亡くなった方)の死亡日ではなく、「死亡したことを知り、かつ自分が相続人であることを知った日」を指す場合があります。このように、「相続を知った日」が基準となるケースもあるため、慎重な判断が必要です。ここでは、「相続を知った日」が重要になる主な場面について解説します。

被相続人が亡くなり、自分が相続人となったとき、財産を相続するかどうかを判断しなければなりません。

相続は、プラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も引き継ぐのが基本です。相続を受けたくない場合は、「相続放棄」または「限定承認(プラスの財産の範囲内で負債を返済する制度)」の手続きを家庭裁判所に申し立てる必要があります。

この申立ては、「相続を知った日」から3カ月以内に行わなければなりません。3カ月を過ぎると原則として単純承認(借金も含めてすべてを相続する)したと見なされるため、借金が多い場合などは注意が必要です。

日数のカウントミスが致命的な結果を招くこともあるため、早めに判断・対応することが大切です。

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相続税が発生する場合、その申告と納税の期限も「相続を知った日」が基準になります。具体的には、被相続人の死亡を知った日の「翌日」から10カ月以内に、所轄の税務署に対して申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。

この期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税がかかることもあり、結果として税負担が大きくなります。なお、税額がゼロの場合でも申告が必要になることがあるため、判断に迷うときは税理士などの専門家に相談するのが安心です。

【関連】相続税の申告・納付期限は10カ月 過ぎたらどうなる? ペナルティや対処法を解説

被相続人が個人事業主だった場合などは、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、「準確定申告」を行う必要があります。

この申告は、相続人が連名で行うことになっており、期限は「相続を知った日」から4カ月以内です。たとえば、被相続人がフリーランスや自営業だった場合、申告を怠ると追徴課税が課される可能性もあるため、期限を守って手続きを進めましょう。

法定相続人には、「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が法律で保証されています。たとえば、被相続人が遺言で特定の人にすべての財産を渡すとした場合でも、配偶者や子などの一定の相続人は遺留分を請求する権利があります。

この「遺留分侵害額請求権」は、相続の開始と、遺留分を侵害されたことを知った日から1年以内に行使しなければなりません。また、相続開始の時から10年を経過したときも消滅します。時効が成立すると請求ができなくなるため、遺言書の内容に疑問がある場合は、早めに内容を確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。

被相続人が個人事業主で青色申告をしていた場合、その事業を相続人が引き継ぐこともあります。このとき、青色申告を継続したい場合には、相続人があらためて税務署に対して「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

この申請書の提出期限は、基本的に、以下のように「被相続人の死亡日」によって変わります。

  • 被相続人の死亡日がその年の1月1日から8月31日までの場合:死亡日から4カ月以内
  • 9月1日から10月31日までの場合:その年の12月31日まで
  • 11月1日から12月31日までの場合:翌年の2月15日まで

実務上は「相続を知った日」ではなく「死亡日」が起点になるケースもありますが、準確定申告と併せて行うことが多いため、早めに税理士に相談しておくとスムーズです。

相続を知った日が、直接的に「遺産分割協議」や「遺言無効の訴え」の期限に影響することはありません。これらには明確な法定期限が設けられていないため、比較的柔軟に対応することができます。

しかし、実務上は相続人が亡くなって二次相続が発生してしまったり、証拠書類が散逸して事実関係を証明できなくなったりするケースもあります。そのため、遺産分割や遺言への疑問がある場合は、相続を知った時点でなるべく早く行動を起こすことが大切です。

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相続放棄や限定承認、相続税の申告など、多くの相続手続きには「相続を知った日」から数えて一定の期限が定められています。この「相続を知った日」がいつかを明確にすることは、手続きの有効性に大きく関わる重要なポイントです。

ただし、「知った日」は人それぞれ異なるうえ、明確な証拠がないと裁判所や税務署などで認められないこともあります。万が一、期限に遅れてしまったときにも備えて、「相続を知った日」を客観的に説明できるよう準備しておくことが大切です。

相続放棄や相続税の申告など、相続手続きの期限は「被相続人の死亡日」ではなく「相続を知った日」が起算点となります。そのため、相続を知った日がいつだったのか、第三者に対して客観的に説明できる証拠を用意しておくことが重要です。

たとえば、以下のような記録が「相続を知った日」を示す証拠として用いられることがあります。

種類  具体例
通信記録 訃報を受けたメール、LINEメッセージ、電話の発着信履歴
戸籍関連 戸籍謄本・除籍謄本の発行日、戸籍請求書の控え
行政関係 市区町村や法務局などからの通知書、内容証明郵便など
医療・葬儀関連 病院からの死亡通知、葬儀社との連絡記録や請求書など
その他 日記・手帳・メモ・記録アプリのスクリーンショット等

これらの証拠は複数を組み合わせて時系列で整理することが大切です。一つだけでは証明力が弱い場合でも、複数の資料を用いて説明すれば、裁判所・税務署・家庭裁判所などの判断を得られる可能性が高まります

また、相続を知った日から期限を過ぎてしまった場合には、こうした証拠をもとに、「相続を知ったのが遅れた正当な理由がある」と論理的に説明することが必要です。不安がある場合は、早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。

「被相続人の死亡日からずいぶん経ってしまったが、最近まで死亡を知らなかった」というような場合には、手続きの遅れについて具体的な理由を説明しなければなりません。

具体的な理由とは、たとえば以下のとおりです。

  • 被相続人と長年疎遠だった
  • 遠方に住んでいて連絡が取れなかった
  • 死亡を知らせる親族がいなかった

上記のような事情がある場合、それを客観的な資料とともに伝えることで、裁判所などが「相続を知った日」を遅い日として認める可能性があります。

一方で、「法律を知らなかった」「忙しかった」などの理由では認められないのが通例です。遅延の理由は、なるべく具体的・客観的に示すよう心がけましょう。

相続を知ったその瞬間は強く印象に残っていても、時間が経つと正確な日付や状況を忘れてしまうことがあります。後から証明に困らないよう、「いつ」「どこで」「誰から」相続の情報を知ったか、どのような行動をとったかといった点を、メモや日記、メールなどの形で残しておくことが大切です。

たとえば、「◯月◯日に兄から電話で父の死亡を聞いた」「翌日に法務局で戸籍を取り寄せた」など、時系列で記録をつけておくことで、いざというときの証明に役立ちます。

被相続人の死亡日が明確な場合には、相続の開始日や「相続を知った日」も特定しやすいですが、事故・災害・孤独死・失踪などの特殊な事情がある場合には判断が難しくなることがあります。

こうしたケースでも、法的な手続きを通じて死亡日=相続開始日が確定され、それに基づいて「相続の開始があったことを知った日」が決まることになります。それぞれのケースごとに、どう判断されるのかを確認しておきましょう。

事故や災害などで死亡が確実視されるものの、遺体が見つからないケースでは、官公署が事実に基づいて死亡日を認定します。戸籍法第89条により、死亡が確認された場所の市町村長へ死亡の報告がなされ、戸籍にもその旨が記載されます。

この場合、市町村や警察などからの通知が届いた日や、認定死亡の記載がある戸籍を取得した日などが、「相続を知った日」として扱われます。

被相続人が一人暮らしをしていた場合など、発見が遅れたケースでは、戸籍に「令和〇年〇月〇日から△月△日の間に死亡」などと記載されることがあります。

行政や警察から連絡を受けた日が「相続を知った日」になりますが、相続人が自ら発見した場合は、発見した日が起算日となることが一般的です。いずれにしても、死亡の事実と自分が相続人であることを知った日が重要です。

生死不明のまま長期間消息がつかめない場合は、家庭裁判所の失踪宣告により死亡とみなされます。

一般失踪:7年間生死が不明な場合、裁判所の審判で死亡とされ、その7年が経過した日が法律上の死亡日となります。

特別失踪:震災・戦争・海難事故・航空機事故など、死亡の可能性が高い事象に遭遇してから1年経過したとき、裁判所の審判で死亡と認定されます。

このような場合、相続人にとっての「相続を知った日」は、失踪宣告の審判が確定したことを知った日になります。判決の通知書を受け取った日などが該当します。

脳死は、臓器移植法に基づき臓器提供が行われる場合には「人の死」とされ、2回目の脳死判定が終了した時刻が死亡時刻となります。一方、臓器提供を前提としない場合には、あくまで心肺停止をもって「死亡」となり、相続の開始もその時点からとされます。

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Q. 相続人ごとに相続を知った日が違う場合は?

相続を知った日は、相続人ごとに個別に判断されます。他の相続人が先に被相続人の死亡を知っていたとしても、自分が知らなければ「相続を知った日」にはあたりません。それぞれの相続人が、死亡と自分が相続人であることを客観的に知り得た時点が起算日となります。

Q. 故人の死亡を知ったが、自分が相続人になるとは知らなかった場合も相続の開始を知った日にあたる?

自分が実際に相続人だと気づいていたかどうかは基準になりません。被相続人との関係や状況から、社会通念上知り得たと判断される日が「相続を知った日」とされます。法律の知識がなかった、勘違いしていたといった理由は考慮されません

Q. 相続を知った日を間違えて申告・説明するとどうなりますか?

申告内容に虚偽があると判断されると、延滞税や加算税などのペナルティが科される可能性があります。悪意がなくても、手続きの遅延や却下の原因になり得ます。証拠や記録を残し、早めに専門家に相談しておくことが大切です。

相続を知った日は、多くの法的手続きの起算点となる重要な日です。死亡日とは異なり、「被相続人が亡くなり、自分が相続人であると知った日」が基準とされます。相続放棄や相続税申告などの期限に直結するため、できるだけ早く事実を確認し、必要な証拠や記録を残しておくことが大切です。

判断に迷う場合は、早めに専門家に相談しましょう。手続きを正しく行うことで、不要なトラブルや不利益を防ぐことができます。

(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)

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