お近くの相続対応可能な弁護士を探す
北海道・
東北
関東
甲信越・
北陸
東海
関西
中国・
四国
九州・
沖縄
1. 農地を相続すると届出が必要
土地を相続した場合、まず必要になるのが名義変更(相続登記)です。2024年4月からは、相続登記が義務化されており、放置していると罰則の対象となることもあります。
ただし、相続した土地が「農地」にあたる場合には、相続登記とは別に、農地法の定めにより農業委員会への届出も必要です。この手続きは、土地のある市区町村の農業委員会に対して行います。
相続登記だけでは手続きが完了したことにならない点に注意が必要です。
1-1. 届出を怠ると過料の対象になる
農地を相続したのに届出をしていない場合、農地法により10万円以下の過料を科される可能性があります。相続登記を済ませていても、農業委員会への届出がなければ違反になる点に注意が必要です。
農業委員会は所有者や利用状況を把握して農地を適正に管理する役割を担っています。届出を忘れると法令違反になるおそれがあるため、相続後は速やかに手続きを行いましょう。
1-2. 相続した土地が農地にあたるかは利用状況で判断する
「自分が相続した土地が本当に農地にあたるのか分からない」という声も少なくありません。農地法上の「農地」とは、耕作の目的に供される土地を指します(農地法第2条第1項)。これは、「実際に耕作しているかどうか」だけでなく、「耕作が可能な状態かどうか」といった現況(利用状況)によって判断されるため、見た目や登記情報だけでは判断できない点に注意が必要です。
たとえば、登記簿上の「地目」が田や畑であっても、すでに住宅地として利用されていれば農地には該当しません。一方で、登記上は「宅地」や「雑種地」となっていても、実際に畑として耕作されていれば農地と見なされる可能性があります。
また、長期間耕作されていない休耕地であっても、客観的に見て耕作可能な状態が保たれている場合には農地と判断されるケースもあります。つまり、判断基準は「現在の利用実態」と「耕作可能性」にあるということです。
判断に迷うときは、自己判断せず、土地の所在する市区町村の農業委員会や、不動産・相続に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。
2. 農地相続の届出の必要書類と手続き
農地を相続した場合、他の土地と同様に相続登記を行う必要があります。さらに、農地に限っては農業委員会への届出も義務付けられており、どちらか一方の手続きだけでは不十分です。ここでは、相続登記と届出の流れ、必要書類、注意点について解説します。
2-1. 土地の相続登記をする
まず、農地を相続したことを正式に記録するため、相続登記を行います。手続きは、農地が所在する地域を管轄する法務局で行います。
相続人が複数いる場合は、誰がその農地を引き継ぐかを決めるために遺産分割協議書の作成が必要になるケースもあります。相続登記を済ませておくと、次の届出手続きに必要な書類(登記事項証明書)を取得できるため、なるべく早めに済ませておくとスムーズです。
2-2. 農地のある市区町村の農業委員会に届出をする
農地を相続した人は、相続登記に加えて、農地がある市区町村の農業委員会に「農地を相続した旨の届出」を行う必要があります。
これは、農地法第3条の3第1項に基づく義務であり、相続その他の一般承継により農地を取得した者は、取得したことを知った日からおおむね10カ月以内に農業委員会に届け出なければなりません。したがって、相続登記だけを済ませても、農業委員会への届出を行わなければ法的には手続き不備となる可能性があり、後々のトラブルにつながるおそれがあります。
また、届出には前述の相続登記事項証明書などが必要となるため、相続登記が済んでいないと届出手続きにも支障が出ることがあります。届出期限内に手続きを完了できるよう、相続登記と届出のスケジュールを計画的に進めることが重要です。
2-3. 相続登記と農業委員会への届出は両方必要
農地を相続した場合には、法務局への相続登記と農業委員会への届出の両方が必要です。どちらか一方だけでは手続きが完了したことにはなりません。
とくに注意が必要なのが農業委員会への届出で、これを怠った場合、農地法第3条の3第1項違反として、10万円以下の過料が科される可能性があります。
「登記したから大丈夫」と安心せず、農業委員会への届出も忘れずに行うようにしましょう。
2-4. 必要書類と手続きの注意点
農地相続の届出にあたっては、以下のような書類が必要になります。
- 届出書(市区町村で配布)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
- 相続登記事項証明書
- 遺産分割協議書(もしくは遺言書)
なお、届出書に記載する地番・地目・相続人の続柄などの情報は、登記簿と完全に一致している必要があり、ひとつでも不一致があると、農業委員会から補正の指示があり、再提出が必要になることもあります。
スムーズに手続きを進めるためには、書類の控えを残すこと、そして事前に農業委員会に問い合わせをして、必要書類や記載方法について確認しておくことをおすすめします。市区町村によっては独自の様式や追加資料を求められることもあるため、確認は早めにしておくと安心です。
3. 農地を相続するメリット
農地を相続することには、活用の仕方次第でいくつかのメリットがあります。農業を続ける意思がある場合だけでなく、農地を第三者に貸したり売却したりすることで、経済的な利益につながる可能性もあります。
3-1. 農業を継続できる
相続した農地をそのまま活用して農業を継続すれば、被相続人の意思を受け継ぎながら、安定した収入を得ることができます。農業は季節や地域により収益の幅はあるものの、自営による働き方を確保できるという点では大きな価値があります。
また、農業を継ぐことで地域とのつながりが保たれ、農地が荒れるのを防ぐことにもつながります。
3-2. 相続税の納税猶予の特例
農地には、相続税の納税猶予制度があります。これは、一定の条件を満たした場合に相続税の納付が猶予され、最終的には実質的に免除される可能性もある制度です。
主な要件としては、被相続人が生前に農業を営んでいたこと、相続人が引き続き農業を継続すること、農業委員会の認定を受けていることなどが挙げられます。
ただし、制度の適用には細かい条件があり、途中で農業をやめてしまうと猶予が打ち切られてしまうリスクもあるため、利用を検討する際には税理士など専門家に相談することが大切です。
3-3. 不動産として他人に貸し出すことができる
農業を継ぐ予定がない場合でも、農地を他の農家に貸し出して賃料収入を得ることができます。
ただし、農地法第3条により、貸すには農業委員会の許可が必要です。無許可での賃貸借は無効とされるため注意しましょう。許可を受けるには、相手が農業従事者であることなど、一定の条件を満たす必要があります。
また、都市部に近い農地などでは、将来的に宅地転用や地目変更(農地法第4条・5条)が認められれば、さらに高い収益が見込める場合もあります。いずれの場合も、活用前に農業委員会や専門家に相談することが重要です。
3-4. 不動産として売却できる
利用予定がない農地は、売却して現金化することも可能です。ただし、農地を農地として売る場合は農地法第3条(権利移転)に基づき農業委員会の許可が必要です。
宅地などに転用して売却する場合は、農地法第4条または第5条に基づく許可が求められます。いずれも要件が厳しく、事前の確認が不可欠です。
4. 農地を相続するデメリット
農地を相続することには一定のメリットがある一方で、活用や管理が難しく、思わぬ負担につながることもあります。相続の前に、デメリットやリスクについてもよく理解しておくことが大切です。
4-1. 賃貸・売却にはハードルがある
農地は宅地とは異なり、自由に貸したり売ったりすることができません。農地を他人に貸す場合や、宅地に転用して貸し出す場合でも、農業委員会や都道府県知事の許可などが必要になります。
また、農地を売却するときも、農業を継続する能力や意欲のある人への譲渡でなければ許可が下りにくく、買い手を見つけるのが難しいのが現実です。さらに、農地を宅地などに転用して売ることもできますが、その場合は都道府県知事の許可を得なければならず、転用の条件も厳しく審査されます。
このように、農地は資産としての柔軟性に乏しく、活用や処分がしにくい点がデメリットといえます。
4-2. 維持管理が大変・耕作放棄地は固定資産税が1.8倍になる
農地を維持するには、草刈りや水路の管理など、定期的な手入れが欠かせません。遠方に住んでいる場合や農業の経験がない人にとっては、大きな負担となることもあります。
また、管理を怠り放置すると「耕作放棄地」とみなされ、市町村の判断で特定生産緑地等から除外されたり、課税標準が一般農地並みに引き上げられたりすることで、固定資産税が最大で1.8倍に増額される可能性があります。費用負担の面でも、放置はリスクとなるため注意が必要です。
4-3. 放置すると近隣トラブルになる
農地の管理を怠ると、雑草が伸び放題になったり、害虫が発生したりして、近隣の田畑に悪影響を及ぼすおそれがあります。また、水路の清掃を怠ることで排水不良が起き、周囲の農地や住宅地に被害を与えてしまうケースもあります。
こうした状況を放置していると、近隣から損害賠償請求を受けるリスクも生じかねません。農地の相続は、単に「もらって終わり」ではなく、相応の管理責任が伴うことを理解しておく必要があります。
5. 農地を相続したくないときの対処法
相続する農地に利用予定がなかったり、管理の負担が大きかったりする場合、「できれば相続したくない」と感じることもあるでしょう。そんなときに検討できる主な対処法として、「国に譲渡する方法」と「相続放棄」の2つがあります。
5-1. 農地だけ国に譲渡する(相続土地国庫帰属制度)
2023年にスタートした「相続土地国庫帰属制度」は、不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。相続人が希望し、土地が一定の条件を満たせば、申請によって国庫に帰属させることができます。
制度上は農地も対象となりますが、実務上は譲渡が認められるハードルが非常に高く、現時点では農地の受け入れは厳しいのが実情です。とくに、農地としての利用可能性や権利関係、管理上のリスクなどが審査で重視されます。
以下のような土地は、制度の対象外とされ、譲渡が認められません。
- 上に建物がある土地
- 担保権や地役権などの権利が設定されている土地
- 境界が不明確な土地
- 土壌汚染や崖地など、管理に過大な費用がかかる土地
- 地上または地下に廃棄物などがある土地
また、申請には審査手数料(1筆あたり1万4000円)が必要で、引き取りが認められた場合には負担金(通常は20万円前後)もかかります。
5-2. 相続放棄する(農地含めて一切の財産を相続しない)
農地を含めて、一切の財産を相続しない選択肢として「相続放棄」があります。農地の維持管理や農業委員会への届出、売却の手続きなどを避けたい場合は、有効な手段です。
ただし、相続放棄をすると、農地だけでなく現金や預貯金などのプラスの財産も一切引き継げなくなる点に注意が必要です。また、相続放棄は家庭裁判所への申立てが必要であり、原則として相続開始を知ってから3カ月以内に行わなければなりません。
農地の相続に不安がある場合は、これらの制度を踏まえつつ、専門家に早めに相談して適切な判断をすることが大切です。
6. 農地を相続するときに専門家に相談するメリット
農地の相続は、登記や届出に加えて農地法などの規制も関係するため、一般の方が一人で進めるにはハードルが高いものです。状況に応じて適切に判断・手続きを進めるためにも、専門家への相談は大きな助けになります。
6-1. 農地を相続すべきか、相続後にどう扱うべきか判断してもらえる
「農地を引き継ぐべきか迷っている」「使う予定がないが手放すのも不安」というとき、弁護士や司法書士、税理士などの専門家は、土地の状況や相続人の意向を踏まえて、相続後の具体的な選択肢や制度活用の可否をアドバイスしてくれます。納税猶予や国庫帰属制度の利用可能性、売却・賃貸の条件などを総合的に判断できるのも大きなメリットです。
6-2. 相続登記と届出をスムーズに行える
農地を相続する際には、法務局での相続登記に加え、農業委員会への届出が必要です。これらの手続きには戸籍や遺産分割協議書などの書類が必要となり、記載内容に誤りがあると差し戻しになることもあります。専門家に依頼すれば、必要書類の準備から提出まで一括して任せることができ、スムーズに手続きが完了します。
6-3. 農地法の許可や納税猶予など複雑な手続きに対応してもらえる
農地を他人に貸す・売る・転用する際には、農業委員会や知事の許可が必要であり、農地法に基づく厳格な条件が課されます。また、相続税の納税猶予制度を利用する場合も、申請の期限や継続的な農業の従事など細かい要件が多く、専門知識が不可欠です。
こうした複雑な法令や制度に関する実務も、専門家のサポートがあれば安心して進めることができます。迷ったときは、早めに相談することが相続のトラブルを未然に防ぐ第一歩です。
7. 農地相続の届出に関するよくある質問
Q. 届出と相続登記の違いは?両方必要?
相続登記は、法務局で行う土地の名義変更手続きです。一方、農地の届出は、農地法に基づいて農業委員会へ報告する手続きです。どちらも相続にあたっては必要なものであり、「法務局への登記だけ」「農業委員会への届出だけ」では不十分です。農地を相続した場合は、必ず両方の手続きを行いましょう。
Q. 農地を相続したら、届出は必ず必要?
必要です。農地法第3条の3により、相続により農地を取得した場合でも、農業委員会への届出が法律で義務づけられています。届出を怠った場合、10万円以下の過料の対象となる可能性もあります。相続登記を済ませたとしても、農業委員会への届出がなければ手続きとしては不完全です。忘れずに届出を行いましょう。
Q. 農業していない人でも農地を相続できる?
農業を営んでいない人でも、農地を相続することは可能です。ただし、農地を放置してしまうと、雑草の繁茂や水路の管理不足などから近隣に迷惑をかけてしまうおそれがあります。また、耕作していない農地は「耕作放棄地」とみなされ、固定資産税が最大1.8倍に上がる可能性もあります。利用の予定がない場合でも、貸す・売る・国に引き取ってもらうといった選択肢を検討し、早めに対応することが大切です。
8. まとめ 農地相続は届出を忘れず正しく進めよう
農地を相続した際には、通常の土地と異なり、農業委員会への届出が法律で義務づけられています。届出を怠ると過料の対象となることもあり、注意が必要です。また、相続した農地をどう活用するかによって、必要な手続きや許可も変わってきます。
農地相続には登記や届出のほかにも、納税猶予や国庫帰属制度など、さまざまな制度が関わってきます。少しでも不安を感じたときは、早めに弁護士などの専門家に相談し、自分にとって最善の方法を見つけることが大切です。
(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)
お近くの相続対応可能な弁護士を探す
北海道・
東北
関東
甲信越・
北陸
東海
関西
中国・
四国
九州・
沖縄