売れない空き家の処分方法! 業者選びから補助金、注意点までプロが解説
相続で引き継いだ空き家が売れなくて困っている人も多いと思います。特に、築年数の古い戸建ては売却が難しいといえます。戸建てに関しては統計情報も参考にしながら値引きしていくことも必要です。空き家を所有するリスクや、「売れない実家の空き家」の処分方法について、不動産鑑定士が解説します。
相続で引き継いだ空き家が売れなくて困っている人も多いと思います。特に、築年数の古い戸建ては売却が難しいといえます。戸建てに関しては統計情報も参考にしながら値引きしていくことも必要です。空き家を所有するリスクや、「売れない実家の空き家」の処分方法について、不動産鑑定士が解説します。
目次
最初に、空き家を所有するデメリットやリスクを解説します。
空き家を所有していると、土地の固定資産税や都市計画税がかかります。さらに、放っておくと固定資産税が上がる可能性があります。
空き家のうち、倒壊や衛生面で周辺環境に深刻な影響を与える物件は、自治体から「管理不全空き家」に指定される可能性があります。管理不全空き家に指定されたあと、自治体からは指導や勧告といった要求があります。勧告を無視すると、土地に適用されている固定資産税の「住宅用地の軽減」がなくなります。
住宅の土地の固定資産税は、住宅用地の軽減によって更地よりも安くなっています。しかし、住宅用地の軽減が適用されなくなると更地と同じ課税となるため、固定資産税が上がります。
長年放置された空き家には草木や雑草が生い茂り、建物も劣化していきます。こうなると、地域の景観が損なわれるだけでなく、虫や動物が住み着いたり、廃棄物を不法に投棄されたりするリスクも高まり、近隣住民に迷惑をかけることとなります。万が一建物が倒壊して人的被害が起きてしまえば、損害賠償の責任を負う可能性もあります。
近隣住民に迷惑をかけないためには、定期的に空き家を訪問し、適切に管理する必要があります。
ただ、相続では遠方の空き家を受け継ぐことがあります。こうなると現地に足を運ぶだけでも交通費や、多くの時間を費やすことになってしまいます。空き家の管理を代行するサービスもありますが、月々5000~1万円の費用がかかります。
このように空き家を所有し続けることには様々なデメリットがありますので、手放したいと考える人は多いでしょう。しかし、立地や築年数の古さが問題となり、「売りたくても売れない」物件もあります。
そんな売れない空き家の処分方法は、次の通りです。あきらめる前に検討してみましょう。
それぞれについて説明します。
空き家が売れない最大の理由は、売り出し価格が高過ぎることです。戸建ての場合、統計上の数値からすると適正価格よりも2割以上高い可能性があります。
公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、2022年の首都圏の築31年以上の戸建ての売り出し価格(チラシなどに掲示している価格)と、成約価格(実際に売買が決まった価格)は以下の通りです。
売り出し価格:3005万円
成約価格 :2345万円
売り出し価格と成約価格には2割以上の差があり、大幅な値下げがなされていることがわかります。この傾向は過去10年をみても、大きな変化はありません。
空き家の売却では、「最後は叩き売るように値引きして売った」と経験談を語る人も多いです。よって、売れない空き家を売るには、まずは今の価格より2割以上を目安に値下げをすることが現実的な対策です。売れない空き家を売るには、相当な値引きが必要となる可能性は知っておいたほうがよいでしょう。
昔から「隣地は高い価格を払ってでも買え」と言われています。購入者にとって、隣地を購入することで土地の形や接道条件、活用の幅などの条件が良くなることがあるためです。隣地に声をかけてみたことで、売れないと思っていた空き家がスムーズに売れることがあります。
建物や設備が老朽化していることが売れない理由になっている場合、リフォームをすることで売却できることがあります。
ハウスクリーニングで室内をきれいにするだけでなく、外壁の補修やクロスの貼り替え、水回りの交換など費用をかけてリフォームすれば、購入を検討している人に好印象を与えることができるでしょう。ただし、リフォームしたからといって必ず売れるわけではないので、必要以上にお金をかける必要はありません。どのようなリフォームをするのが売却につながるのか、事前に不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
空き家が売れない場合には、不動産会社を変えることも対策の一つです。売却可能性が高まる不動産会社としては、以下のような会社があります。
一つ目は、古民家専門の不動産会社です。
昨今は古民家ブームですので、古民家といっても築40年くらいで古民家と称して売却されている物件もあります。古民家専門の不動産会社には、古い家を好んで探す顧客が集まってくるため、古い家の売却確率が自然と上がります。
二つ目としては、リフォーム工事も行う工務店系の不動産会社が挙げられます。
工務店系の不動産会社には、自分でリフォームした家に住みたい顧客が集まります。工事費と物件価格をセットで考えているため、古い家でも予算に合えば買ってくれる可能性は高くなります。
また、不動産売却の無料一括査定サイトの利用を検討するのもよいでしょう。複数の不動産会社に連絡したり、足を運んだりする手間なく、自宅で査定を受けることができます。
取り壊して更地にして売ることも処分方法の一つです。
空き家の取り壊し費用は、木造戸建て住宅の場合、坪4万円~5万円程度かかります。一般住宅は30坪程度のものが多いため、取り壊し費用は120万円~150万円程度が目安となります。
更地にすると、注文住宅を建てたい人や不動産会社といった資金力の高い人たちがターゲットとなるため、売却しやすくなります。
買い取りで売却することも処分方法の一つです。
買い取りとは、転売を目的とした不動産会社への売却のことを指します。古家付きの物件を購入する不動産会社は、買い取ったあと、自分たちで取り壊して転売することが一般的です。
そのため、「取り壊し費用」と「不動産会社の転売益」の分だけ価格が安くなります。古家付きの物件の場合、買い取りによる売却価格の相場は、仲介による価格の50%程度です。
売れない空き家は、試しに空き家バンクに登録も試してみることも価値はあります。
空き家バンクとは、自治体が行っている不動産情報サイトのことです。空き家バンクは不動産会社が通常取り扱わない物件も掲載されているため、掘り出し物を目当てに物件を物色している人もいます。
期待値はそれほど高くはありませんが、登録しておけば売却できる確率は少し高まります。
不動産に関しては、原則として自治体や公益法人への寄付はハードルが高いと認識すべきです。
希に更地で自治体が求めている場所とニーズが合致した場合、例外的にもらってくれるケースは存在します。それでも、前提として更地であることが条件となっていることが多いので、建物が残っていれば寄付もできないことが一般的です。
相続した土地であれば、2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」に申請してみることも可能です。
ただし、建物が残っている場合は申請することさえできないので、空き家を解体し更地にする必要があります。そのほかにも10年分の土地管理費相当額を納めなければならないこと、土壌汚染や崖がないことなど複数の要件があり、すべての土地を引き取ってもらえるわけではありません。
空き家を処分したいのであれば、次のような前提条件を満たしているか確認しましょう。
相続した空き家を売却するには、名義変更が必要となります。名義変更が必要な理由は、売主を明確にするためです。
空き家を相続後、名義が被相続人(亡くなった人)のままだと、第三者の買主からはいったい誰が売主なのかわからない状態となります。なお、相続した不動産の名義変更は、2024年4月から義務化されます。
土地の境界が確定していない場合、境界確定が必要です。境界確定とは、道路や隣地との境界を確定することを指します。通常、戸建てや宅地の売買では、買主がすべての境界が確定していることを条件として求めてきますので、売却前に境界はすべて確定しておくことが基本です。
古い空き家が売れるかどうかは、複数の不動産会社が取り壊さなくてもそのまま売れると言っていることも必要な条件です。逆に複数の不動産会社が取り壊さないと売れないといっている場合には、売主側で取り壊してから売る必要があります。例えば、建物が相当に老朽化しており、取り壊し費用が土地価格を上回っているようなケースでは、売主側で取り壊さないと売れないことが多いです。
空き家の解体費用に関しては、補助金制度を設けている自治体も多いです。空き家のある自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。2自治体の事例を紹介します。
【大田区】
事業名:木造建築物耐震化助成事業
補助額:最大75万円、補助率は工事に要する費用の3分の2。ただし、大田区外の解体会社に依頼する場合は、最大50万円、補助率は2分の1となる。対象となる建物:1981年(昭和56年)5月31日以前に新築工事に着手した木造建築物
【豊島区】
事業名:老朽建築物物除却助成
補助額:上限額1,000万円、ただし、実際にかかった経費と区が別に定める単価を用いて算出した額を比較して低い方が助成される
対象となる建物:区が定める不燃化特区内にある建築物で一定の要件を満たすもの
相続放棄は、不要な空き家だけを対象とすることはできません。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続できないことになります。都合よく空き家だけを相続放棄することはできないので、相続放棄をする際は慎重に判断を下すことが必要です。
田舎は都市部と比べ、そもそもの住宅購入ニーズが小さいため、難しいと言えるでしょう。
「隣地に声をかける」「価格を2割下げる」「リフォームする」「更地にする」などの対処法を検討しましょう。
これらの対処法で望みが薄そうであれば、利益度外視で、価格をタダ同然まで引き下げるのも手です。ただし仲介業者にとっては手間だけかかってもうからないので、嫌がられます。従って買い取り業者にタダ同然で引き取ってもらうことになるでしょう。
それでも見込みがないのであれば、相続土地国庫帰属制度の活用することも検討してみましょう。
以上、売れない実家の空き家について解説してきました。
空き家を持っている場合、「放っておくと土地の固定資産税が上がる可能性がある」「近隣住民に迷惑がかかり、トラブルにつながる恐れがある」といったことを知っておく必要があります。
売れない空き家を売るには、「価格を2割以上値下げしてみる」「不動産会社を変える」といった方法があります。空き家の状況に応じて、自分に合った処分方法を試してみてください。
(記事は2023年11月1日時点の情報に基づいています)
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