目次

  1. 1. 売れない実家の空き家で知っておくべきこと
    1. 1-1. 放っておくと土地の固定資産税が上がる可能性がある
    2. 1-2. 空き家だけ相続放棄することはできない
    3. 1-3. 建物が残っていると寄付もできない
    4. 1-4. 名義変更と土地の境界確定は必要となる
  2. 2. 売れない空き家の五つの処分方法
    1. 2-1. 価格を2割以上値下げしてみる
    2. 2-2. 不動産会社を変える
    3. 2-3. 取り壊して更地にして売る
    4. 2-4. 買い取りで売却する
    5. 2-5. 空き家バンクに登録してみる
  3. 3. まとめ:価格を2割以上値下げるなどの選択肢を検討しよう

最初に、売れない実家の空き家で知っておくべきことについて解説します。

空き家は放っておくと土地の固定資産税が上がる可能性があります。放置された空き家のうち、倒壊や衛生面で周辺環境に深刻な影響を与える物件は、自治体から「特定空き家」に指定される可能性があります。

特定空き家に指定されたあと、自治体からは助言や指導、勧告といった要求があります。勧告を無視すると、土地に適用されている固定資産税の「住宅用地の軽減」がなくなります。

住宅の土地の固定資産税は、住宅用地の軽減によって更地よりも安くなっています。しかし、住宅用地の軽減が適用されなくなると更地と同じ課税となるため、固定資産税が上がります。

相続放棄は、不要な空き家だけを対象とすることはできないという点がポイントです。まず、相続放棄には相続開始があったことを知った日から3カ月以内にしなければならないという期限があります。

また、相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続できないことになります。都合よく実家だけを相続放棄することはできないので、相続放棄をする際は慎重に判断を下すことが必要です。

不動産に関しては、原則として自治体への寄付はハードルが高いと認識すべきです。

希に更地で自治体が求めている場所とニーズが合致した場合、例外的にもらってくれるケースは存在します。それでも、前提として更地であることが条件となっていることが多いので、建物が残っていれば寄付もできないことが一般的です。

相続した実家を売却するには、名義変更が必要となります。名義変更が必要な理由は、売主を明確にするためです。

相続は原則共有で引き継ぐことから、名義が被相続人(亡くなった人)のままだと、第三者の買主からはいったい誰が売主なのかわからない状態となります。

また、土地の境界が確定していない場合、境界確定が必要です。境界確定とは、道路や隣地との境界を確定することを指します。通常、戸建てや宅地の売買では、買主がすべての境界が確定していることを条件として求めてきますので、売却前に境界はすべて確定しておくことが基本です。

続いて、売れない空き家の五つの処分方法について解説します。

空き家が売れない最大の理由は、売り出し価格が高過ぎることです。戸建ての場合、統計上の数値からすると適正価格よりも2割以上高い可能性があります。

よって、売れない空き家を売るには、まずは今の価格より2割以上を目安に値下げをすることが現実的な対策です。

以下に、首都圏におけるマンションと戸建ての成約価格と売り出し価格の推移を示します。成約価格とは実際に売買が決まった価格のことで、売り出し価格とはチラシ等に掲示している価格のことです。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」(http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2020.pdf)

グラフ中のパーセントの数字は売り出し価格に対する成約価格の割合です。マンションは、売り出し価格と成約価格との間にほとんど差がないことがわかります。過去10年間を平均すると、マンションの成約価格は売り出し価格の101%という結果です。

一方で、戸建に関しては、売り出し価格より成約価格が常に2割程度低いことがわかります。過去10年間を平均すると、戸建ての成約価格は売り出し価格の80%という結果です。

また、首都圏における中古住宅の築年数別の値引き率は、以下のとおりです。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」(http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202102.pdf)

値引き率は、築31年以上となるとマンションも戸建ても20%を超えている状況です。実家の空き家の場合、築年数が築31年以上の物件が多いと思われます。つまり、築31年以上の戸建ては、統計上は20%以上の値引きをしないと売れる価格にならないということです。

公益財団法人東日本不動産流通機構によると、首都圏の築31年以上の戸建ての平均価格は以下のようになっています。

■ 首都圏の築31年以上の戸建ての平均価格(2020年)

売り出し価格:2711万円
成約価格:2018万円

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」(http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202102.pdf)

売り出し価格と成約価格には700万円近くの差があり、大幅な値下げがなされていることがわかります。実家の売却では、「最後は叩き売るように値引きして売った」と経験談を語る人も多いです。

700万円も下げて売れば、本人的には相当に叩き売ったという感覚を覚えると思われます。売れない実家を売るには、相当な値引きが必要となる可能性は知っておいたほうがよいでしょう。

実家の空き家が売れない場合には、不動産会社を変えることも対策の一つです。売却可能性が高まる不動産会社としては、以下のような会社があります。

■ 売却可能性のある不動産会社

・古民家専門の不動産会社
・リフォーム工事も行う不動産会社

一つ目は、古民家専門の不動産会社です。

昨今は古民家ブームですので、古民家といっても築40年くらいで古民家と称して売却されている物件もあります。古民家専門の不動産会社には、古い家を好んで探す顧客が集まってくるため、古い家の売却確率が自然と上がります。

二つ目としては、リフォーム工事も行う工務店系の不動産会社が挙げられます。

工務店系の不動産会社には、自分でリフォームした家に住みたい顧客が集まります。工事費と物件価格をセットで考えているため、古い家でも予算に合えば買ってくれる可能性は高くなります。

取り壊して更地にして売ることも処分方法の一つです。

取り壊し費用は、木造戸建て住宅の場合、坪4万円~5万円程度かかります。一般住宅は30坪程度のものが多いため、取り壊し費用は120万円~150万円程度が目安となります。

更地にすると、注文住宅を建てたい人や不動産会社といった資金力の高い人たちがターゲットとなるため、売却しやすくなります。

買い取りで売却することも処分方法の一つです。

買い取りとは、転売を目的とした不動産会社への売却のことを指します。古家付きの物件を購入する不動産会社は、買い取ったあと、自分たちで取り壊して転売することが一般的です。

そのため、「取り壊し費用」と「不動産会社の転売益」の分だけ価格が安くなります。古家付きの物件の場合、買い取りによる売却価格の相場は、仲介による価格の50%程度です。

売れない空き家は、試しに空き家バンクに登録も試してみることも価値はあります。

空き家バンクとは、自治体が行っている不動産情報サイトのことです。空き家バンクは不動産会社が通常取り扱わない物件も掲載されているため、掘り出し物を目当てに物件を物色している人もいます。

期待値はそれほど高くはありませんが、登録しておけば売却できる確率は少し高まります。

以上、売れない実家の空き家について解説してきました。

空き家を持っている場合、「放っておくと土地の固定資産税が上がる可能性がある」「空き家だけ相続放棄することはできない」といったことを知っておく必要があります。

すでに述べたとおり、売れない空き家を売るには、「価格を2割以上値下げしてみる」「不動産会社を変える」といった方法があります。空き家の状況に応じて、自分に合った処分方法を試してみてください。

(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)

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