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空き家になった実家に1800万円かけた松本明子さん 「実家を頼む」との父の言葉で維持し続けた25年

祖父のサーベルや祖母の嫁入り道具 廃棄はトラック10回分

――リフォームに600万円かけた実家の査定が200万円と予想以上に厳しい数字だったようですが、最終的に売買はどのようにされたのでしょうか?

昔と土地の価値が変わっているとはいえ、父が約3000万円かけて建てた家の価値が、建物の価値は0円で土地だけの200万円ですからねぇ。あまりの安さで途方に暮れていたとき、香川県が運営する「空き家バンク」というサービスを知り、これに登録しました。賃貸と売却の両方で登録し、希望額は賃貸が月10万円、売却はせめてリフォーム代くらいは元を取りたいと思って600万円にしました。ところが、「買いたい」という問い合わせがあっても、こちらの希望額と大きく隔たりのあるケースばかり。地方都市ということもありますが、街の中心部まで遠いのも原因でしょうね。

もうダメかもしれないと落ち込んでいたときに、なんと希望額で買ってくださる方が現れたのです。ともに高松ご出身で老後はUターンして故郷で暮らしたいという希望をお持ちのご夫婦でした。担当者の方によると、決め手はリフォームをしていたのと宮大工さんが建てた総ヒノキ造りで建物がしっかりしていること。空き家の場合、購入者が手を入れることなく、すぐに住める状態であることが大事なのだそうです。

実家の管理をいい加減にしていたら、更地にしないと売れなかったかもしれない。父の思いや私たち家族の思い出がいっぱい詰まった家が消えてなくなるのはやはり寂しいです。お金はかかったけど、家を解体することなく残せたことは本当によかったと思います。実家が第二の人生を歩み、新しい歴史を刻んでくれることが、とてもうれしいです。

――実家じまいの最後の大仕事が家財や遺品整理といいますが、20 トン分のごみを処理されたのだそうですね。

もうこれが想像を絶する大変さで、死ぬかと思いました(笑)。東京と高松を飛行機で3往復、車でも片道10時間かけて7往復しました。昔の人って、まず物を捨てない! 陸軍大佐だった祖父の勲章やサーベル、100歳まで生きた祖母の嫁入り道具から亡くなるまでの持ち物から両親の持ち物や家具、日用雑貨など膨大な量です。これらにすべて目を通しました。父のレコードや本も大量にあり、小説家を目指していた父の書きかけの小説原稿もありました。なかにはエッチな本や雑誌も(笑)。苦笑しながら片付けましたよ。

私の名前入りの鉛筆や彫刻刀、お道具箱、縦笛やハーモニカなど、私の子どもの頃の持ち物もたくさん残ってました。私が出演したテレビ番組はすべてビデオ録画し、新聞や雑誌などもファイルにして保存してありました。ああ、私は本当に両親に大事にされていたんだな、と親の愛情を感じました。ビデオはDVDにダビング、データ化できるものはデータ化して保存しました。

松本さんが小学校時代に使っていた学用品(左)中学時代の習字の作品も実家に丁寧に保管されていました。松本さんは「実家じまいで両親の愛情を再確認できた」といいます(c)松本明子/祥伝社

家財や遺品をまるごと整理してくれる業者さんがあることを後に知ったのですが、私は時間をかけてすべてに目を通したからこそ、家族への理解も深まり愛情を再確認することができてよかったと思いますね。大変でしたけど(笑)。

弁護士や司法書士や遺品整理業者 プロのアドバイスは必要

――実家じまいをスムーズに進めるためには専門家の併走も必要になると思いますが、専門家のアドバイスを委ねたり、サポートを受けたりしたことはありますか? 

プロに併走してもらうことは絶対に必要です。遺産の名義の書き換えだけでも、大変なんですから、私1人では到底無理でした。空き家に関する法律や税制など、プロのアドバイスなしには知るよしもありませんでしたもの。

実家の売買に関しては前述の「空き家バンク」にお世話になりました。相続に関しては、兄に生前贈与したり、母も公正証書を残してくれたりして、幸いもめることはなかったのですが、親が元気なうちに、どこにどんな財産がどのくらいあるのか、そしてそれをどうしたいのかを家族で話し合って、明確にさせておいたほうがいいと思います。

父の「実家を頼む」という言葉も、それはいつまでなのか、ずっと維持するのか、ある程度で手放してもいいのか。それをちゃんと話し合っておけば、もっと早くに実家じまいができていたかもしれません。私の東京と高松のように、実家が遠隔地の人は、移動だけでも時間とお金がかかります。弁護士や司法書士などの士業や遺品整理業者など、必要に応じてサポートしてもらうのが賢明だと思います。

「親との実家じまいの話題づくりに、私の『しくじり経験』を役立ててください」という松本さん。撮影:伊ケ崎忍

――実家の空き家問題で悩んでいる人にアドバイスをお願いします。

なるべく早いうちに、ご両親と家について将来どうするかを話しあっておくことが大事です。そして実家じまいに至るストーリーを作り、メインとなる人物を決め、その人が中心となって進めていくとスムーズです。もっとも親が元気なうちは、なかなか話にくいものです。私の知り合いは、リビングやコタツの上に、私の本、『実家じまい』をさりげなく置いていると言っていました(笑)。

着手するタイミングは、もちろん、“なる早”に越したことはありません。でも、人それぞれのタイミングがあるとも思うのです。私が実家じまいをしよう!と決めたのは、これからも芸能界で生きていく覚悟を決めた時期でもあったのです。

両親の介護やみとりもありましたが、子育て中は、独身時代のように仕事だけにまい進はできませんでした。息子が大学生になり、子育ても一段落して今後の自分の生き方を考えたとき、やはり私は芸能界で納得のいくまで頑張りたいという思いが明確になったのです。それは20代や30代ではできない覚悟でした。いろんなことを決断する人生の節目だったのでしょうね。

実家じまいに時間をかけた分、両親の愛情も再確認できたし、思い残すことなく実家とお別れもできました。私の場合は25年という長い歳月と大赤字を出してしまいましたが、今になって考えれば、これも必然だったのではないかと思います。ただ、まだ高松のお墓をどうしようか悩んでいるところなんですよ。この件は、またどこかでご報告しますね。

松本明子さんプロフィール
1966年生まれ。香川県出身。82年にテレビ「スター誕生!」チャンピオン大会に合格したことがきっかけでデビュー。元祖バラドルとして、明るく親しみやすいキャラクターで人気を確立。近年は、自身の実家じまいを「しくじり経験」といって、その重要性を発信している。

『実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社、定価1500円)
松本さんの実家じまいの経験談が詳細につづられているほか、松本さんが行政書士や空き家の処分に詳しい専門家に聞いた「教えて専門家の人!」には、実家やお墓について役立つ情報が多く掲載されている。

(記事は2022年7月1日現在の情報に基づきます)

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