空き家だと固定資産税が6倍になるって本当? 対策と注意点を解説
少子高齢化や核家族化が進む中、日本全国で増え続ける「空き家」が社会問題となっています。使い道のない家屋を相続し、毎年の固定資産税や維持費を支払い続けているケースも少なくありません。空き家に関しては、売却や解体の場合はもちろん、所有しているだけでも税金が課され、さらに「特定空き家」に指定されると一気に固定資産税が跳ね上がることとなります。今回は空き家の固定資産税について解説します。
少子高齢化や核家族化が進む中、日本全国で増え続ける「空き家」が社会問題となっています。使い道のない家屋を相続し、毎年の固定資産税や維持費を支払い続けているケースも少なくありません。空き家に関しては、売却や解体の場合はもちろん、所有しているだけでも税金が課され、さらに「特定空き家」に指定されると一気に固定資産税が跳ね上がることとなります。今回は空き家の固定資産税について解説します。
目次
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空き家については、「相続による取得」や「所有」、「売却」などの局面に際し、さまざまな税金が課せられることとなります。以下では空き家に対して課税される可能性のある税金について、順番に解説します。
空き家に限らず、相続によって家屋や土地などの不動産を承継する場合には、相続税の課税対象となります。そして、相続税については、「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額を超える場合に納税額が発生します。
なお、被相続人の住居などの用途に供されていた宅地に関しては、一定の要件を満たす場合には“小規模宅地等の特例”によって評価額を大幅に減額することで、相続税の負担を減少させることが可能です。
また、不動産を相続する場合には、名義変更のために相続登記を行わなければならず、その際には登録免許税を納めなければなりません。
相続登記の場合の登録免許税は、「不動産の固定資産税評価額×0.4%」によって計算されます。たとえば、固定資産税評価額が1000万円の不動産の場合、1000万円×0.4%=4万円の登録免許税が課税、といった形です。なお、遺言によって相続人以外の人が不動産を取得した場合には、登録免許税の税率は2.0%となります。
空き家を売却した場合には、譲渡所得を計算する必要があります。譲渡所得は「譲渡収入-取得費+譲渡費用」によって算出し、この譲渡所得に対して所得税や住民税が課税されます。
この場合の税率は、所有期間が5年以下の場合には所得税(復興特別所得税を除く)30%+住民税9%=39%、5年超の場合には所得税(復興特別所得税を除く)15%+住民税5%=20%となります。なお、上記所有期間には、被相続人がその不動産を所有していた期間も含まれます。
また、空き家を売却した場合には、算出した譲渡所得から最大で3000万円を控除できる「空き家の譲渡所得の3000万円控除」の特例が設けられています。
この特例を適用するためには、
などのさまざまな要件が設けられているため、空き家を売却する場合には、特例要件を満たすかどうかご確認ください。
空き家を所有し続けると、毎年固定資産税や都市計画税が課せられることとなります。固定資産税とは、法人、個人を問わず、毎年1月1日時点での不動産所有者に対して課せられる税金で、原則としてすべての土地や家屋が対象となります。
一方、都市計画税は、都市計画法による市街化区域内に所在する土地や家屋が課税対象となります。
不動産に対して課される固定資産税は、「固定資産税評価額×1.4%(都市計画税は0.3%)」によって算出されます。
なお、住宅用地に関しては、以下のような減額特例が設けられています。
たとえば面積が200㎡で評価額が1800万円の宅地の場合、以下のように計算されます。
つまり固定資産税の計算上、「住宅」となっている場合には、空き家を解体することは解体工事費用がかかるだけでなく、宅地が“住宅用地”ではなくなってしまうことで固定資産税の負担増加にも繋がります。このような課税体系が、空き家が取り壊されることなく放置されている現状に拍車をかけているのです。
全国的に空き家が増えることによって、周囲の生活環境が悪化するだけでなく、家屋の崩壊や火災などのリスクが高まります。そこで平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、空き家への対策が強化されることとなりました。
具体的には、以下のように管理状態が不十分な空き家は「特定空き家」として指定されます。
特定空き家の指定に関しては、以下のように行われます。
空き家の調査→特定空き家に指定→助言・指導→勧告→命令→行政代執行
調査によって特定空き家に指定された場合、まず自治体からの「助言・指導」が行われ、それにより状況が改善すると指定は解除されます。改善が行われない場合には「勧告」がなされ、特定空き家の宅地は固定資産税や都市計画税の計算上、住宅用地特例の対象から除外されることとなり、その結果、翌年以降の固定資産税等は大幅に増加します。
それでもなお放置すると「命令」に切り替わり、従わない場合には50万円以下の罰金が科されます。そして、最終的には自治体が空き家を取り壊し、その取壊費用を所有者に請求する「行政代執行」に移行します。
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相続の相談が出来る税理士を探す「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の施行によって、空き家の所有にはより一層注意が必要となりましたが、固定資産税をはじめ、毎年のように管理コストが発生することを考えると、以下のような活用方法を検討することが望ましいでしょう。
空き家の売却が現実的であれば、先述した「空き家の譲渡所得の3000万円控除」の特例適用を受けることによって、所得税や住民税の納税額を大幅に抑えて売却することができます。
また空き家を相続した際に相続税を納めている場合、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却すると、譲渡所得の計算上、売却した空き家に対応する相続税額を取得費に加算することができます。(相続税の取得費加算の特例)
空き家が所在する地域によっては、解体費用の補助制度を設けている自治体も存在します。自治体によって補助内容は異なりますが、解体費用にかかわらず定額を補助する場合や、費用の一定割合を補助する場合などが挙げられます。
ただし、解体によって更地とする場合には、住宅用地から外れることで固定資産税が増加することとなりますのでご注意ください。
空き家の状況次第では、リフォームすることで賃貸物件として再生させることも選択肢のひとつとなるでしょう。また、空き家を解体した後の更地を月極駐車場やコインパーキングとして活用することも可能です。
安定した賃貸収入を得ることができれば、リフォームや解体費用、毎年の固定資産税の負担と相殺することができるでしょう。
所有者以外の親族が住む場合も、特定空き家の指定を回避することができます。住宅用地の特例を維持できるだけでなく、第三者に賃貸する場合にくらべ、賃貸人としての安心感も大きいかもしれません。
また、現時点では住む予定がないものの、将来的に住む可能性がある場合には、空き家のまま管理することも可能です。遠方など自ら管理することが難しい場合には、空き家の管理サービスを利用することも検討してみてください。
空き家を売却する場合には、「空き家の3000万円控除」や「相続税の取得費加算」の特例適用の可能性がありますが、いずれも譲渡日に期限が設けられています。買い手探しは早めに行うようにしましょう。
また解体して更地にする場合には、固定資産税が増加するため売却や賃貸を検討し、空き家のまま所有する場合には、特定空き家の指定を受けないように管理することが必要です。適切な空き家対策がわからない場合には、税理士など専門家への相談を検討してみてください。
(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)