受け取った弔慰金は相続税の対象になる? 判断の目安と計算方法を解説
企業の中には、福利厚生の一環として慶弔金(けいちょうきん)制度を採用しているところが多くあります。これは、従業員本人やその家族にお祝い事や不幸があった際に、一定のお金が支給されるという制度です。具体的には結婚祝い金や出産祝い金、見舞金などがありますが、ここでは、従業員が亡くなった際に支給される「弔慰金(ちょういきん)」について、相続税の対象となるかどうかを含めて解説していきます。
企業の中には、福利厚生の一環として慶弔金(けいちょうきん)制度を採用しているところが多くあります。これは、従業員本人やその家族にお祝い事や不幸があった際に、一定のお金が支給されるという制度です。具体的には結婚祝い金や出産祝い金、見舞金などがありますが、ここでは、従業員が亡くなった際に支給される「弔慰金(ちょういきん)」について、相続税の対象となるかどうかを含めて解説していきます。
目次
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弔慰金(ちょういきん)とは、企業の福利厚生制度の一環として、従業員が亡くなった場合に、その遺族に対して企業から支給されるお金のことです。支給金額は企業や団体、勤続年数など、それぞれの規定によって定められています。
弔慰金は相続税法において、相続財産には含まれません。従って、原則として相続税は非課税です。しかし、故人が会社の役席であった場合や、長年の功労が認められた場合など、企業から高額な弔慰金が支給されることもあります。このような場合にまで、全額非課税とすると不公平が生じることとなります。
そこで税法上は、一定の限度額(非課税枠)を設け、限度額を超えると相続税が課税されるという制度になっています。受け取った弔慰金が限度額を越えた場合には、その超えた部分のみ「死亡退職金」として扱われるのです。
弔慰金は、「相続税法基本通達3-20」により、「社会通念上相当と認められているもの」については、所得税、贈与税ともに非課税とされています。この「社会通念上相当と認められているもの」については、特に金額が決められているわけではなく、個別に判断されることとなります。
「相続税法基本通達3-20」では、亡くなった人の相続人が受け取る弔慰金が、以下の場合は弔慰金として取扱うこととしています。
この範囲内であれば相続税は非課税とされ、これを超える部分は退職金等として取扱い、相続税の課税対象となります。
弔慰金か退職金か、どちらか判断できない場合も、この二つの基準で判断することになります。
受け取った弔慰金が非課税枠を超えた場合、その超えた部分は退職金等として、相続税の課税対象となります。ただし、相続人が受け取った退職金等はその全額が相続税の対象となるわけではありません。
相続人の全員が受け取った退職手当金等を合計した額が、非課税限度額よりも少ない場合、相続税は課税されません。非課税限度額は次の式により計算した額です。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
ここでは、弔慰金が課税されるときの計算を見ていきましょう。
退職金2000万円、弔慰金1000万円、普通給与が50万円、業務外で死亡、法定相続人3人のケースでは以下のとおり1200万円が課税対象となります。
弔慰金は「相続税申告書第10表(退職手当金などの明細書)」を使用します。上段で非課税枠を超えた1,200万円につき、勤務先の名称、住所、受給年月日、受取金額、受取人の氏名等を記載していきます。そして、下段で受取人ごとの課税価格を記載します。詳しい記載方法は国税庁の「相続税の申告のしかた」を確認してください。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る税理士を探す弔慰金というと、一般的に企業から支払われるものですが、国や自治体が支給するものもあります。例えば、一定の基準を満たすような自然災害により死者が出た場合、その遺族に対して国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1を負担して災害弔慰金が支払われることになっています。これらの公的な弔慰金は、一定の要件を満たすことで相続税は非課税となります。
主な公的弔慰金は以下のとおりです。
例えばA社を退職(退職金は受け取っている)し、B社に再就職した後に死亡した場合において、A社とB社の2か所から弔慰金を受け取ることもあります。
(1)A社からの弔慰金は遺族の一時所得
このケースにおいてA社から支給される弔慰金は、勤務している会社以外から支払われるものですから退職手当金に該当せず、遺族の一時所得となります。
(2)B社から支給される弔慰金については、上で述べたとおり、相続税法基本通達3-18から3-20までにより判定することになり、弔慰金の金額が非課税限度額の範囲内において、相続税は非課税となります。
弔慰金については、金額も多額になることが多く、死亡退職金と判別できない場合もあるでしょう。また、業務上の死亡か業務外での死亡かについても、判断が難しい場合があります。多額の弔慰金を受け取った場合には、相続に関する専門家である税理士や弁護士などに相談することをおすすめします。
(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)