目次

  1. 1. 土地の相続税を計算する方法
  2. 2. 土地の評価方法は大きく2パターンある
    1. 2-1. 路線価方式
    2. 2-2. 倍率方式
    3. 2-3. 賃貸している場合
  3. 3. 土地持ちの地主の相続税対策
    1. 3-1. 財産の組み換えによる生前対策
    2. 3-2. 生前贈与による相続税対策
    3. 3-3. 生前から行う納税資金対策
  4. 4. 生前の相続税対策や相続税申告上の注意点

相続した土地にかかる相続税の計算方法について、「土地の評価額×相続税の税率」と勘違いをしている方が多いですが、実はそんなに単純ではありません。

相続税は、以下図表の「課税される遺産総額」に対して課税されます。相続した土地は、その評価額が以下図表の一番上段「遺産総額」に含まれますが、その評価額に直接税率を乗じて相続税額を求めるわけではありません。

課税遺産総額の計算

相続した土地の評価方法は、課税時期(相続により財産を取得した日で、通常は被相続人の死亡日)における現況地目(土地の利用状況)によって異なりますが、ここでは現況地目が宅地の場合の評価方法を簡単にご紹介します。

宅地の評価方法は、大きく(1)路線価方式と(2)倍率方式の2パターンに分けられます。相続した宅地の評価方法が、路線価方式か倍率方式かは、毎年国税庁ホームページ路線価図・倍率表(以下参照)で公表されています。
参考:国税庁HP路線価図・倍率表

路線価方式は、相続した宅地が接面する道路に付された路線価をもとに評価する方法です。
路線価は、その路線(道路)に接面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額が千円単位で表示されたものであり、毎年国税庁より公表されています(国税庁HP路線価図https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm)。
路線価は、地価公示価格のおおむね8割水準で定められています。なお、路線価が定められている地域は、主に路線(道路)ごとに地価の差の開きが見られる市街地になります。

もっともシンプルな宅地の評価例を示せば以下の通りです。設例では、路線価に奥行価格補正率を乗じているだけですが、実際の土地の形状によっては、他の補正率も乗じて補正し、最後に土地の面積を乗じて評価します。

出典:国税庁HP「税務大学講本 相続税法(令和3年版)」106貢
出典:国税庁HP「税務大学講本 相続税法(令和3年版)」106貢

倍率方式は、相続した宅地の基準年度の固定資産税評価額に評価倍率(1.1が多い)を乗じて評価する方法です。評価に用いる倍率は、毎年国税庁より公表されており、国税庁ホームページ倍率表https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm
で確認できます。路線価方式で評価する地域以外(地方郊外の住宅地や農村地域など)にある宅地は倍率方式で評価されます。

出典:国税庁HP「税務大学講本 相続税法(令和3年版)」108貢
出典:国税庁HP「税務大学講本 相続税法(令和3年版)」108貢

例えば、被相続人が自身の宅地上にアパートを建てて賃貸していた場合や、自身の土地自体を建物所有目的で誰かに賃貸していた場合、上記①②で評価した宅地の評価額から他人の権利が付着していることに伴い、一定の評価減を行って評価します。

ひと口に相続税対策といってもその内容は様々ですが、被相続人の死後にできる対策は限られているので、ここでは生前にできる対策について具体例を挙げて簡単にご紹介します。

これは、保有財産を組み換えることにより相続税の課税対象となる財産評価額の引き下げを狙った対策です。

具体例としてよく挙げられるのが、土地持ちの地主が、土地の上にアパートを建築するというものです。ここで、アパート建築資金は手持現預金や借入金で調達します。現金預金をそのまま保有しているよりもアパートを建築することで土地や建物の評価上一定の評価減を適用できるため生前にできる相続税対策となります(下図参照)。

アパート建築による相続税対策イメージ図(図出典:筆者作成)
アパート建築による相続税対策イメージ図(図出典:筆者作成)

また、アパートの建て方次第で土地の評価額に大きな差異が生じます。例えば、下図において、2棟建築の場合と1棟建築の場合では、『評価通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)』の適用要件のうち面積要件の判定結果が異なり、2棟建築の方は評価減として大きな『評価通達20-2』の適用ができなくなってしまいます。

アパートの建て方による相続税評価額の違い(図出典:筆者作成)
アパートの建て方による相続税評価額の違い(図出典:筆者作成)

もちろん、2棟建築の場合と1棟建築の場合では建築コストやアパートとしての収益性などが異なるため、相続税評価額の大小だけで建て方を決定すべきではありません。しかしハウスメーカーに丸投げせずに、税理士にも相談の上、アパートの建て方まで検討した方がよいでしょう。

相続税対策が必要な地主がすでにアパート経営を行っている場合、アパート経営から生じる利益(家賃収入-必要経費)相当の現預金が毎年蓄積し、相続税の課税対象が増えていきます。そこで相続時精算課税制度を選択してアパートなどの収益物件を、生前に子(例:息子)に贈与する方法も考えられます。こうすることで、贈与後の家賃収入が子に帰属し、相続税対策が必要な方の現預金がどんどん増えるのをストップさせることができます(下図参照)。

収益物件の相続時精算課税制度による生前贈与のイメージ図(図出典:筆者作成)
収益物件の相続時精算課税制度による生前贈与のイメージ図(図出典:筆者作成)

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対する贈与について選択できる制度です。

土地持ちの地主の相続の場合、相続した土地などの不動産はすぐに売却して換金できないため、相続税の納税資金が不足する危険性が高いです。そのため、地主が生前に生命保険をかけるなどして納税資金をあらかじめ準備しておくことも有効です。

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生前の相続税対策として先にいくつか具体例を紹介しましたが、各種相続税対策には必ず注意すべき点やデメリットも存在します。例えば、アパート経営にはアパート自体の収益性低下による各種経営リスクがある点も十分に認識しておく必要があります(下図参照)。

アパートの収益性低下に伴う各種リスク(図出典:筆者作成)
アパートの収益性低下に伴う各種リスク(図出典:筆者作成)

相続開始後の相続税申告においては、土地をはじめとした各種の財産の評価ミスや評価漏れ、小規模宅地等の特例の適用ミスや適用漏れなどに注意が必要です。

生前の相続税対策や相続開始後の相続税申告で困ったら早めに税理士に相談しましょう。

(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)