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相続税の申告に必要な「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」とは? 書き方と注意点を解説
相続税の申告にあたっては、申告書だけでなく各種さまざまな書類を作成する必要があります。亡くなった被相続人から相続した土地がある場合には、土地の評価額を計算するために「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を作成して相続税申告書に添付する必要があります。一見すると複雑な明細書ですが、市街地の戸建住宅の敷地など形状の整ったシンプルな宅地であれば、相続人自身でも作成が可能です。今回は、この評価明細書の書き方を税理士が解説します。
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1. 「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」とは?
「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」(以下「評価明細書」)とは、相続税や贈与税の申告に際し、相続や贈与により取得した土地及び土地の上に存する権利(借地権など)の評価額を計算するために作成するものです。
ひと口に土地といっても、宅地、農地、山林等さまざまな地目がありますが、この評価明細書は主に「宅地」について路線価方式で評価する場合に使用します。
実際の評価明細書は、国税庁のホームページにてダウンロードできます。
国税庁HP:評価明細書リンク
なお上記リンク先には、評価明細書のほか「調整率表」というものがあります。調整率表とは、評価明細書の作成にあたり必要な各種調整率がまとまっている一覧表のことです。
2. 評価明細書第1表の書き方
評価明細書は第1表と第2表から構成されています。第1表は宅地の自用地としての評価額を計算するために使用します。
なお自用地とは、自用の宅地のことをいい、例えば被相続人が所有する土地で自宅の敷地や自営店舗の敷地として利用しているものを指します。
2-1. 第1表の具体的な書き方
まず、評価明細書第1表の具体的な書き方を説明します。
今回評価する宅地は、国税庁のホームページで評価過程が算式で示されている二方路に面する宅地(下図)とし、被相続人の所有する土地で自宅の敷地として利用しているものと仮定します。
記入項目①
ここには、評価対象地が含まれている路線価図に記載されている税務署名、年度、ページ番号を記入します。路線価図は以下の国税庁ホームページのリンクで確認できます。
国税庁HP路線価図
記入項目②
所在地番、及び、所有者は、評価対象地の登記簿から記入します。使用者は相続開始時に評価対象地を使用していた人の名前(法人の場合は会社名)を記入します。
記入項目③
地目は、相続開始時における現況地目を記入します。実務上、登記簿の地目や固定資産税課税明細書の地目が参考になりますが、必ずしもこれら地目と現況地目が一致しているとは限らないので、現にどのように利用されているかを確認します。
記入項目④
地積は、相続開始時における実際の面積(700㎡)を記入します。実務上は、登記簿、地積測量図、固定資産税課税明細書などを入手して面積を把握します。
記入項目⑤
路線価は、評価対象地が接する道路に付された路線価を、国税庁のホームページ内にある「路線価図」で確認して記入します。路線価図の数値の単位は千円/㎡なので、今回の宅地の路線価300は300,000円/㎡を意味します。
なお、今回の宅地のように複数の道路に接する場合には、どの道路が正面路線かを判定する必要があります。原則として、その宅地が接する各道路の路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額の高い方の路線を正面路線と判定します。今回の宅地では以下の通り、300,000円/㎡が正面路線、200,000円/㎡が側方路線(正面路線以外の道路)となります。
路線価 奥行距離35mに応ずる奥行価格補正率※
300,000円/㎡×0.97=291,000円・・・A
路線価 奥行距離20mに応ずる奥行価格補正率※
200,000円/㎡×1.00=200,000円・・・B
A > B → Aが正面路線
※奥行価格補正率は、国税庁ホームページ内の「調整率表」の中にある「奥行価格補正率表」で確認できます。
記入項目⑥
評価対象地が正面路線に接している間口距離、及び、正面路線からの奥行距離をそれぞれ記入します。実務上は、公図・地積測量図等の資料から各距離を概測し、現地調査時に概測結果とおおむね相違ないかを確認して距離を確定します。
記入項目⑦
利用区分は、評価対象地を所有者自らが利用しているのか、第三者に貸しているのか等の利用状況に応じて該当する項目を記入します。今回の宅地は「所有者である被相続人自らの自宅の敷地として利用していた」としているので、「自用地」と記入しています。
記入項目⑧
地区区分は、評価対象地の路線価図から把握して記入します。
国税庁HP路線価図
記入項目⑨
ここでは、評価対象地の評価のベースとなる正面路線の路線価に奥行価格補正率を乗じた価額(1㎡あたり)を求めます。奥行価格補正率は記載項目⑤をご参照ください。
記載項目⑩
ひとつの道路にのみ接する宅地の場合には、記入項目⑩の記入は不要です。今回の宅地は2つの道路に接するので、正面路線以外の道路である側方路線に接することによる価値の増価分を記載項目⑨で計算した価額に加算するため(側方路線加算という)、記載項目⑩の記入が必要となります。
なお、側方路線影響加算率(0.08)は国税庁ホームページ内の「調整率表」の中にある「側方路線影響加算率表」で確認できます。
側方路線影響加算率には、「角地」の他に「準角地」という区分がありますが、「角地」と「準角地」の違いは以下リンクを確認してください。今回の宅地は、「角地」になります。
国税庁HP:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm#a-hyou_02
記入項目⑪
最後に、第1表の最下部で記載項目⑩で求めた価額(1㎡あたり)に地積を乗じて、評価対象地の自用地としての評価額を求めます。
3. 評価明細書第2表の書き方
評価明細書の第2表は、セットバックが必要な宅地や都市計画道路予定地といったやや特殊な宅地であるケースや、他人の権利の付着した宅地(貸宅地、貸家建付地など)、他人の土地を使用する権利(借地権など)の評価額を計算するために使用します。
3-1. 第2表の具体的な書き方
では、評価明細書第2表の具体的な書き方を説明します。
先に評価明細書第1表で評価した宅地(今回は被相続人以外が所有する土地とします)を、被相続人が地代を支払って借りて自宅を建てて住んでいた場合を想定します(いわゆる借地権付建物のこと)。このような場合、被相続人の相続税申告上、土地賃借権である借地権の評価額を求める必要があり、第2表を使用して以下の通り求めます。
記入項目⑫
評価明細書第1表で求めた自用地としての評価額に、借地権割合を乗じて借地権価額を求めます。借地権割合は路線価に付されたアルファベットに応じて定められており、路線価図で確認できます。今回は路線価300CですのでアルファベットCに対応する借地権割合70%(0.7)を記入します。
なお、借地権の評価を行う場合、評価明細書第1表の記載項目⑦の利用区分は、「自用地」ではなく、「借地権」に丸囲みのチェックをしますが、他は「自用地」の場合と同じになります。
4. 評価明細書の入出方法は主に2つ
評価明細書の入手方法としては、国税庁のホームページからダウンロードしてプリントアウトする方法以外に、税務署に直接訪問して入手する方法があります。
5. 評価明細書の書き方の注意点
今回は、あらかじめ宅地の評価に必要な数値等は与えられた前提で評価明細書の書き方に焦点を絞って解説しました。しかし実際には、評価に必要な各種資料(登記簿、公図、地積測量図など)は自身で集める必要があります。
また、今回は宅地の形状がきれいな長方形でしたが、台形や旗竿地のような不整形地の場合には形状が悪いことによる減価を考慮する必要があり、評価明細書作成上の難易度が上がります。どんな資料を集めたらいいかわからない、資料を集めている時間がない、評価明細書の作成が難しいと感じた場合には、早めに税理士に相談した方がよいでしょう。
(記事は2021年8月1日時点の情報に基づいています)
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