形状が悪い不整形地とは? 相続税申告における不整形の評価方法と相続税申告の注意点
土地はひとつとして同じものがなく、規模・形状もさまざまです。相続した土地が形状の悪い不整形地の場合、相続税申告における土地の評価額を減額できる取り扱いがあります。不整形地とは具体的にどんな形の土地のことか、また、不整形地の相続税評価額はどう求めるのか。不動産鑑定士の資格を持つ税理士が解説します。
土地はひとつとして同じものがなく、規模・形状もさまざまです。相続した土地が形状の悪い不整形地の場合、相続税申告における土地の評価額を減額できる取り扱いがあります。不整形地とは具体的にどんな形の土地のことか、また、不整形地の相続税評価額はどう求めるのか。不動産鑑定士の資格を持つ税理士が解説します。
目次
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不整形地とは、簡単にいえば、きれいな正方形や長方形の形状をした土地(以下「整形地」)以外の土地をいいます。
不整形地は整形地に比べ、敷地内における建物の配置が制限され、敷地の形状にあわせて建物の形状も変える必要があり、建築コストがかさむケースが多いので、総じて整形地に比べて価値が低くなります。
相続税の財産評価のルールブックである『財産評価基本通達(以下「評価通達」』では、不整形地であることによる減価を踏まえて土地の評価額を減額補正できる取り扱いとして、評価通達20(不整形地の評価)が定められています。
評価通達20(不整形地の評価)の評価方法について、以下図表1を用いて説明します。
Step1:図表1の不整形な評価対象地を評価するには、図表1の点線のように不整形地を囲む整形の四角形の画地(以下、「想定整形地」)を描きます。
Step2:想定整形地の面積から評価対象地の面積をマイナスすることで図表1のグレー部分(以下「かげ地」)の面積を求めます。
Step3:かげ地の面積が想定整形地の面積に占める割合(以下「かげ地割合」)を以下の方法で算出します。
かげ地割合 = かげ地の面積 ÷ 想定整形地の面積
Step4:国税庁公表の路線価図に記載の評価対象地の地区区分、および、評価対象地の地積を以下④不整形地補正率を算定する際の地積区分表に当てはめて、「A」「B」「C」のいずれに該当するかを確認します。
Step5:Step3で算出した「かげ地割合」とStep4で確認した「地積区分」を以下⑤不整形地補正率表に当てはめて、不整形地補正率を求めます。最後に、整形地として求めた土地の評価額に不整形地補正率を乗じて、不整形地である評価対象地の評価額を求めます。
不整形地といってもその形状は千差万別ですが、評価通達では「かげ地割合」を求め、「かげ地割合」が大きければ大きいほど不整形の度合いも大きいと判断することとしています。さらに、同じ「かげ地割合」でも地積や地域によって土地価格に与える減価の程度が異なる点を考慮して不整形地補正率を求めることとしています。
評価通達20(不整形地の評価)では、不整形地の形状に応じて大きく4つのタイプに分けられています。いずれか納税者に有利な方法により、不整形地補正率を乗じる前の土地の評価額を求めることができます。
以下、その4つのパターンをご紹介します。
この方法による実際の計算例が気になる方は、以下国税庁HPリンクをご確認ください。
国税庁HP質疑応答事例「不整形地の評価―区分した整形地を基として評価する場合」
この方法による実際の計算例が気になる方は以下国税庁HPリンクをご確認ください。
国税庁HP質疑応答事例「不整形地の評価―計算上の奥行距離を基として評価する場合」
この方法による実際の計算例が気になる方は以下国税庁HPリンクをご確認ください。
国税庁HP質疑応答事例「不整形地の評価―近似整形地を基として評価する場合」
この方法による実際の計算例が気になる方は以下国税庁HPリンクをご確認ください。
国税庁HP質疑応答事例「不整形地の評価―差引き計算により評価する場合」
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相続の相談が出来る税理士を探すなお、不整形地の相続税を申告する際には、以下の注意点があります。
相続税申告の実務上、税理士が評価通達に基づき土地の評価をする場合には、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」(以下リンク参照)を作成して相続税申告書に添付します。
国税庁HP「[手続名]土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」
シンプルな整形地であれば、相続人が自分でこの評価明細書を作成することもできますが、不整形地の場合、所定の欄で不整形地補正率の算出過程を記載する必要があり、評価明細書の作成難易度が上がります。したがって、不整形地の評価が必要な場合には、計算ミス防止のため、また評価明細書の作成の観点からも相続税申告に精通した税理士に依頼した方が確実でしょう。
評価通達20(不整形の評価)では、不整形の度合いを「かげ地割合」の大小で画一的・形式的に判断することとしています。すべての納税者の公平の観点から、こうした画一的・形式的な評価方法は一般的に合理的とされていますが、例えば以下のような問題点も存在します。
したがって、「かげ地割合」の程度、かげ地の位置などからみて、不整形の程度が極端に大きく評価通達の不整形補正率が必ずしも妥当ではないケースも存在します。こうした場合、評価通達による評価方法ではなく、不動産鑑定士による不動産鑑定評価を検討する方法もあります。不動産鑑定士による土地評価の報酬は各社で異なりますが、それほど規模の大きくない宅地であれば20万円~30万円程度を見ておけばよいかと思います。詳しくは各社ホームページの料金表などを確認ください。
ただし、いくら不整形の程度が大きくても不動産鑑定評価の方が評価通達による通達評価額より常に低く評価できるわけではありません。
理由としては、相続税路線価自体が地価公示価格の8割水準で設定されている一方で(地価公示100とすると相続税路線価80)、不動産鑑定評価で求める更地価格は地価公示価格と均衡した価格として求める必要があるので(地価公示100とすると更地価格も100)、評価のスタート段階で鑑定評価の方が評価通達より2割程度高い点が挙げられます。ですので、仮に評価通達20(不整形地の評価)の不整形補正率よりも不動産鑑定評価の不整形補正率の方が大きく査定されたとしても、相続税路線価より2割程度高い更地価格から不整形地補正率による減価を加えた不動産鑑定評価額よりも評価通達による通達評価額の方が低くなる場合も多いのです(以下図表2参照)。
相続税申告の場面では、評価通達による評価方法が一般的に合理性のある方法とされています。そのため不動産鑑定評価額を使う場合は、その鑑定評価書のクオリティの高さに加え、評価通達では考慮しきれない減価要因の存在などの主張・立証を相続人(納税者)側が行う必要があるため、総じてハードルは高いといえます。
したがって、相続税申告において不整形地の評価が必要な場合には、いきなり不動産鑑定士に相談するのではなく、まず相続税申告に精通した税理士に不動産鑑定士へ相談すべきか否かも含めてアドバイスを受ける方が良いでしょう。
(この記事は6月1日時点の情報に基づいています)
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