お布施は相続税で控除できる? 領収書がないときの対処法
お布施は葬式費用の一つとして相続財産の額から差し引けます。ただし、領収書の有無について気になる人も多いはず。お布施の領収書をもらえなかったら、相続税から控除できないのでしょうか。賢い対処法を税理士が解説します。
お布施は葬式費用の一つとして相続財産の額から差し引けます。ただし、領収書の有無について気になる人も多いはず。お布施の領収書をもらえなかったら、相続税から控除できないのでしょうか。賢い対処法を税理士が解説します。
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お布施とは、お寺の僧侶に対し、読経や戒名の謝礼として渡す金品のことをいいます。本来は「仏を供養する」という意味があります。あくまで気持ちから支払うものであり、対価ではありません。
お布施は相続税の計算上、「葬式費用」にあたります。そのため、お布施を支払った人が承継した相続財産の額から差し引けるものです。お布施以外にも、僧侶へのお車代(交通費)やお膳料(会食に参加しないときに包むお金代)、お土産代も控除の対象となります。
具体的な計算は次のようになります。
この後、少し複雑なプロセスを経て相続税額を計算します。細かい説明は省きますが、葬式費用を負担していると、その分納税額が下がるのです。
相続税法では、相続人や包括受遺者が支払った葬式費用を、相続税の計算の基準となる相続財産の額から差し引けます。お布施も葬式費用の一つですが、払ったお布施のすべてを控除できるとは限りません。
税法上の葬式費用になるのは、故人の死亡に伴い必要となる葬儀費用と遺体処置費用です。具体的には、次のように分かれています。
葬式費用に含まれるのは、次のような費用です。
葬式のときに包んだお布施やお車代、お膳料は、5の「葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用」に該当します。そのため、葬式費用に含まれることになります。
一方、次のような費用は、葬式費用になりません。
葬式以外でも、初七日や四十九日、一周忌などといった法事でもお布施やお車代、お膳料を支払うことがあります。残念ながら、法事で支払った分は葬式費用に含まれません。法事はあくまで亡くなった人の供養に過ぎず、葬る儀式ではないからです。
葬式費用として控除するには、領収書など内容や金額を証明できる書類が必要となります。交通費やお膳料は領収書がもらえますが、お布施の領収書を出してくれるお寺はあまり目にしません。
なぜでしょうか。それは、お布施はあくまでも喪主の自発的な「気持ち」という位置づけあり、読経や戒名の対価ではないからです。また、仮に対価性があると言っても、お寺には領収書を発行する義務がありません。民法第486条は領収書の発行について次のように定めています。
「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」
つまり、喪主はお寺に「領収書を出してください」と言えるだけに過ぎません。言われたお寺が領収書を発行しなかったら、それっきりなのです。
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相続の相談が出来る税理士を探すでは、領収書がなかったら、お布施は相続財産から控除できないのでしょうか。実は、そうではありません。領収書がなくても、記録を残せば差し引けます。
記録に残すべき項目は次の五つです。
これらをメモとして記録し、申告書と一緒に提出すれば、お布施も葬式費用として控除できます。
お布施に関しては、次の点に注意しましょう。
お布施は相続財産から差し引けますが、いくらでも控除できるわけではありません。「常識的に見て『これくらいが妥当』と言える金額」が限度です。亡くなった人の置かれた立場や相続人の状況などを踏まえて判断します。
日付やお寺の名前も正確に書きましょう。葬儀のその場で思い立って手帳にペンで書くのは難しいかもしれません。あらかじめ、スマートフォンのスケジュールアプリなどで葬儀の時間や場所、お寺の名前や包む予定の金額を記録しておくと安心です。
葬式費用を相続財産から差し引けるのは「実際に支払った人」です。なかには相続を放棄した人がお布施を負担する家もあるでしょう。「相続放棄をしていると、相続財産から引けないのでは?」と思われがちですが、実際には放棄していてもお布施の支払額を葬式費用として控除できます。
ちなみに、相続放棄をしても死亡保険金や死亡退職金は受け取れます。かつ、これらは相続税の課税対象です。つまり、相続放棄後に死亡保険金や死亡退職金を受け取っても、葬式費用を負担すれば、納税額を抑えられます。
お布施以外にも葬式費用となるものはいろいろありますが、正確に判断するのは難しいものです。迷ったら、税理士に相談するとよいでしょう。
(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)
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