遺産で「オリジナル基金」を創設 応援したい活動分野や地域に貢献する方法
寄付活動に関しては、自分で財団を立ち上げる選択肢もあります。でも、設立後の維持や運営の負担は小さくありません。そこで紹介したいのが、すでにある公益財団法人の下で独自に「基金」をつくる方法です。設立と運営をその公益財団に委ね、複数年にわたり助成金として活用してもらう取り組みを紹介します。
寄付活動に関しては、自分で財団を立ち上げる選択肢もあります。でも、設立後の維持や運営の負担は小さくありません。そこで紹介したいのが、すでにある公益財団法人の下で独自に「基金」をつくる方法です。設立と運営をその公益財団に委ね、複数年にわたり助成金として活用してもらう取り組みを紹介します。
最低100万円からとハードルが低く、たとえば遺産を使う場合なら亡くなった人の名前など希望する名を冠することもできる「オリジナル基金」創設に力を入れているのが、公益財団法人「パブリックリソース財団」(東京都中央区)です。同財団は、個人や企業のお金を社会的な活動につなぐ寄付推進の専門組織として2013年に公益法人の認定を受け、オンライン寄付サイトの運営や、いま取り組むべき社会課題をテーマとした基金の立ち上げなどに尽力しています。
2016年にスタートしたオリジナル基金は、応援したい活動分野や地域など、寄付者の要望を聞きながら一緒に独自の支援プログラムをつくり、基金のテーマや方針に沿う個人や団体に助成金として交付します。また、希望すれば、寄付者の基金設立に寄せる思いや、どんな人生を歩んできたのかという「ライフヒストリー」をパンフレットやビデオにまとめられるのも大きな特色です。
助成先は第三者の専門家による審査委員会を基金ごとに立ち上げ、公募で決めます。助成金は原則1件あたり、団体向けは最低50万円、個人向けは最低10万円からです。マンションに管理費が必要なように、基金の規模に応じて5~20%の運営費を財団に支払う必要はありますが、自分で財団法人を立ち上げて運営する費用を考えれば、決して高い負担ではないと思います。いまは低金利時代ですので、ほとんどの基金があらかじめ助成期間を決めた期間限定型ですが、規模が大きく、運用益で助成ができれば永続的に基金を続けていくことも可能です。
パブリックリソース財団の取り組みでは、2020年8月までに32のオリジナル基金(うち五つは企業による基金)が創設されました。遺贈や相続財産からの寄付による「井上圭子メモリアル基金」「高山弘子基金」などもあります。
たとえば「NOBUKO基金」は、2019年2月18日に41歳で亡くなった河合伸子さんの遺産を原資として、お父様からの寄付で2021年につくられました。「未来があるにもかかわらず金銭的な理由で不合理な立場に立たされている子どもが多い」と心を痛めていた伸子さんの遺志に基づき、困難を抱える子どもや家庭に育つ子どもたちを支援することを目的にしています。基金創設にあたって、お父様は「親にとっては子どもを失うことが一番の悲しみです。しかしこの『基金』が多くのこどもたちの将来を切り開く手助けとなれば、悲しみ以上の喜びとなると確信しています」と言葉を残しています。
海洋プラスチックゴミ問題に関連する環境保全活動などを支援する目的の「ビックブリッジ基金」のように、ご存命の方が、将来自分が亡くなったあとの遺贈先としてあらかじめ創設した基金もあります。オリジナル基金は、いろいろな希望に柔軟に対応できる仕組みといえます。
パブリックリソース財団で専務理事を務める岸本幸子さんは「お子さんがいないとか、身内を偲ぶためにといったご相談が増えています。私たちは大切な思いを活かし、寄付者と実際に支援を受ける側とをきちんとつなぐ役割をはたしていきます」と話しています。なお、財団は遺贈寄付をスムーズにしてもらえるようにと「ゴールデンエイジの社会貢献を実現 ご寄付に関するガイドブック」を作成しています。財団のホームページからダウンロードすることができますので、参考にされてはいかがでしょう。
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(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)