親のクレジットカードを使えば相続税は安くなる? 未払分の扱いも解説
親のクレジットカードは相続する対象に含まれます。親が死亡した時点でのカードの未払い分は相続税の計算上、どう扱うのでしょうか。また、死亡直前に大量購入すると節税できるでしょうか。税理士が解説します。
親のクレジットカードは相続する対象に含まれます。親が死亡した時点でのカードの未払い分は相続税の計算上、どう扱うのでしょうか。また、死亡直前に大量購入すると節税できるでしょうか。税理士が解説します。
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亡くなった親のクレジットカードに未払い分があると、それだけ相続税は安くなります。この未払い分は「債務控除」に当たるからです。
債務控除とは、被相続人(亡くなった人)の債務を、課税される遺産総額から差し引く仕組みです。クレジットカードの未払い分は債務にあたるので控除対象になります。
ただし、控除できるのは「債務者の死亡時点で確定している債務」だけです。親のクレジットカードの支払いならば、「死亡日以前に買い物やサービスを利用して債務が生じ、親の死亡時点で引落されていないもの」が債務控除できます。
クレジットカードの利用明細で考えると、次の2点を満たしている決済が債務控除の対象です。
● 利用日が死亡日以前である
● 引落日が死亡後である
ただし、税金は例外です。死亡時点で払うべき税金が決まっていなくても債務控除できます。
人が亡くなると、相続人が故人の代わりに生前の所得税の確定申告をします。これを「準確定申告」といいますが、申告する所得税は死亡時点で確定していません。資料を集めて計算しないと分からないのです。
しかし、相続税の申告期限までに準確定申告をし、納税額が決まれば債務控除として差し引くことができます。これはクレジットカード納付した税金だけではありません。現金や預貯金で支払った税金も債務控除の対象となります。
クレジットカードの未払いでも、墓地や仏壇などの購入に関しては債務控除できません。こういった日常礼拝用の財産は、元々相続税が非課税だからです。
最近は医療費をクレジットカードで払えるようになりました。死亡時の未払い分は相続税で債務控除できますが、気になるのが所得税の医療費控除での扱いです。引き落としが生前か死亡後かで、違いはあるのでしょうか。
生前に引き落とされた医療費は、準確定申告で医療費控除にできます。控除対象となる金額は通常の確定申告と同じです。「生前支払った医療費-『10万円』『総所得金額等×5%』のいずれか少ない金額」となります。
死亡後に引き落とされた医療費は、準確定申告で医療費控除にできません。医療費控除の対象は「申告対象となる期間中に実際支払った金額」に限られるからです。ここでいう「申告対象となる期間中」とは、「故人の生前」です。だから、死亡後に引き落とされた医療費は、生前にカード決済しても医療費控除にできないのです。
ただし、相続人である親族が故人と生計が一緒だったなら、死亡後引き落としされた分も医療費控除にできます。この場合、生きている相続人の確定申告で医療費控除を行います。
なお、生前に引き落とされた医療費も、生きている同一生計の家族の確定申告に含めることができます。ただしこの場合、準確定申告での医療費控除はできません。
親の死を予期して家族カードで大量に買い物をしている人もいるかもしれません。「たくさん買えば財産が減って相続税が減らせる!」と思いたいところです。しかし残念ですが、節税効果はありません。
親の同意のもと、カードで購入したのであれば贈与が成立します。つまり贈与税の対象となり、相続税はかからないわけです。年間の購入額が110万円超なら贈与税がかかり、それ以下なら非課税です。ただしこれは親が元気なうちに限られます。死亡日以前3年間の贈与は、相続財産に加算され、相続税の対象となるのです。
一方、親の了解なく大量購入をしたのなら、贈与は成立していないことになります。「大量購入した物は親の財産」です。結果、相続税がかかります。
つまり死亡直前の大量購入は、相続税対策にはならないのです。死亡時点での未払い分は債務控除できますが、全体から見ればわずかな金額にしかなりません。「クレジットカードでの大量買いによる節税は効果がない」と言っていいでしょう。
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相続の相談が出来る税理士を探す故人のクレジットカードの未払い分は、相続人が支払わなくてはなりません。これは高額でも拒否できません。相続はお金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や未払い費用といったマイナスの財産も引き継ぐことだからです。
高額な債務の支払は気が重いものです。ただし、引き継がずに済む方法もあります。「相続放棄」です。
相続放棄とは、被相続人の財産を一切引き継がないことです。相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述し、受理されれば相続放棄が成立します。遺産分割協議の場面で「私は相続しない」と言っただけでは相続放棄になりません。
他の方法として、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」があります。一見よさそうですが手続が複雑な上、所得税が発生します。さらに相続開始を知った日から4カ月以内に家庭裁判所に申し述べなくてはなりません。そのため、あまり活用されていません。
この他にも、相続税とクレジットカードの問題は分かりにくいところがあります。悩んだら税理士に相談しましょう。
(記事は2021年5月1日時点の情報に基づいています)
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