目次

  1. 1. 夫婦間であっても贈与税は課税される
  2. 2. 生活費や教育費は原則非課税、特例で非課税になるケースも
  3. 3. 「贈与」なのか「貸し借り」なのかを明確に
  4. 4. 税務署から「お尋ね」文書が送付されると申告漏れと認定も
  5. 5. まとめ|贈与の疑問は税務署や税理士に相談を

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夫婦間で金銭のやり取りをする、配偶者の金銭的負担を肩代わりする。よくある日常の一幕ですが、その金額によっては「贈与税」の問題が生じます。たとえば住宅を購入するとき、「費用の負担者」と「物件の名義人」が異なると、贈与があったものと判断されます。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

・夫名義の住宅の頭金を妻が負担した
・夫名義で住宅ローンを組んだが、夫婦の共同名義で物件を登記した
・夫名義の住宅ローンを、妻の資金で返済した
・夫名義の住宅のリフォーム費用を妻の口座から支払った

ただし、贈与税の原則的な計算方式である「暦年課税」の場合、年間110万円の基礎控除がありますから、贈与があったとしても基礎控除の範囲内に収まれば問題ありません。夫名義の住宅ローンの内、毎月5万円を妻が負担したとしても年間60万円ですから、他に贈与がなければ、贈与税の申告や納税を免れることができます。もし、1年間に受けた贈与額の合計が110万円を超えた場合は、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日(休日の場合は翌日)の間に贈与税の申告し、納税も済ませなくてはいけません。

金銭のやりとりがあったとしても非課税になるケースがあります。生活費と教育費です。夫婦や親子、兄弟姉妹などは「扶養義務者」に当たるため、こうした人同士で、通常必要と認められる生活費や教育費をやり取りする分には、贈与税の問題は起きないのです。

ただし、生活費や教育費の名目で贈与がなされたとしても、その金銭を他のものに使うと贈与税の対象になってきます。たとえば余ったお金を預金した、あるいは株式などの金融商品に投資をしたといったことが明らかになれば、贈与税はかかります。生活費や教育費をやり取りするときは、「必要な都度、必要な金額を」という点に留意してください。

さらに、贈与税には複数の「特例」があり、条件を満たせば、特例を使って贈与税を抑えることも可能です。婚姻期間20年以上の夫婦間で住宅や住宅取得資金を贈与した際に使える制度として、「配偶者控除」があります。配偶者控除を使えば、基礎控除の110万円に加え、2000万円までの贈与が非課税となります。

配偶者控除は、利用した後に離婚したとしても取り消されるものではありませんが、贈与税や相続税を免れるために故意に離婚したことが発覚した際は、もらった財産すべてに贈与税がかかります。また、財産分与や慰謝料として財産をもらっても贈与税は生じないものの、個別の事情を考慮しても多すぎる金額をやり取りする場合は、やはり贈与税の問題が生じます。

配偶者控除のほかにも、「住宅取得資金贈与の特例」と呼ばれる特例があります。この特例は、その名のとおり住宅取得のための資金を贈与された際に使えるものですが、「直系尊属からの贈与」にのみ適用される点に注意が必要です。つまり、両親や祖父母からの贈与が対象となるので、「配偶者の両親」や「配偶者の祖父母」から贈与された場合は特例を使うことができません。たとえば夫名義で住宅を購入するとき、妻の父親から資金を出してもらった場合、特例を使わずに贈与税の申告・納税が必要となります。

なお、配偶者控除と住宅取得資金贈与の特例を利用するには、必ず確定申告が必要です。これらの特例は併用することも可能ですが、必要な添付書類が異なるため、それぞれ用意するようにしましょう。

それでは、あらためて夫婦間で金銭のやり取りをするときの注意点を整理します。まずは、配偶者に生活費や教育費を超える金銭を渡すときは、「年間110万円以下」を目安にしましょう。

次に、住宅を新たに購入するときは、「負担者と名義人を合わせる」ことがポイントです。たとえば自宅のローンを夫婦で半分ずつ負担するのであれば、名義も2分の1ずつの共同名義にしてください。もし、負担者と名義人が合わない場合は、贈与税を申告納税をするか、「貸し借り」にしておく必要があります。貸し借りであれば贈与にはならず、贈与税の問題は生じません。

いずれにしても、金銭のやり取りが贈与なのか、貸し借りなのかは、明確に認識できるようにしておくことが大事です。当事者の合意があったことを記録に残すため、契約書を作成し、各自の署名・捺印をする。さらに、夫名義の銀行口座から、妻名義の銀行口座にお金を動かすなどして、きちんと契約通りにお金が動いた記録を残すようにしましょう。

なお、金銭の貸し借りにするときは、返済期間を定めるとともに、利息をのやり取りも行ってください。「あるとき払い」にしていると、その金銭は借り入れではなく贈与と見られてしまうからです。

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たとえ夫婦間であっても、金銭のやり取りがあれば贈与税に注意する必要があります。「家族同士であれば、税務署にも分からないのでは?」と思われるかもしれませんが、相続税の調査などを通じて発覚することは少なくありません。

また、住宅取得などの事実を税務署が把握すると、「お尋ね」という文書が送付され、資金をどのように用意したかの回答を求められることがあります。このときの回答次第では贈与税の申告漏れと認定される可能性があります。こうした調査は、贈与税の申告期限から数年後に行われることもあり、そのときに申告や納税に不備が見つかれば、追徴税として加算税や延滞税が課されます。

贈与税の基本的なしくみは決して難しいものではありません。まずは基礎控除110万円や配偶者控除、住宅取得資金贈与の特例といったルールを理解し、申告が必要であれば国税庁ホームページで最新情報を確認して手続きをとってください。自分だけで解決できない疑問がある場合は、税務署や税理士に相談すると良いでしょう。

(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)

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