目次

  1. 1. 「違法建築」とは? 増改築で違法状態になることも
  2. 2. 「既存不適格」との違いは?
  3. 3. なぜ違法建築が生まれるのか
    1. 3-1. 完了検査を受けていない
    2. 3-2. 増改築によって違法になる
  4. 4. 違法建築の住宅で困ることは?
    1. 4-1. そもそも違法建築を買いたい人は少ない
    2. 4-2. 買い手が住宅ローンを借りられない
    3. 4-3. 売却できても売却価格は安くなる
    4. 4-4. 違法建築物を賃貸した場合
  5. 5. 実家が違法建築かどうかの調べ方
    1. 5-1. 確認済証、検査済証があるか確認する
    2. 5-2. 増築部分を登記しているかどうかを調べる
    3. 5-3. 専門家に依頼する
  6. 6. 早期に問題を知り、解決することが大切

建物を建築する際には、建築基準法、都市計画法などの法律や自治体の条例を守らなければいけませんが、これらに違反して建物を建てることを「違法建築」と言います。
違法建築には、2通りあります。建築したときから違法建築だったという場合と、建築時には違法建築ではなかった建物に増改築をした結果、違法建築の状態になってしまったという場合です。

違法建築には、さまざまなケースがあります。
よくあるのは、建ぺい率や容積率オーバーです。
また、法律で決められた施工をしていなかったり、認定外の部材を使って施工をした場合も違法建築になります。2018年から2019年にかけて大きく報道された、大手アパート建築会社が建築したアパートに防火界壁を設けていなかった事例や、大手ハウスメーカーが国が認定していない建築部材を使って施工した事例などがこれにあたります。

さらに、接道義務を満たさない土地に建物を建ててしまった場合も違法建築になります。
接道義務については、「相続した実家が「接道義務違反」? セットバックなど解決法を詳しく図解」で解説していますのでお読みください。
その他にも、斜線制限違反、採光違反や、建築許可を受けずに建築をしたり、完成後に完了検査を受けなかった場合なども違法建築にあたります。

既存不適格とは、建築時には合法的な建物が、その後の法令の改正などにより、結果的に違法建築の状態になってしまったことを言い、違法建築とは区別されています。
既存不適格の代表例としては、昭和56年5月以前に建築確認を取得して建てられた建物があげられます。

昭和56年6月1日から新耐震基準が適用されたため、それ以前に建築された建物のうち新耐震基準を満たさないものは既存不適格となりました。現在でも住宅のうち耐震性を満たさない建物は、住宅全体の約13%、約700万戸あるとされています。(※1)
既存不適格の建物は、居住や使用をしても特に問題ありません。ただし、増改築や建替えの際には法令に適合させなければいけません。

違法建築が生まれる要因はさまざまですが、大きな要因として二つあげられます。
一つは完了検査の未実施、もう一つは増改築です。

建物を建築する際には、事前に「建築確認」の許可を得てから着工します。建築確認とは、建物の計画概要を自治体や指定確認検査機関に提出し、その内容が法的に問題ないかをチェックしてもらうことです。計画概要が建築基準に適合していれば「確認済証」が交付され、建築工事を開始することができます。
それに対して完了検査とは、建物の完成時に、その建物が建築確認申請の通りに建築されているかを自治体や指定確認検査機関が検査をすることです。完了検査の結果、問題がなければ「検査済証」が交付されます。

以前は完了検査を受ける割合が低く、建築確認申請時に提出した図面と異なる施工をしてもほとんど発覚する可能性がなかったため、違法建築の要因となっていました。
完了検査の検査率は、1998年には38%と全体の4割にも満たない状況でしたが、国の指導や指定確認検査機関への業務移管などにより上昇し、2015年には約90%になっています(※2)
完了検査を受けると工事後に第三者のチェックが入るため、建築確認の内容と異なる施工をすることができなくなり、結果的に違法建築は減少しました。
そのため、違法建築物の多くは完了検査を受けていない古い建物と言えます。

新築時には法律に適合していても、その後に増改築をすることにより違法建築になるケースがあります。
例えば建ぺい率ぎりぎりの建築面積で新築をした場合、その後に増築をすると建ぺい率オーバーになってしまいます。増築面積が10㎡未満の場合は建築確認が不要ということもあり、多くの場合、増築する人も増築を気軽に考えていて、違法建築になるという認識がありません。

違法建築の住宅は、住むことも使うこともできますが、特に賃貸や売却をする際には問題が生じます。

当然のことながら、中古住宅の購入を検討している人は、一般的には好き好んで違法建築の住宅は購入しません。売却の仲介を行う不動産会社は、違法建築であることを知っている場合には告知義務があります。当然買主にも違法建築であることが分かるため、売却ができなくなる可能性もあります。なお、売主側が違法建築であることを不動産会社に伝えていなかった場合には、売却できたとしても、その後損害賠償や契約解除の請求をされる可能性があるため、必ず伝えておく必要があります。

違法建築に対して、ほとんどの銀行が住宅ローンの融資を認めていません。買主が購入にあたり住宅ローン利用を条件としている場合、違法建築では融資を受けられないので売買もできません。

買主が住宅ローンを利用せずに現金で購入する場合は、売却できる可能性もあります。ただし、多くの場合違法建築であることによって買いたたかれるので、周辺相場よりもかなり安くなってしまうでしょう。
最近は、不動産投資として違法建築物件を安く購入し、戸建貸家として賃貸する事例もありますが、この場合、買主は周辺相場の価格ではなく、家賃から価格を割り出す「収益還元法」に基づいて買値を決めるため、やはり相場の価格よりも割安になります。

違法建築の建物でも賃貸すること自体は可能です。
ただし、火災や災害などトラブルがあった場合には、建物の所有者としての責任が問われます。また、用途変更もできないため、行政から違反を問われた場合にも責任は貸主側にあります。
このようなリスクを負っても賃貸にするかどうかについて、慎重に判断する必要があります。

実家を相続した人は、まずは建物が違法建築でないかどうかを確認することが重要です。
調べる方法としては、次のような方法があります。

確認済証があることは当然ですが、検査済証があるかどうかも重要です。検査済証があれば、少なくても建物が新築時には建築確認通りの工事をしていたという証明になります。

新築時には合法的な建物であっても増築することにより違法建築の状態になる場合があります。増築をしたときに確認済証を取得し、増築部分の登記がされていれば問題ありません。

自ら調べると言っても、違法建築は複雑でさまざまなケースがあるため、建築士や不動産会社などに依頼して調べてもらうのも良いでしょう。専門家に依頼することにより、違法建築の有無とあわせて、万が一違法建築だった場合の解決方法の提案も期待できます。

相続した不動産に共通することですが、問題がある場合その解決にあたり多大な時間・労力・お金がかかります。そのため、相続前から家族で問題を共有し、解決に向けて早めにスタートを切ることが重要です。なお、違法建築の解決に当たっては、専門的な知識や判断が必要になるため、不動産に詳しいFPや不動産会社、土地家屋調査士、建築士などの専門家に相談しながら解決を図ることをおすすめします。

※1 国土交通省HP「住宅・建築物の耐震化について」
https://www.mlit.go.jp/common/001364968.pdf
※2 国土交通省建築基準制度部会2012年10月25日「効率的かつ実効性ある確認検査制度等のあり方の検討」
https://www.mlit.go.jp/common/000228036.pdf

(記事は2020年10月1日時点の情報に基づいています)

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