不動産の遺贈寄付をスムーズに ニーズに合わせたサービスも
相続財産の中で大きな部分を占めているのは、土地や家屋など不動産です。空き家問題に象徴されるように、不動産を相続・管理する後継者がいないなど、これからは不動産を遺贈寄付したいというケースは増えていくと考えられます。前回みた「みなし譲渡課税」のような不動産ならではの難しさもありますが、どうすればスムーズに遺贈寄付できるでしょう。
相続財産の中で大きな部分を占めているのは、土地や家屋など不動産です。空き家問題に象徴されるように、不動産を相続・管理する後継者がいないなど、これからは不動産を遺贈寄付したいというケースは増えていくと考えられます。前回みた「みなし譲渡課税」のような不動産ならではの難しさもありますが、どうすればスムーズに遺贈寄付できるでしょう。
実は、不動産をそのまま遺贈寄付として受けている団体は多くはありません。理由はいくつかあります。
まず、現金と比べて名義変更の手続きなどで手間がかかります。みなし譲渡課税もあります。また、寄付してもらった不動産を団体がそのまま利用できるケースは少ないでしょう。となれば売却する必要がありますが、そもそも売れるかどうかわからなければ、団体にとって「負動産」になるかもしれません。建物だと管理が大変ですし、火災のリスクや近隣とのトラブルもあるかもしれません。自宅だった建物の場合、残された家財をどうするかということも考えなければなりません。要するに、不動産はいろいろ面倒なのです。だから、ある程度の規模の団体や、ノウハウのある団体などでないと不動産は受け入れが難しい現実があります。
「それじゃあ、不動産は遺贈寄付できないの?」といわれれば、それは違います。
まずは、遺贈寄付をしたいと考えている対象団体に事前に相談してみましょう。その団体が不動産を受け入れているかどうかを確かめます。たとえ実績はなくても、条件によっては受け入れてくれる場合もありますし、一緒になって良い方法を考えてくれるかもしれません。ですから、まずは相談することです。
あとは、思い入れのある土地や建物で、どうしても不動産の形で活かしてほしいという希望があれば別ですが(どうしても不動産の形のままでと希望する場合、その不動産を活かせる活動をしている団体を探すことが大前提です)、換金して寄付する方法があります。
生きているうちに自身で売却して寄付という方法はもちろんありますが、自宅だとなかなか難しい選択です。そこで、自身の死後に遺言執行者に不動産を売却してもらい、その換価代金の一部または全部を遺贈するように「換価型遺言」を作成する方法があります。ただし、信託銀行などが遺言執行者の場合、不動産が売れないリスクがあるため、この方法に対応しないことがありますので注意が必要です。
換金を前提とした場合、売れるか売れないかが大きなポイントなのです。そこで、遺贈寄付を広めようと弁護士や税理士、NPO法人などが2016年に立ち上げた「全国レガシーギフト協会」は20年7月、会員らを対象に「不動産査定取次サービス」を始めました。
「不動産を寄付したい」という相談を受けたNPO法人などが、その土地の情報など必要事項を協会に送ると、協会は提携している不動産会社(現在は三井不動産リアルティ株式会社のみ)に不動産情報を提供します。不動産会社は、その不動産を仲介物件として将来扱えるかどうかを判断するほか、ケースによっては査定額を協会に報告し、協会はNPO法人などにその結果を伝えます(本人の同意があれば協会ではなく直接、不動産所有者に報告する場合も)。このサービスの利用は無料。ただし、市街化調整区域や係争中の物件、原野などは対象外です。
「売れるか売れないか」の不安がこのサービスによって解消されれば、より多くのNPO法人などでも不動産を受け入れられるようになると期待されます。
次回は自筆証書遺言の法務局保管制度を実際に使ってみたルポをお届けします。
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(記事は2020年9月1日現在の情報に基づきます)