故郷への思いを形に 自治体への遺贈寄付も広がる
自分の育った故郷に恩返ししたい―。こう思う方も多いかもしれません。そんな時にも、遺贈寄付は役立ちます。自分の死後、遺産を自治体に寄付する仕組みを紹介します。
自分の育った故郷に恩返ししたい―。こう思う方も多いかもしれません。そんな時にも、遺贈寄付は役立ちます。自分の死後、遺産を自治体に寄付する仕組みを紹介します。
遺贈寄付先を考えた時、故郷や思い出の地である自治体を思い浮かべる方も多いでしょう。以前、遺贈しようと思っていた団体の実体が無くなってしまう懸念のことを記しましたが、自治体はその心配がほぼありません。信頼できる対象です。信託を活用して、故郷に簡単に遺贈寄付ができる仕組みや、自治体が提携した銀行が手続きのお手伝いをするなど、いろいろなサポートも生まれています。
朝日新聞の記事データベースで調べると、地元に遺贈寄付した事例を探すと、様々な記事が見つかります。
「兵庫県西宮市消防局は4年前、亡くなった70代男性から寄付された1億円で救助工作車を購入。男性は生前、救急搬送されて助かった経験があったという」(2016年9月30日)
「放送作家・小説家、岸宏子さん(享年92)が残した自宅や著作権などが、伊賀市と市上野図書館に遺贈」(15年3月21日)――。
記事になるのは金額が多い場合や著名人の場合が目立ちます。でも、もちろん金額の多寡にかかわらず、地元に遺贈寄付するケースは増えているとみられます。それに合わせて、より遺贈寄付をしやすくするための動きが広がっているのです。
奈良県生駒市が2019年4月から導入したのは、その名も「ふるさとレガシーギフト」。オリックス銀行と遺贈寄附推進機構(株)が協力して開発した、自治体に遺贈寄付したい人のための仕組みです。
利用者は生前にオリックス銀行にお金を預け、亡くなった際にそれが寄付されます。100万円単位で2000万円まで預けられます。前回紹介した「遺言代用信託」の仕組みを使うため、遺言は不要。相続税や手数料がかからず、生活資金が必要になった場合などには中途解約もできます。
教育や福祉、産業振興など6つの分野から使い道を選びますが、生駒市では市長が利用者に面談して「思い」を聞いたうえで使い道を決めています。19年10月には第1号の利用者が100万円を信託して地元メディアで大きく取り上げられました。自治体が年間約5万円の利用登録料を払うだけで利用できます。ほかの自治体も導入を検討しています。
岐阜県では、地元に根付く地方銀行が同様の仕組みを導入しています。十六銀行が三井住友信託銀行と開発した「じゅうろく遺言代用信託<想族あんしんたく>」です。利用者は100万円以上200万円までの額を生前に預けて、亡くなった際に自治体に寄付されます。19年10月に岐阜県、岐阜市、高山市の3自治体と始まった取り組みは、いまや県内全42市町村のうち40市町村で導入されています。
また、千葉市は18年12月、千葉銀行と遺贈に関する協定を結びました。市は、市に遺贈を希望する人がいれば千葉銀行を紹介します。銀行は遺言書の作成などについて相談にのりながら手続きを進めます。初回の相談は無料です。同じように、三重県桑名市は県内外の三つの銀行と、遺贈を進めていく協定を19年12月に結びました。
いま、こうした遺贈寄付を積極的に受け入れるための態勢づくりが各地の自治体で進んでいます。というのも、相続税は国税で、地元の人が亡くなっても地方公共団体には遺贈寄付以外で相続財産が入ってくることはないという事情があるからです。自身の財産を地元に活かしたい、故郷に恩返ししたいと考えたら、一度自治体に相談してみてはいかがでしょう? いろいろな支援が得られるかもしれません。
次回は、環境保護に関心がある方のための遺贈寄付の仕組みを紹介します。
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(記事は2020年6月1日時点の情報に基づいています)