目次

  1. 1. 贈与税の申告が必要なのはどんな人?
  2. 2. 贈与税の申告が必要な非課税、いらない非課税
  3. 3. 「贈与財産の価格」は「贈与時の時価」
  4. 4. 贈与税申告の手続きの流れ
    1. 4-1. 贈与時の財産の時価を計算した後、贈与税額を算出する
    2. 4-2. 贈与税の申告書に記入する
    3. 4-3. 資料を添付する
  5. 5. 贈与税申告書の提出先・提出方法・入手方法
  6. 6. 贈与税申告・納税の期限
  7. 7. 贈与税の納税方法

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贈与税の申告が必要なのは次のいずれかに該当する人です。

1. 1年間で受け取った財産の金額が110万円を超える人
2. 相続時精算課税制度の適用を受ける親や祖父母から財産を受け取った人

実際には、もらった財産によっては申告不要なケースや、気づいていないけれど実は贈与税の申告が必要なケースもあります。

贈与税の非課税措置を活用して贈与を受ける人が増えました。中には「非課税だから贈与税の申告はいらない」と思っている人もいるようです。実際には申告が必要なものとそうでないものとに分かれます。

【申告が必要な贈与税の非課税措置】

● 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置
● 住宅や住宅購入資金を生前贈与したときの配偶者控除

【申告がいらない贈与税の非課税措置】

● 教育資金の一括贈与の贈与税の非課税措置
● 結婚・子育て資金の一括贈与の贈与税の非課税措置

「もらった財産がいくらなのか」は、110万円を超えるかどうかの判定だけでなく、贈与税の計算においても重要です。そして、贈与する財産は金額が明確にわかる預貯金だけではなく、不動産や美術品のように金額が分かりにくいものもあります。

「購入した時の金額=贈与財産の金額」と思う人がいますが、税法は違います。贈与税を規定している相続税法は、贈与財産の金額を次のように考えています。

● 贈与税の課税対象となる贈与財産の金額は、贈与時の時価とする
● 時価とは、不特定多数の人の間で自由に取引したときに成立しうる金額である

この時価の考え方は少し特殊です。一般的な時価ではなく、相続税法の財産評価通達で決められた評価方法によって計算した金額をいいます。そして評価方法は財産ごとに異なります。

例えば、上場株式の時価は「証券取引所での実際の売買価額を元に評価した金額」とされています。しかし、建物用地(宅地)の時価は不動産の実勢価格ではありません。「道路に面している土地ならば路線価方式(路線価×宅地面積)で計算した金額、そうでない土地は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)で計算した金額」が時価となります。

この他の財産についても、財産評価通達に定められた方法で評価した金額を時価とすることになっています。詳しくは以下のURLをご覧ください。

【参考】
「相続財産や贈与財産の評価(国税庁ウェブサイト)」

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実際の贈与税の申告の流れについて見ていきましょう。贈与税の申告書は次の順で作成していきます。

1.贈与時の財産の時価を計算した後、贈与税額を算出する
2.贈与税の申告書に記入する
3.資料を添付する

それぞれの手順内容は次のようになります。

最初に受け取った財産の贈与時の時価を計算します。その後、相続時精算課税制度の適用を受けているか否かに分け、贈与税額を計算します。なお、この計算は、いきなり申告書に書き込むのではなく、「贈与税の申告のしかた」というパンフレットを参考にしつつ、「贈与税の税額の計算明細書」で下書きします。

(1)贈与税額の計算(暦年課税制度)

暦年課税制度での贈与税額は次の順で計算します。

① 課税価格を算出する
 贈与税の課税価格は「その年に受けた贈与金額-110万円」で計算します。

② 贈与税額を計算する
 贈与税額は「課税価格×税率-控除額」で計算します。

なお、税率や控除額は財産をあげた人ともらった人の関係によって変わります。詳しくは以下のリンクをご参照下さい。

【関連】贈与税の税率と計算法が一目で分かる 相続税対策の基本を解説

(2)贈与税額の計算(相続時精算課税制度)

相続時精算課税制度の適用を受けている親子間、あるいは祖父母-孫間での贈与は、累計で2500万円になるまでは贈与税がかかりません。しかし、贈与税の申告は必要です。また、2500万円を超えた部分については「超えた部分の財産の時価×20%」で贈与税を計算します。

1.で下書きをした金額を贈与税の申告書に清書します。申告書で代表的なものは次の3つです。

(1)第一表 贈与税の申告書

第一表は「贈与税の申告書の顔」です。暦年課税制度の贈与税の計算欄と各種控除額や猶予額を記入し、最終的な納付税額を算出する欄とで構成されています。単に贈与税を申告するだけなら、この第一表だけで申告します。

なお、第一表には次の項目を記入します。

● 納税者の氏名・住所・個人番号・生年月日・職業
● 贈与者の住所・氏名・生年月日・受贈者との続柄
● 贈与財産の明細と課税価格、贈与を受けた年月日

(2)第一表の二 贈与税の申告書(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)

住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の適用を受けるとき、第一表と共に税務署に提出します。この申告書には、以下の内容を記載します。

● 受贈者の氏名
● 贈与者の住所・氏名・受贈者との続柄
● 取得した財産の所在地(通常受贈者の住所)・取得した年月日と金額

この他、過去に同じ制度の適用を受けていた非課税額なども記入します。

(3)第二表 贈与税の申告書(相続時精算課税の計算明細書)

相続時精算課税制度の適用を受けた贈与について記載する申告書です。第一表と共に提出します。この申告書には、以下の内容を記載します。

● 受贈者の氏名
● 贈与者の住所・氏名・受贈者との続柄・生年月日
● 贈与財産の明細と贈与を受けた年月日
● 過去の年分の贈与についての贈与税の申告状況

申告内容に応じて資料を申告書に添付します。資料添付が必要になるケースと必要書類は次の通りです。

(1) 親や祖父母から410万円を超える財産を贈与された

● 受贈者の戸籍の全部事項証明書または一部事項証明書

(2) 相続時精算課税制度の適用を初めて受ける

● 贈与者・受贈者の戸籍の全部事項証明書または一部事項証明書(贈与日の後に取得)
● 贈与者・受贈者の戸籍の附票の写し(贈与日の後に取得)
● 贈与者の住民票(贈与日の後に取得)
● 相続時精算課税選択届出書

(3) 親や祖父母から住宅取得等資金を贈与された

● 受贈者の戸籍の全部事項証明書または一部事項証明書
● 給与所得の源泉徴収票など所得を証明するもの
● 住宅購入に関する証明書類(工事の請負契約書や売買契約書の写し、登記事項証明書)
● 住宅に期日や入居予定日を記載した書類

(4) 結婚している期間が20年を超える配偶者から住宅を贈与された

● 受贈者の戸籍の全部事項証明書または一部事項証明書(贈与日から10日以後に取得)
● 受贈者の戸籍の附票の写し(贈与日から10日以後に取得)
● 自宅の登記事項証明書(贈与の登記後に取得)

(5) 土地や株式のように評価明細書が必要な財産を贈与された

● 土地や株式の評価に関する書類

この他、申告書を郵送で提出するならば、申告する人の「マイナンバーカードの写し(表裏両面)」または「マイナンバーの通知カードの写し+身分証明書(運転免許証など)の写し」を添付しなくてはなりません。

申告書の提出先は財産をもらった人の住所を管轄する税務署です。提出は直接税務署に足を運ぶ他、郵送やe-Taxでも提出できます。なお、郵送で提出するとき、切手を貼付した返信用封筒を同封すれば後日収受印の押された申告書控が返送されます。

申告書や書き方についてのあらましは、税務署で入手できる他、国税庁のウェブサイトからPDFをダウンロードして使うこともできます。

自分の住所を管轄する税務署や申告書PDFは以下のリンクをご参照下さい。

【参考】

「令和元年分贈与税の申告のしかた(国税庁ウェブサイト)」
「税務署の所在地などを知りたい方(国税庁ウェブサイト)」

申告・納税の期限は贈与があった年の翌年3月15日(この日が土日祝日になったときはその次の平日)です。ただし、令和元年分についてはコロナウイルスの影響から、令和2年4月16日に申告期限が延長されただけでなく、17日以降でも受け付けてもらえます。ただし、期限内申告として扱ってもらうには、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と一言書かなくてはなりません。

納税は提出先の税務署や金融機関で現金で納付する他、電子納税(インターネットバンキングや銀行ATMなど)やクレジットカードでの決済が可能です。また、納税額が30万円以下ならコンビニ納付もできます。ただし、QRコード付きの納付書を国税庁のウェブサイト上の専用ページで作成しなくてはなりません。

【参考】
「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」(国税庁ウェブサイト)

複雑な相続税の申告書に比べ、贈与税の申告書は添付する書類を含め枚数は少なめです。現預金など金額が分かりやすいものは財産をもらった方が単独で作成できます。ただ、資産によっては、一般の方には評価が難しいものもあります。不動産や美術品の贈与などがある場合です。評価の手続きに自信がない方は、税理士に相談するとよいでしょう。

(記事は2020年5月1日時点の情報に基づいています)

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