贈与税は相続税に影響する! 贈与税の暦年課税と相続時の贈与税額控除
「贈与税の暦年課税」という言葉をご存じですか。「暦年」とは、暦の上での「1年」を意味します。つまり、贈与税の暦年課税とは、1月から12月までにもらい受けたお金や物品の金額に対する贈与税です。今回は贈与税の暦年課税と、相続時の贈与税額控除を解説します。
「贈与税の暦年課税」という言葉をご存じですか。「暦年」とは、暦の上での「1年」を意味します。つまり、贈与税の暦年課税とは、1月から12月までにもらい受けたお金や物品の金額に対する贈与税です。今回は贈与税の暦年課税と、相続時の贈与税額控除を解説します。
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暦年課税と呼ばれる贈与税には、110万円の基礎控除額があります。そのため、もらい受けた金銭や物品が1年間で110万円までであれば、税金は課されません。
贈与税の計算式は、以下のようになります。
贈与税=(もらい受けた財産の金額-110万円)×税率
普段、私たちが贈与税を意識することなく過ごしているのは、110万円もの金品をもらい受けるようなことがほとんどないからです。例えば、上司や同僚に食事をおごってもらった、彼氏や彼女から誕生日プレゼントをもらったという場合でも、その多くは110万円を超えることがありません。
ただし、誕生日やクリスマスなど、高級時計や高価なアクセサリーといったプレゼントをもらった場合には、贈与税が発生する可能性があるので注意が必要です。
また、親から子どもへ500万円を譲る場合でも、一度に渡してしまうと贈与税がかかります。この場合も、毎年100万円ずつ5年間にわたって譲り渡せば、贈与税は課されません。
前述した贈与財産や支払った贈与税は、相続時の課税に関係してくる場合があります。
すなわち、相続を開始する前の3年以内に譲り受けた贈与財産は、相続時に遺産となる財産として扱わなければなりません。これを生前贈与加算と言います。
この制度の目的は、相続時に多額の相続税が発生すると見込まれる場合、生前に贈与することで不当に相続税を免れようとすることを防止するものです。
一方で、生前贈与を受けて、すでに贈与税を支払っていた場合には、二重課税になってしまいます。そういった事態を防ぐため、贈与時に支払った贈与税額は、その人の相続税から控除することができます。
それでは、相続税から控除できる贈与税額の具体例を見ていきましょう。例えば、父親が一人っ子に1年目に200万円、2年目に200万円をそれぞれ贈与し、子どもは贈与税として各年9万円 ずつ、合計18万円を支払いました。
そして、2年目の贈与があった翌年、父親が亡くなり相続が発生し、8,000万円の財産を相続することになりました。
子どもへの贈与は、3年以内のため贈与額合計の400万円が相続財産に加算され、結果的に相続財産は8,400万円となります。
法定相続人は、妻と子どもの2人です。基礎控除額の計算式は、
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。
これに当てはめると3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円となり、課税遺産総額は8,400万円-4,200万円=4,200万円となります。
法定相続分で分けると、子どもの相続税額は265万円発生することとなります。
ここから、すでに贈与時に支払った18万円を控除。結果として265万円-18万円=247万円が相続税額になります。
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相続の相談が出来る税理士を探す生前贈与の課税制度には、この暦年課税の贈与税控除とともに、相続時精算課税制度という制度もあります。
ただし、相続時精算課税を選択すると、暦年課税の贈与税控除の適用ができないため、どちらを選択するのが有利なのか、生前、個別に判断する必要があります。
贈与してもらったお金や物品、そして支払った贈与税については、相続が発生したときに関係してくるケースもあるので、しっかり把握することが必要です。将来、相続について不安がある方は、まずは専門家である税理士に相談してみてはいかがでしょう。 二重課税防止の観点から設けられている暦年課税と相続時の贈与税額控除は、状況に応じて、どちらを使うか、生前の対策が大切です。
(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)
【訂正】2021年3月22日に記事の内容を一部訂正しました。
計算式の前提に誤りがありました。子どもへの贈与額合計を200万円としていましたが、正しくは計400万円でした。これに伴い、相続税額も232万円から247万円に訂正しました。