目次

  1. 1. 増える高齢単身世帯、増える空き家
  2. 2. 売却の可能性なければ、「負債」になる空き家
  3. 3. 地方の空き家に生まれる新しい使い道

使う予定のない不動産を相続してしまった、又は相続する予定がある場合、どうしたらよいのでしょうか。
答えは一つ。ただちに売却することです。

地方は人口減少の足音がリアルに聞こえています。
例として、青森県八戸市の人口は平成18年4月には約249,559人だったものの、令和元年8月には228,348人となりました。
一方、同時期で比較すると世帯数は100,640から108,904に増加しています。

この期間に多くの大学や企業が創設され、単身の若者が大きく増えたということはありません。
従って、高齢一人世帯が増加していることが推察できます。
高齢単身者が死亡した場合、居住家屋は多くが空き家になるでしょう。
軒数が増加することは明らかです。

先祖や親から引き継いだ資産を売ることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
しかし、「資産」とはなにか、立ち止まって少し考えて欲しいのです。

国際会計基準審議会の定める「財務報告に関する概念フレームワーク」によると、資産は「企業が過去の事象の結果として支配している現在の経済的資源」と定義されます。「経済的資源」とは、簡単にいえばキャッシュを生み出す能力のことです。
また、負債は「企業が過去の事象の結果として経済的資源を移転する現在の義務」と定義されます。

この定義に空き家を当てはめてみましょう。
まったく利用しない場合、空き家は何の利益も産みません。
固定資産税、修繕費、草刈りなどの保全費用はかかるので、資金が流出します。
売却可能性があるうちは、空き家は資産と言えますが、会計上の取り扱いは別として、売却可能性がなくなった空き家は、事実上ほぼ負債に該当すると言って差し支えないでしょう。
待っている余裕はありません。

「“負”動産」となってしまったら、買い手を見つけることは容易ではありません。
反対に管理費用は大きくなり、ランニングコストは増加していきます。
現行法では、不動産の所有権を放棄することはできません。
処分がかなうまで、ずるずると支払を続けることになりかねません。

売りに出してもどうせ買い手はつかない、そう考える人がいるかもしれません。
ですが、そんな心配は無用です。

不動産取引の仲介手数料は売却時に発生します。
買い手がつくまでは費用がかからないので、市場に出すデメリットはありません。

また、意外なニーズもあります。
私は公認会計士として創業支援を多く手掛けていますが、事務所賃借費用は大きな支出となり、事業の成否を分けるポイントの一つになります。
たとえば、訪問介護、訪問看護事業は開業にあたり、事務所と複数車両の駐車スペースが必要になります。庭が広い郊外の一軒家がぴったりです。条件に合えば、購入を希望する事業者はいるでしょう。
売却に至らなくても、NPOや任意団体などが安価に使用できる事務所スペースを求めていることもあります。条件の悪い物件でも、無償譲渡ならば引き取り手が見つかる可能性はあります。

空き物件の利用に成功したケースもあります。

カフェ「南部どき」は、空いていた青果倉庫が生まれ変わって誕生した=青森県南部町、石動龍さん提供
カフェ「南部どき」は、空いていた青果倉庫が生まれ変わって誕生した=青森県南部町、石動龍さん提供

青森県三戸郡南部町にあるコーヒーと燻製がメインのカフェ「南部どき」は、長らく空いていた青果倉庫を改装した物件です。人通りが少なくなった青い森鉄道三戸駅前で、近隣住民が集うスペースになっています。八戸市内には昨年、空き家を改装したストレッチ専門店「With Stretch」もオープンしました。

使われていなかった頃の青果倉庫=青森県南部町、石動龍さん提供
使われていなかった頃の青果倉庫=青森県南部町、石動龍さん提供

両物件の改装を手掛けた株式会社ノザワの工藤大地さん(40)は、「基礎や柱に問題が生じていなければ、多額の工事費用をかけなくても、利用可能なレベルに建物を再生できます」といいます。八戸市内では中古住宅への需要が多く、程度がよく価格が1,000万円を超えない物件については、比較的早期に買い手がつくそうです。

カフェ「南部どき」の店内。使われてなかった倉庫が町の人たちが集う場所になった=青森県南部町、石動龍さん提供
カフェ「南部どき」の店内。町の人たちが集う場所になった=石動龍さん提供

では、売却を決めた場合は具体的にどうしたらよいのでしょうか。
次回は、売却の具体的な方法を解説します。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)

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