目次

  1. 1. 遺言で財産を贈与
  2. 2. 意思を反映できるのが最大のメリット
  3. 3. 遺留分に注意

遺贈寄付という言葉を見聞きしたことはありませんか? 最近、メディアで話題になることが増えました。公益法人やNPO、学校など家族以外の第三者に遺産の一部または全部を寄付することです。

「恩返しのため」「生きた証を残したい」など、自分の「思い」をお金に託し、社会、次世代のために活かす方法です。額の多い少ないは関係ありません。誰にでもできる「人生最後の社会貢献」ともいわれます。寄付された側はもちろんですが、寄付する人にも実はいろいろな「よい」ことがあります。この連載「思いを託す遺贈寄付」では、遺贈寄付に関する知識や、そうした「よい」ことなどを紹介していきます。

第1回は「遺贈」についてです。「え、遺贈寄付と遺贈は違うの?」といきなり混乱させるようですみませんが、ここだけ我慢してください。

遺贈寄付には大きく分けて3つの方法があるのです。「遺贈」「相続財産からの寄付」「信託の活用」です。あとの2つはおいおい紹介します。まずは遺贈寄付の最もオーソドックスな方法である遺贈の説明です。

遺贈とは、あらかじめ決めた相手に財産の一部または全部を遺言によって贈与することです。民法では相続人の範囲が定められています。これを法定相続人といいます。ざっくりいえば、配偶者や子、孫、きょうだいなど親族関係にある人たちとお考え下さい。

この法定相続人の範囲に縛られることなく、公益法人や地方公共団体など様々な法人・団体や、友人など、自分が財産をあげたいと思う相手にも、文字通り「遺産を贈る」ことができるのが遺贈なのです。ここで「相手にも」と書いたのは訳があります。相続人に対しても遺贈することができるからです。少々ややこしくなるので、この連載では便宜上、相続人以外の第三者に遺産を贈ることを遺贈としておきます。

遺言を残さずに亡くなった人の財産は通常、法定相続人が引き継ぎます。これが、相続です。言葉遊びのように感じるかもしれませんが、たとえ遺言であっても、法定相続人以外には「相続」させることはできません。それを可能にするのが「遺贈」です。相続はあくまでも対象となる人の範囲が決まっているのに対し、遺贈は幅広いのです。

遺贈の最大のメリットはもうお分かりでしょう。遺言を使うことで、遺産の行方に自分の意思を強く反映することができるのです。「自分が生前に関わってきたボランティア団体に寄付したい」「お世話になった福祉団体に恩返ししたい」「自分の名前を冠した教育基金をつくって若い世代を育ててほしい」などの「思い」を、様々な相手に託すことで活かせる。それが遺贈です。

注意すべき点もあります。遺贈にも相続税がかかります。遺贈の場合、受けた相手が支払うべき相続税額が加算されることがあります。とはいえ、法人へ遺贈した財産には原則、相続税はかかりませんから、公益法人やNPOに遺贈する場合は問題ありません。何より注意しなければいけないのが、相続人の「遺留分」の権利を侵さないようにすることです。

遺言がなく、相続人の間で遺産をどう分割するか合意できなかったときの遺産の取り分割合を民法が定めています。「法定相続分」といいます。兄弟姉妹以外の法定相続人は、この法定相続分の2分の1(親や祖父母のみの場合だと3分の1)を最低限受け取る権利があります。これが遺留分です。

遺贈によって、遺留分に足りない額しかもらえない相続人がいた場合、この相続人は「遺留分に足りない分をください」と請求できます。ですから、遺贈したつもりの額が、あとから相続人によって減らされてしまう可能性があります。遺贈を受けた側もゴタゴタに巻き込まれれば、いい気分はしないでしょう。だから、最初から遺留分に配慮した遺贈が望ましいのです。

次回は遺贈寄付の現状についてです。

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(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)