13.信託のデメリットは? 専門職への依頼コストや手間が必要
高齢化や家族の多様化に対応するため、「家族信託」の活用を訴える司法書士の宮田浩志さん。信託のデメリットについて解説します。
高齢化や家族の多様化に対応するため、「家族信託」の活用を訴える司法書士の宮田浩志さん。信託のデメリットについて解説します。
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次に、家族信託の設計・実施に際して気をつけなければならないポイントを説明します。
保有資産を信託財産に入れた場合、「所有権」という財産から「信託受益権」という財産に変わりますが(これを「権利転換機能」という)、相続税や贈与税の評価額に影響を及ぼさないため、その受益権の評価額は所有権の評価額と同じです。また、不動産を信託財産に入れても通常受けられる税務的な特例・軽減措置(小規模宅地の評価減、不動産の買換特例など)を受けることができるため、信託を設定することに税務リスクや税務的デメリットはありません。
「信託」はそれ自体が「目的」ではなく、あくまでかなえたい“想い”(=信託の目的)を実現するための「手段」と考えなければならず、信託を組成する行為自体に、税務的なメリットもデメリットもないという理解は大切です。
保有するすべての財産を、信託財産として1本の契約で託す場合は問題ありませんが、所有権の財産と信託財産に分ける場合や、信託契約を複数に分ける場合には、損益通算禁止の問題があるので注意が必要です。
信託の組成(信託契約書の設計・作成等)を、専門家の関与なくして行うのは困難であり、やるべきではありません。したがって、専門職に依頼する手間やコストがかかることは、必要経費として想定しておかなければなりません。
次回の記事では、親が委託者で子が受託者となった場合を例にあげながら家族信託の機能について解説します。
この記事は、「相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本」(近代セールス社)から転載しました。