1. 住んでいる家の相続は法律のルールに基づいて決まる
住んでいる家の相続は法律のルールに基づいて決まることを示した図解。遺言書の内容が優先される、相続人の合意で割合を決められるなどのルールがある
自分や他の兄弟姉妹が住んでいる家の相続は、「被相続人(故人)と同居していた」「居住期間が長かった」といった事実があったとしても、原則として法律上の規定に従って公平に判断されます。
法律上の規定には、「遺言書の内容に従う」「遺産分割協議で相続人全員が話し合って決める」「民法上の法定相続分の通りにする」の3通りがあります。
1-1. 遺言書がある場合はその内容が優先される
被相続人が遺言書を残している場合、遺産分割協議や法定相続分よりも、遺言書の内容が原則として優先されます。
例えば、遺言書に「日々の介護や生活費の面で支えてくれた三男に、実家を単独で相続させる」と記載があれば、長男・次男と共有することなく、三男が単独名義で実家を相続します。
「相続は法律上の規定に従うのが原則」と先ほど解説しましたが、遺言書は被相続人の意思を反映して財産の承継方法を指定できる制度です。そのため、実家で親と同居している兄弟姉妹であれば、普段からのコミュニケーションや良好な関係性が影響し、遺言書の内容が有利になるケースが実務上見受けられます。
しかし、いくら遺言書の効力が強いとはいえ、「三男にすべての財産を相続させる」といった極端な内容のままにしておくと、三男以外の相続人があまりにも不利な状況に置かれてしまうでしょう。
そのため、民法では「相続人が財産を最低限受け取れる権利」として、「遺留分」が保障されています。もし遺留分を下回る内容の遺言があった場合、「遺留分侵害額請求」によって侵害された分に相当する金銭を請求できます。
なお、実際の相続で遺言書が作成されているケースは、実務上それほど多くありません。一般的には、次で解説する遺産分割協議によって相続割合が決定されます。
1-2. 遺産分割協議で相続人全員が合意すれば割合を自由に決められる
遺産分割協議とは、遺産を「誰に・どのくらい分けるか」について、相続人全員で話し合う手続きです。この話し合いで相続人全員が合意し、遺産分割協議書に署名・押印すれば、相続する財産の種類や割合を自由に決めることが可能です。
仮に「三男がすべての財産を相続する」といった極端な割合であっても、相続人全員が遺産分割協議に合意している場合、その内容は当事者間の合意として法的に有効に成立します。
そして前項では遺言書の内容が最優先されると解説しましたが、相続人全員が「遺言書と異なる割合にする」と合意すれば、実務上、遺産分割協議で相続分を定めることもできます(遺言で分割が禁止されている場合などを除く)。
裏を返せば、全員が納得しなければ成立しないのがデメリットです。例えば4人の兄弟姉妹で、3人が「実家を長女の単独名義にする」と合意に達していても、1人が反対する限り成立しません。
遺産分割協議を円満に成立させるには、相続人同士の公平性を保つことも重要です。「実家を長女の単独名義にする代わりに、預貯金を他の3人へ多めに分配する」「親と同居して介護してくれた分だけ、取り分を増やす」といった、根拠のある配慮を意識してください。
トラブルを避けつつ公平に遺産分割を進める方法として、後述する「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つが挙げられます。
1-3. 法定相続だと相続人全員の共有名義になる
遺産分割協議で話し合いがまとまらなかったり、そもそも話し合いを行わなかったりする場合は、「法定相続分」に従って相続が進みます。
法定相続分とは、民法に定められた遺産の取り分の割合です。相続人となるのは、「配偶者 + 相続順位が一番上の人」の組み合わせです。
| 相続順位 |
被相続人との関係性 |
相続割合 |
| 第1順位 |
子ども(養子縁組含む)、 代襲相続した孫などの直系卑属 |
配偶者:2分の1 子ども:2分の1 |
| 第2順位 |
親、祖父母、曽祖父母などの直系尊属 |
配偶者:3分の2 直系尊属:3分の1 |
| 第3順位 |
兄弟姉妹、甥姪 |
配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1 |
上の相続順位の人が全員亡くなっていたり、相続放棄をして相続権を失っていたりする場合は、次の順位の人が相続権を得ます。
同順位に複数人いる場合は、さらに人数で等分するのが基本です。例えば、相続人が配偶者 + 子ども2人の場合、相続割合は「配偶者が2分の1」「子どもが4分の1ずつ」になります。
一見、相続人同士の話し合いが必要なく、法律通りに相続できて楽に見えます。しかし、住んでいる家の相続で兄弟姉妹が関わる場合は、法定相続分に従った相続は避けたほうが無難でしょう。
なぜなら、法定相続分に従うと、不動産を相続人全員で所有する「共有名義」になるためです。法定相続分に従う場合は、次章でも解説する共有名義のリスクを踏まえた上で、「将来的には誰の単独名義にするのか」といった出口戦略までしっかり話し合っておくことを推奨します。
2. 住んでいる家を兄弟姉妹で相続する際によくあるトラブル
住んでいる家を兄弟姉妹で相続する際によくあるトラブルを示した図解。さまざまなケースでトラブルは起こり得るため注意が必要
自分または兄弟姉妹が住んでいる家の相続が発生した場合、居住実態や被相続人との関係性などが引き金となって、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。
2-1. 共有名義で相続して活用・処分方法や管理負担割合などで揉める
前章でも少し触れましたが、住んでいる家を他の兄弟姉妹と共有名義で相続すると、不動産の活用・処分や管理負担割合について、兄弟姉妹で争いが生じるリスクがあります。
【売却やリフォームを行う際には共有者の同意が必要になる】
共有名義不動産のトラブルとしてよく挙げられるのは、売却やリフォームなどの行為に対して、他の共有者の同意が得られず争いになるケースです。
法律上、共有名義不動産全体の売却・増改築・取り壊しなどの「変更(処分)行為」には、共有者全員の同意が必要です。また、軽微なリフォーム・共有物の管理ルールの策定や変更・土地の分筆などの「管理行為」には、共有持分(共有者1人あたりの所有権の割合)の過半数の同意が求められます。
例えば3人の兄弟姉妹の場合、実家に住んでいる2人が「売却しよう」と提案しても、離れて暮らす1人が反対すれば、実家は売却できません。
【固定資産税の支払いや管理負担の不公平感が原因でトラブルになる】
共有名義不動産に関する「固定資産税・修繕費などの管理費用の支払い」や、「日々の管理・修繕行為などの維持管理」は、共有者の共有持分に応じて負担すべきと法律で定められています。普段の居住実態や活用頻度などは、法律上は負担割合に影響しません。
しかし、兄弟姉妹で相続する場合、家に住んでいる人と住んでいない人の間で衝突するリスクがあります。所有者としての権利・義務と、実際の利用実態に乖離が生じるためです。
実務上よく聞くのは、「自分は家を使っていないのに、税金や修繕費だけ払わされる」といったケースです。逆に、「離れて暮らしている兄弟姉妹が、実家の管理を放棄している」といったパターンもあります。
【下の世代の相続になった際に権利関係が複雑化する】
共有名義不動産の共有持分は、他の不動産と同じく相続対象です。例えば、共有持分30%を子ども2人で法定相続分で分ける場合、15%ずつ相続します。
要するに、共有名義のままで相続が続くと、所有権がさらに細かく分割されて雪だるま式に共有者が増え続けることになります。ここに相続登記の未登記などが重なると、お互いに顔も知らない数十人以上が共有状態となる「メガ共有」という状況に陥るかもしれません。
共有者が多いほど権利関係が複雑化するため、不動産の管理・処分の同意や使い方をめぐって争いが生じやすくなるリスクがあります。
2-2. 親と同居していた兄弟姉妹が自分の相続を有利にするよう主張する
親と同居していた兄弟姉妹が、親が亡くなった際に「自分が親と一緒に住んで面倒を見たのだから、その分だけ相続の内容を優遇してほしい」と主張するケースが実務上存在します。
原則として、同居期間や親との個人的な関係性は、相続割合に関係しません。しかし、生前に被相続人の財産の維持・形成に特別の貢献をした相続人については、「寄与分」として多めの遺産取得が認められる可能性があります。
寄与分が認められるケースは、「親の介護をしていた(療養看護型)」「親の生活や金銭面を支え続けた(扶養型)」「親の事業を手伝っていた(家業従事型)」などです。
ただし、親と子どもの関係では民法上の扶養義務や互助義務があるため、一般的な介護や同居程度では実務上該当しないと考えられます。また、実際には介護や扶養の実態がないにもかかわらず、寄与分を主張してくるトラブルが想定されます。
2-3. 親と住んでいた兄弟姉妹が親から受け取った特別受益について争いがある
親と離れて暮らしていた兄弟姉妹が、「同居していた兄弟姉妹だけが、親から生活費の支援や生前贈与を受けていたのだから、その分を他の相続人に回すべきだ」と主張して対立するトラブルがあります。
この主張の法的根拠となるのは、「特別受益」です。特別受益とは、一部の相続人のみが生前の被相続人から受け取っていた利益のことです。
「実家に住まわせてもらっていた」という程度では、原則として特別受益と判断されるケースは少ないでしょう。一方で、「親が所有する別のマンションに無償で住まわせていた」といったケースは、特別受益に該当する可能性があります。
また、「多額の生活費や金融資産を渡していた」など、親が子どもに財産を直接渡していた場合は、特別受益と見なされるケースが考えられます。
とはいえ、実際には個別の事案、経済状況、金額の大小などさまざまな要素を考慮して、特別受益かどうかを判断するのは困難です。そのため、兄弟姉妹が特別受益を主張してきた場合、家庭裁判所での調停・審判が必要になる可能性があります。
2-4. 兄弟姉妹が住んでいる家を占有して他の相続人が使えなくなる
兄弟姉妹が住んでいる家の相続に関するトラブルとして、兄弟姉妹が家を完全に占有してしまい、他の相続人が使えなくなるケースが挙げられます。
「占有されてもすぐに追い出せばよいのでは」と思われるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。法律上、共有不動産については、各共有者が自分の持分に応じて全体を使用する権利を持っているためです。
認められる根拠として、最高裁判所の1996年12月17日の判例が挙げられます。「相続開始前から親と同居していた相続人は、親との使用貸借(無償で借りる契約)があったものと推測され、親が亡くなった後も遺産分割が確定するまでの間は、他の相続人を貸主としてその契約が存続するものとする」という内容です。
そのため、親と同居していた兄弟姉妹がそのまま家に住み続けたとしても、他の兄弟姉妹からの一方的な明渡し請求や、家賃相当額の請求は認められにくいのが実務上の解釈です。
また、家に住んでいない兄弟姉妹が、親の死後に突然家を占有するというトラブルも存在します。この場合も、「遺産分割が終わるまで相続財産はすべて相続人全員の共有になる」と民法で定められていることから、居住しているだけであれば原則として出ていく必要はないと解釈されます(使用した分の家賃相当額の支払い義務が生じる可能性あり)。
ただし、相続前・相続後にかかわらず、占有者が「勝手に鍵を付け替えて入れないようにした」「バリケードなどで物理的に相続人を遠ざけている」といったケースは話が別です。この場合は、相続人が家を使用する権利を侵害したとして、明渡し請求や家賃請求が認められる可能性があります。
3. 住んでいる家の相続で兄弟姉妹間のトラブルを避ける方法
住んでいる家の相続で兄弟姉妹間のトラブルを避ける方法を示した図解。分割方法によって対策が異なる
住んでいる家の相続について兄弟姉妹間のトラブルを避けるには、遺産分割協議で「現物分割」「代償分割」「換価分割」のいずれかによって公平に分け合うと決めるのがよいでしょう。これらの方法であれば、住んでいる家を共有名義ではなく単独名義で相続できるため、トラブルを防ぎやすくなります。
3-1. 「現物分割」で他の相続人は家以外の財産を多めに分け合う
現物分割とは、遺産を換金したり別の財産に変えたりすることなく、各相続人に振り分ける遺産分割方法です。
例えば、「長男が評価額2000万円の実家を単独で相続する代わりに、次男が2000万円分の預貯金を引き取る」といった相続が該当します。
現物分割であれば、実家に住んでいる長男が「家から出ていきたくない」と主張した場合でも、「不動産は長男が単独名義で引き継ぎ、他の相続人はその代わりに預貯金などを多めに受け取る」といった柔軟な分け方ができるというメリットがあります。
ただし、公平な現物分割ができるかどうかは、遺産の種類に左右されるのが難点です。例えば、遺産が評価額5000万円の不動産と預貯金1000万円しかなかった場合、現物分割では公平に分けるのが難しくなります。
3-2. 更地にして相続する場合は分筆で物理的に分ける
遺産分割協議で相続人全員の合意を得られれば、建物を取り壊して更地にした後、土地を分筆して物理的に分ける方法が利用できます。土地の分筆も、現物分割の一種です。
例えば、100坪の土地であれば、50坪ずつの2つの土地に分けて登記し直せます。切り分けた土地を兄と弟がそれぞれ単独名義で相続すれば、不動産であっても公平に分けることが可能です。
ただし、面積を半分に切り分けたからといって、資産価値まで等しくなるとは限りません。
分筆後の面積が狭すぎたり、形が歪(不整形地)になったりすると、土地の価値が大きく減少するリスクがあります。分筆を利用する際には、分けた後の土地の価値がどの程度になるかを、専門家に確認しておくことを推奨します。
3-3. 「代償分割」で他の兄弟姉妹は家の代わりに代償金を受け取る
代償分割とは、特定の相続人が不動産を単独名義で相続し、その相続人が他の相続人に自己資金から代償金を支払う方法です。
例えば、資産価値2000万円の実家をそこに住む長男が単独で相続したい場合は、長男が自分のポケットマネーから他の相続人へ代償金を支払います。相続人が兄弟姉妹が2人だけであれば、代償金は次男の相続割合に相当する1000万円です。
この方法であれば、他の相続財産は公平に分けつつ、家を失いたくない兄弟姉妹が単独名義で家を相続できるメリットがあります。
一方で、代償分割のデメリットは、家を相続する人に、数百万円から数千万円の代償金を支払えるだけの資金力が必要な点です。また、代償金の算出根拠となる家の資産価値をどのように決定するかをめぐって、相続人同士で揉めるケースが実務上よく見られます。
家の資産価値の評価方法は、原則として時価(取引価格)で行います。相続人全員の合意があれば、固定資産税評価額や相続税評価額、公示価格のいずれかを採用することも可能ですし、遺産の範囲内であれば、任意に代償金の金額を相続人の合意によって決めることも可能です。
代償分割を行う際には、相続人全員が納得する評価方法を選びましょう。なお、これはあくまで遺産分割における実務上のルールであり、相続税を算出する際には相続税評価額を用いるのが税務上の決まりになっています。
3-4. 「換価分割」で現金化し他の相続人で公平に分け合う
家に住んでいる兄弟姉妹を含めて、相続人全員が家を手放したいと思っている場合は、換価分割がよいでしょう。
換価分割とは、不動産を第三者に売却して現金化し、売却代金から諸経費を差し引いた金額を相続割合に応じて分け合う方法です。例えば、実家を売却して2000万円を得た場合、兄弟姉妹が2人であれば1000万円ずつに分けます。
換価分割の大きなメリットは、1円単位で公平に相続できる点です。また、次の世代の相続時に不動産が残っていないため、共有者が増え続けるリスクがゼロになります。
一方で、家に住み続けたい人や、思い出の実家を手放したくない人がいる場合は、兄弟姉妹間で揉めるリスクがあります。また、分配金額は「家がいくらで売れるか」に依存する上に、諸経費や譲渡所得税の支払いが加わるため、手元に残る現金が想定より少ない可能性に留意しておきましょう。
4. 住んでいる家をトラブルなく兄弟姉妹で相続するためのポイント
住んでいる家をトラブルなく兄弟姉妹で相続するためのポイントを示した図解。トラブルを避けるためにも可能な限り対策を講じることが大切
住んでいる家を兄弟姉妹でトラブルなく相続する際には、被相続人や兄弟姉妹との話し合いや専門家の利用などがポイントになります。
4-1. 親の生前に兄弟姉妹や他の相続人とよく話し合っておく
自分や兄弟姉妹が住んでいる家を誰が相続するかについて、親の生前に兄弟姉妹や他の相続人と話し合っておきましょう。
家の相続先や遺産の分配割合などをあらかじめ決めておけば、相続の際の遺産分割協議がスムーズに進みやすくなります。「思い出の詰まった実家を処分してもよいのか」「親自身がどうしてほしいのか」といった、お金だけでは測れない感情的な部分も事前に整理できます。
4-2. 兄弟姉妹が介護などで親の生活を支えていた分を考慮する
兄弟姉妹が介護などで親の生活を支えていた場合は、その分も相続割合を決める際に考慮したほうが、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
法律的には前述した寄与分などを反映しなくても、相続は成立します。しかし、これまでの感謝や親の気持ちなどをすべて無視してしまうと、相続が終わった後も兄弟姉妹間で感情的な摩擦が残るかもしれません。
遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、法的に認められると見込まれる寄与分を超えて、相続割合を自由に決めることが可能です。「今までお世話になった分、長男が多めに遺産を受け取るようにする」と譲り合うことも、実務上の解決策と言えるでしょう。
4-3. もう片方の親が家に住み続ける場合は「配偶者居住権」を利用する
家の所有権を有する親が亡くなり、もう片方の親がまだ生存していて家に住み続ける場合は、「配偶者居住権」を行使できます。
配偶者居住権とは、夫婦のどちらかが亡くなった場合に、相続開始時(死亡時)にその建物に居住していた配偶者が、亡くなった側が所有する建物に無償で居住し続けられる権利です。配偶者居住権は、配偶者が亡くなるまで、または一定の期間が経過するまで続きます。
配偶者居住権の特徴は、配偶者が居住権のみを取得するという点です。「配偶者は家に住む権利だけ受け取り、家の所有権は別の相続人が引き継ぐ」という形になります。
実家2000万円・現金2000万円を配偶者と子どもの計2人で法定相続する場合の例で、違いを見ていきましょう。
- 配偶者居住権を使わない場合:親が実家2000万円を相続すると、それだけで自分の相続枠を使い切ってしまうため、現金を確保できない可能性が高い
- 配偶者居住権を使う場合:親は居住権分のみの相続になるため、居住権が1000万円の場合、遺産を取得する枠が1000万円分確保できる
万が一、他の兄弟姉妹が「親が実家を相続するなら、その分だけ相続財産を多めにほしい」と主張しても、配偶者居住権を使えば、親は実家の所有権を子どもに譲りつつ、家に住み続ける権利と老後の生活資金の両方を確保しやすくなります。
配偶者居住権の要件や登記手続き、その他メリット・デメリットについては、以下の関連記事をご覧ください。
4-4. 相続争いに巻き込まれたくない場合は相続放棄も検討する
住んでいる家を含めて、「相続人同士の争いに巻き込まれたくない」「親が失敗した事業の借金も一緒に相続してしまいそう」といった場合は、「相続放棄」を検討するのもよいでしょう。
相続放棄とは、自分が持つ相続権を放棄し、初めから相続人ではなかったものとして扱われる制度です。相続放棄をすると、原則として遺産分割協議への参加や債務の相続を免れます。
ただし、住んでいる家や預貯金、金融資産などのプラスの財産もすべて相続できなくなる点に注意が必要です。
親と一緒に実家に住んでいた場合、相続放棄した後に他の兄弟姉妹が実家の所有権を得ると、実家から出ていかなければならない可能性が出てきます。相続放棄をすべきかどうかの判断については、弁護士や司法書士などの専門家への相談を検討してみてください。
なお、相続放棄の期限は「自己のために相続があると知った日から3カ月以内(熟慮期間)」です。期限内に、家庭裁判所へ申述手続きを行います。
4-5. 相続登記は義務化されているため忘れないようにする
相続内容が確定した後は、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する「相続登記」を忘れないようにしましょう。
相続登記は、2024年4月1日より義務化されました。不動産の取得を知ってから3年以内に申請しなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、相続実務においても、相続登記をしないデメリットはいくつもあります。
例えば、相続登記をしないと第三者に対して権利を主張しにくくなり、「他の相続人の借金が原因で実家の一部を差し押さえられる」「不動産の売買や抵当権の設定ができない」「相続人が増え続ける」など、実務上の重大なトラブルに発展するでしょう。
無用なリスクを生じさせないためにも、誰が不動産を相続するのか確定したら、速やかに相続登記を完了させましょう。
4-6. 相続については弁護士や不動産会社などの専門家に相談する
「親と兄弟姉妹が一緒に住んでいる」「相続争いが懸念される」といった複雑な事案であるほど、当事者である兄弟姉妹だけで話し合うと、条件面や感情面での対立が深まるリスクがあります。
相続手続きや相続争いの解決などをスムーズに進めるには、弁護士や不動産会社などの専門家に早めに相談することを推奨します。
- 弁護士:他の相続人との代理交渉、遺産分割調停の対応、相続手続き全般のサポート
- 司法書士:相続登記申請の代理
- 税理士:相続税評価額や相続税の算出、不動産売却時の譲渡所得税の確定申告の代理など
- 不動産会社:代償分割の基準となる時価の査定や、換価分割時の不動産売却のサポート
- 不動産鑑定士:実家の資産価値が高い、調停・審判など裁判関係で用いるなど精度の高い評価が必要な場合の鑑定
ただし、不動産会社の売買仲介には売却価格に応じた仲介手数料、士業への依頼には報酬の支払いが必要です。数十万円から数百万円かかる可能性があるため、そのあたりの支出の負担もあらかじめ相続人同士で話し合っておくのがよいでしょう。
5. 住んでいる家を兄弟姉妹で相続する場合に関するよくある質問
自分の兄弟姉妹が異母兄弟姉妹や養子(養子縁組)の場合、同じ親からの相続で何か変わりますか?
親が亡くなって子どもたちが相続する場合、兄弟姉妹が異母兄弟姉妹であったり親との関係が養子(養子縁組)であったりしても、相続権の扱いは一切変わりません。
兄弟姉妹での相続はどのような流れで進みますか?
相続が発生したら、まず7日以内に死亡届を提出し、年金・保険関係の手続き、公共料金の名義変更、金融機関への連絡などを行います。
次に、円滑な相続手続きのために、遺言書の確認、相続人・相続財産調査を進めます。調査が終われば、結果を基に相続放棄の判断や遺産分割協議を行いましょう。
なお、遺産分割協議が成立しているかどうかにかかわらず、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。
遺産分割協議が期限までにまとまらない場合でも、いったん未分割の状態で申告・納付(未分割申告)を行い、その後に協議が成立した時点で更正の請求などにより精算することになります。
6. まとめ|自分や兄弟姉妹が住んでいる家を相続する場合は専門家への相談がおすすめ
自分や兄弟姉妹が住んでいる家を相続する場合、居住期間や活用頻度などは相続割合に影響しません。一方で、「同居する親の世話をしてきた兄弟姉妹の相続割合を多くするか」「生前に親から特別受益を受け取っていないか」といった、独自の注意点が存在します。
トラブルを防ぐためには、現物分割や代償分割で家に引き続き住む兄弟姉妹の単独名義にしたり、換価分割で不動産を現金化したりなどの解決策が挙げられます。
遺産分割をスムーズに進めるには、兄弟姉妹や親との事前の話し合いや、親の生活を支えていた兄弟姉妹への配慮などが大きなポイントになるでしょう。事案の複雑化が予想されるため、弁護士や税理士などの専門家に早めに相談することを推奨します。
(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)
【PR】「訳あり不動産」の相談は、クランピーリアルエステートへ
クランピーリアルエステートは、底地や共有持分、再建築不可物件といった、いわゆる訳あり物件を専門的に取り扱う不動産企業。これまでに培ったノウハウと、不動産専門の弁護士や税理士などの全国ネットワークを活かし、問題を解決します。
お問い合わせ先
電話:0120-479-831
詳しくはこちらへ