目次

  1. 1. マンションの相続税|相続税評価額から算定
  2. 2. 1室マンション相続税評価の新ルール
    1. 2-1. マンション1室の評価額を時価の6割に引き上げ
    2. 2-2. 高層マンションほど影響を受ける
    3. 2-3. マンションの相続税対策ができなくなるわけではない
  3. 3. マンションの相続税評価額の計算方法
    1. 3-1. 建物の計算方法
    2. 3-2. 土地の計算方法
    3. 3-3. 賃貸用物件の計算方法
  4. 4. マンションの相続税の計算方法
    1. 4-1. 相続税は相続したマンションだけで計算するものではない
    2. 4-2. 相続税がかからない場合もある
    3. 4-3. 相続税の計算手順
  5. 5. マンション相続で使える控除・特例
    1. 5-1.配偶者の税額の軽減
    2. 5-2. 小規模宅地等の特例
  6. 6. マンションの相続手続きの流れ
  7. 7. マンションを相続する際の注意点
    1. 7-1. 相続税の申告・納付は10カ月以内
    2. 7-2. 共有名義はトラブルになりやすい
  8. 8. マンションの相続税について、よくある質問
  9. 9. まとめ

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マンションを相続したときにかかる相続税は、相続税評価額を元に計算します。相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算するときの基準となる金額です。相続税法では「財産取得時の時価で評価する」とされていますが、実際には相続税法と相続税財産評価基本通達(以下「通達」)に基づいて計算します。

相続したマンションも、通達に基づいて相続税評価額を計算します。敷地権(土地)と建物に分け、建物は固定資産税評価額を元に、土地は路線価方式あるいは倍率方式で評価することになります。

これまで1室マンションは、戸建てに比べて評価額が低くなりがちでした。敷地が広くても多くの入居者で共有しているため、1室当たりの土地面積が極端に小さく、建物部分も評価が低くなっていました。特に「タワマン」と呼ばれる高層マンションの場合、高層階ほど相続税評価額が小さく、相続税も格段に少なくなるため「タワマン節税」と呼ばれる手法として注目されていました。

下記は、今回の改正前の戸建てとマンション1室の相続税評価額の違いを示したイメージ図です。

戸建てとマンション1室の土地の評価額の比較図。マンション1室の相続税評価額は一戸あたりの面積が小さくなるため、戸建てより大幅に少なくなります
改正前の戸建てとマンション1室の土地の評価額の比較図。マンション1室の相続税評価額は一戸あたりの面積が小さくなるため、戸建てより大幅に少なかった
戸建てとマンション1室の建物の評価額の比較図。マンションの高層階ほど、時価と相続税評価額に乖離が生じます
改正前の戸建てとマンション1室の建物の評価額の比較図。マンションの高層階ほど、時価と相続税評価額に乖離が生じていた

過度な相続税対策に歯止めをかけるべく、マンション1室の評価についてのルールが通達で新たに定められました。2024年1月以降に相続、遺贈または贈与で取得した分について適用されます。内容は次の通りです。

マンション1室に対応する建物部分や敷地部分を従来通りに評価をし、評価水準が時価の6割に満たない場合には、次のように計算します。

(相続税評価額×マンション1室の評価乖離率)×評価水準0.6

最低でも時価の6割になるよう評価額を調整するわけです。こうすることで、戸建ての評価水準とのズレが少なくなります。

新たな評価ルールは、区分所有マンションが対象です。ただ実際には、高層階ほど影響を受けることになります。高層の1室マンションほど建物の部分の固定資産税評価額が時価より低くなりやすいからです。

新ルールの適用により、いわゆる「タワマン節税」の効果は小さくなります。だからと言って、節税効果が完全になくなるわけではありません。現預金よりも不動産という形で相続させる方が、相続税は抑えられます。

なお、今回の通達評価の改正の対象は、あくまで居住用の1室マンションです。事業用のテナントや1棟所有の賃貸マンションなどは、これまで通りの相続税評価を行います。

マンションを相続するなら、相続税のシミュレーションをした方が安心です。相続に強い税理士に相談してみるとよいでしょう

相続したマンションはどう評価したらいいのでしょうか。マンションの相続税評価額の計算方法を確認しましょう。

建物部分の相続税評価額は、次のように計算します。

固定資産税評価額×1.0

固定資産税評価額は、市区町村から送られてくる固定資産税の課税明細書に記載されています。

土地家屋の評価|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm
マンションの課税明細書の例(土地家屋の評価|国税庁)

相続税の計算のときは、この赤枠で囲まれた数字を使います。この1室マンションの相続税評価額は「固定資産税評価額7000万円×1.0=7000万円」となります。

マンションの土地の評価額は、敷地権の評価額です。敷地権の評価額は次のように計算します。

マンションの敷地全体の評価額×区分所有する建物分の敷地権の割合

敷地権の割合は、法務局の登記事項証明書で確認できます。

土地家屋の評価|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm
マンションの登記事項証明書の例(土地家屋の評価|国税庁)

このマンションの敷地全体の評価額が30億円なら、この1室マンションの敷地権の相続税評価額は「30億円×7,500/2,000,000=1125万円」となります。

なお、敷地全体の評価額は、戸建ての敷地と同様、路線価方式か倍率方式のいずれかで評価します。路線価方式と倍率方式の計算方法は、次の関連記事でご確認下さい。

【関連】土地にかかる相続税はどう計算する? 路線価以外の評価方法と相続税対策を税理士が解説

1室マンションが賃貸物件用なら、相続税評価額はさらに下がります。土地部分は「貸家建付地」として、建物部分は「貸家」として評価されるからです。計算方法は、それぞれ次のようになります。

【1室マンションの敷地部分】
土地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合)

【1室マンションの建物部分】
建物の固定資産税評価額 × (1-借家権割合)

借地権割合は30~90%の間ですが、地域によって異なります。借家権割合は全国一律30%です。

なお、相続した賃貸マンションが1棟マンションの場合、計算式は次のようになります。

【マンションの敷地の評価額】
土地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

【建物】
建物の固定資産税評価額 × (1-借家権割合×賃貸割合)

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マンションを相続した場合の相続税はどのように計算するのでしょうか。

相続税は、課税対象となる相続財産の総額(課税価格の合計額)に対して課税されます。マンション以外に現預金や車、有価証券があるなら、それも含めて課税価格を計算します。相続人や受遺者など全員の課税価格の合計額を算出し、それを元に相続税を計算するのです。

課税価格の計算イメージは次の通りです。

課税価格=プラスの財産-マイナスの財産+生前贈与加算

課税価格の合計額の出し方
課税価格の計算イメージ。暦年課税制度における生前贈与加算は死亡日以前3年間に贈与された財産が対象でしたが、2024年から7年間に変更されました。2024年以降の贈与については、段階的に期間が延長され、2031年からは完全に7年間の加算期間になります

つまり、マンションの相続税評価額だけから税額を計算することはできません。亡くなった人の財産すべてを把握し、評価する必要があります。

なお、マンションを相続しても相続税がかからないこともあります。相続財産の課税価格全体が基礎控除額以下だった場合です。

相続税の基礎控除
相続税の基礎控除がわかる図版。基礎控除額のボーダーラインは「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します

基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。つまり相続人の数が多いほど、課税される相続財産は少なくなるのです。

相続税の計算は、やや複雑です。亡くなった人の財産すべてと亡くなった人から贈与された財産の一部を合計して基礎控除額を差し引いた後、「法定相続人が法定相続分で相続した」という前提で仮の相続税額を算出します。この仮の相続税額を合計した金額を実際の相続分に応じて本来の相続税額を計算するのです。

この計算をするのは大変です。おおまかな数字を知りたいなら、次のような早見表を活用するといいでしょう。

相続人が配偶者と子の場合の相続税の早見表
相続人が配偶者と子の場合の相続税の早見表
相続人が子だけの場合の相続税早見表。配偶者と子の場合と比較すると、相続税が高くなりがちです
相続人が子だけの場合の相続税早見表。配偶者と子の場合と比較すると、相続税が高くなりがちです

高額になりがちなマンションを相続しても、制度を活用すれば納税負担を軽減できます。次の控除や特例の制度を活用するとよいでしょう。

亡くなった人の妻や夫は、相続や遺贈で財産を取得しても1億6000万円か法定相続分のいずれか多い金額まで相続税はかかりません。なお、この制度を活用するなら、相続税の申告が必要です。

【関連】相続税の配偶者控除は1.6億! 使いすぎにはデメリットも 適用要件から注意点まで解説

相続したマンションの敷地の評価額を最大80%減額できるという特例です。居住用・賃貸用いずれにも適用できますが、所定の要件を満たす必要があります。この制度を活用するときも、相続税の申告が必要です。

【関連】小規模宅地等の特例とは? 適用要件から計算例、必要書類までわかりやすく解説

上記のほか、要件にあてはまれば未成年者控除、障害者控除、相次相続控除などで一定額を相続人の相続税額から差し引ける制度で相続税を抑えられます。

マンションを相続する際の手続きは、次の流れで行います。

マンションの名義変更の流れ。遺言書の確認や相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成などが必要になります
マンションの名義変更の流れ。遺言書の確認や相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成などが必要になります

この相続手続きは基本的にほかの財産と同じです。詳しくは、次の関連記事でご確認ください。

【関連】相続したマンションの名義変更の手続きは? 必要書類から費用、かかる税金まで解説

マンションを相続する際は、次の点に注意しましょう。

マンションを含め、課税される遺産総額が基礎控除額を超えるなら、相続税の申告と納税が必要です。この申告と納税の期限は相続開始を知った日、つまり財産の持ち主が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内となっています。相続財産の評価や相続税の計算はすぐにはできません。財産調査や相続人の捜索、遺言書の確認など事前の準備が必要です。早めに着手しましょう。

マンションを共有で相続することもあるかもしれません。共有だと遺産分割協議のその場は丸く収められますが、相続が繰り返されると相続人が増え、争いの元になる可能性があります。共有財産は共有者全員の合意がないと売却できないからです。共有名義は、早めに解消した方がいいかもしれません。

Q. 新ルールでタワマン節税はできなくなりますか?

一概にそうとは言えません。マンション1室を評価した場合の評価水準が6割に満たない場合は、従来ほどの節税効果はありません。6割になるように評価額が調整されるからです。しかし、だからといって完全に節税効果がなくなるわけではありません。マンション購入が相続税対策として有効かどうかは、事前に税理士に相談した方がよいでしょう。

Q. 相続税の納税ができない場合はどうしたらいいですか?

相続税の納税は現金一括納付が原則です。相続したマンションをそのまま納税にあてる物納という制度もありますが、ハードルはかなり高いと言えます。また、分割して納付する延納制度の活用も一つの選択肢ですが、担保の提供が必要です。また、相続税とは別に利子税を納めることになります。

マンションを売らないのなら不動産を担保に入れてローンを組むのも一つの選択肢です。ただ、調達のめどが立たないのなら売却せざるを得なくなる可能性が高いでしょう。

マンションを相続するなら、相続税のシミュレーションをした方が安心です。また、相続税の計算にも手間がかかります。相続手続きを進める前に税理士へ相談をした方がよいかもしれません。

(記事は2024年1月1日時点の情報に基づいています)

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