70年以上前から日本の自然保護活動をリード

――日本自然保護協会の活動内容を教えてください。

その名前の通り、日本の自然を守る活動を推進している公益団体です。1951年の設立後、70年以上にわたって日本の生物多様性の保全に向けて活動してきました。たとえば、世界自然遺産に登録されている奄美大島や小笠原諸島などの保全に取り組んでいます。活動の3本柱として「なくなりそうな自然を守る」「守った自然で地域をよくする」「自然保護の文化のすそ野を広げる」を掲げています。

今、日本では3800種以上の生き物が絶滅に瀕しています。ツキノワグマは本州では生息域が拡大しているものの四国では20頭ほどまで減少していますし、大型猛禽類のニホンイヌワシも絶滅危惧種に指定されています。

これらの絶滅危惧種が、繁殖して子孫を残せる森林へと復元するための保全活動や調査を行っています。またヤンバルクイナが生息する沖縄北部や奄美のサンゴ礁の保全と再生活動などにも力を入れています。当会としては、これらの保護活動が地域の活性化やブランディングにつながることを目指しています。

また、地域に根ざした自然観察会を開いて自然を守る仲間をつくるボランティアリーダー「自然観察指導員」の育成にも取り組んでいます。1978年から講習会を始めて、延べ3万人以上の自然観察指導員を輩出しました。

家庭の境遇によって自然体験に格差が生じているため、全国の自然観察指導員や保育園、保育士を目指す学生と協働し、子どもたちに自然の原体験を届けるプロジェクトを展開しています

絶滅危惧種の調査や指導員の育成に寄付を活用

――遺贈された寄付金はどのような活動に使われているのですか。

生物多様性を保全するための活動や調査をするには、人件費や調査用具費、川や海での調査船の使用料などの経費がかかります。皆様から遺贈された寄付金は、全国にスタッフや専門家、ボランティアを派遣する費用や、調査研究費、環境教育のための費用として活用しています。

幼稚園の園長さんをされていた女性・Sさんのケースをご紹介します。

その方は長年会員として毎年少しずつ寄付をしてくださっていました。お仕事柄、教育に携わってきたことから子どもたちの未来のために環境教育を普及する活動に役立ててほしい、というご希望を遺言で残されていました。

遺言執行者である行政書士の方からは、「この時期になると庭にシジュウカラが来てくれるのよね」とSさんが日頃から自然を慈しみ楽しんでいたこと、幼稚園では子どもたちに「お花が咲いたね」というお声がけをよくされていたことなど、自然をとても愛していた方だったというエピソードを伺いました。遺贈いただいたお金は自然観察指導員の育成に活用しています。

――Sさんのように遺贈者がお金の使い道を決めることも可能なのでしょうか。

遺言書の付言事項に、どのような自然が好きであったか、なぜ自然保護へのご遺贈を考えられたのかなどの気持ちを記していただければ、受遺後のご寄付を最適な活動に活用させていただきます。「春夏秋冬で移り変わる山の自然が好きだった」「生き物が好きだった」「サンゴ礁の青い海が好きでいつもダイビングに行っていました」といった内容で結構です。

ただ、「ニホンカワウソを守る活動に使ってください」など使い道を具体的な生物種に限定されてしまうと、その活動をしていない時、遺贈者のご希望が叶えられませんのでご注意下さい。どのように遺言書に記せば自分の思いを実現させることができるのか迷うことがありましたら、ぜひ協会の遺贈担当の私どもにご相談下さい。

――「山林を遺贈したい」と考える人も多いのでは? 森林など自然物を受け入れるかどうかの判断基準はありますか。

絶滅危惧種の繁殖地や保護地域の隣接部など、自然保護上の重要保護地の可能性があれば、自然環境調査、土地の所有区分や土砂崩れなどのリスク調査を経て、土地の受け入れを判断します。

実際には山林や別荘地などの寄付のご相談はいただくのですが「相続したものの資産価値がなく困っている」との相談が大半で、今のところ山林の寄付が成立した事例はありません。

日本自然保護協会で遺贈寄付を担当する鶴田由美子さん(左)と芝小路晴子さん

自然保護計画は100年単位 長期的な支援が力に

――遺贈寄付はいくらからできますか。

遺贈に限らず、当会への寄付金額に下限はありません。故人のお気持ちとともに数万円を相続財産から寄付くださったり、香典・供花代返しを協会への寄付に代えてくださったりする方もいます。

遺品整理として亡くなった方がお持ちであった食器やバッグ、絵画などを、物品寄付サービス「お宝エイド」へ着払いで送っていただくと、その買い取り額が日本自然保護協会への寄付となる仕組みもありますので、ご活用下さい。

金額の多寡を問わず、日本の自然を守り次世代へ継承したいという一人一人の想いを積み重ねることに意味があると思っています。それが長期にわたる自然保護活動を継続していく力になっていきます。

また、当会だけでなく複数団体に遺贈される方々も増えています。ある方は、日本自然保護協会のほか、出身大学、子ども支援団体、親族が世話になった医療団体の計4団体に4分の1ずつを遺贈寄付されました。

沖縄・奄美の海域でのサンゴ礁調査の様子。埋立工事の影響、海水温の上昇などで健全なサンゴ礁が脅かされており、長期的な保護活動が必要となっている

――最後に遺贈を考えている方へのメッセージをお願いします。

生物多様性保全の取り組みは、1年で数字としてすぐに目に見える成果が出るわけではなく、非常に時間がかかるものです。100年先を見据えたプロジェクトもいくつもあります。長期的な継続性が必要であるからこそ、遺贈寄付は非常に大きな力となります。

遺贈寄付は人生の集大成といわれます。日本古来の美しく豊かな自然を慈しみ未来へ残していくために、私どもの活動に想いを託していただければとてもうれしく思います。

日本自然保護協会

1951年に日本初の自然保護団体として設立され、70年以上の歴史を持つ公益財団法人。通称はNACS-J(ナックス・ジェイ)。絶滅危惧種のレッドリストを作成している国際自然保護連合(IUCN)のメンバーであり、IUCNの日本委員会の事務局も担う。2017年から遺贈寄付の受入体制を強化し、遺贈や遺言書作成に関する個別の相談・紹介も行っている。他分野の非営利団体とともにオンライン終活セミナーも開催している。

(記事は2023年4月1日現在の情報に基づきます)

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