抵当権とは?

まず、「抵当権」について説明します。
抵当権とは、債権者(抵当権者)が債務者に対して有する債権(被担保債権)を担保するために、不動産の所有者(設定者)が設定することにより発生する担保権のことです。

抵当権設定登記をすることにより、万が一、債務者が支払いを怠った場合は、債権者は抵当権者として裁判所に競売の申立をし、売却による配当金を受けることで、他の債権者よりも優先して債権回収をすることができます。

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抵当権抹消登記の手続きを放置するリスクは?

注意したいのは、被担保債権を完済しても「自動的に抵当権設定登記は抹消されない」ということです。完済したら抵当権抹消登記を申請する必要があります。

もし抹消登記を放置すると、次のようなリスクが発生する可能性があります。

1) 競売の申し立てをされるリスク

抵当権を実行するには、不動産の登記事項証明書などを添付して裁判所に申し立てをします。抵当権設定登記がある以上、裁判所は担保不動産競売の開始決定をしてしまいます。これに対して「執行異議」という不服申し立ての手段がありますが、被担保債権が完済されたことを立証する必要があります。

もちろん、被担保債権が完済されたのに、抵当権の実行がなされることは通常はあり得ないので、この心配は杞憂でしょう。しかし少しでも心配の種をなくすためには、早めに抹消登記手続きをすべきです。

2) すぐには「抹消できない」というリスク

完済したにもかかわらず抹消登記手続きを放置していると、抵当権者からもらっていた必要書類を紛失していることがよくあります。

抵当権者に依頼すれば委任状などは再発行してくれますが、抵当権設定登記の登記識別情報(または登記済証)は法務局でも再発行できません。この場合は、さらに抵当権者の印鑑証明書が必要になります。また、抹消登記を申請しても法務局から抵当権者に封書が郵送され、同封された回答書に抵当権者が署名(記名)押印して2週間以内に法務局に返送しなければならず、登記完了までに時間がかかります。

抵当権者が金融機関であれば委任状の再発行はさほど心配する必要はないでしょう。しかし一般の会社や個人の場合はどうでしょうか。通常は協力してくれるとは思いますが、抵当権者である会社が倒産していたらどうでしょう。破産管財人がいればよいですが、夜逃げの場合は会社の代表者を探さなければなりません。あるいは、抵当権者である個人が死亡していた場合、相続人を探さなければなりません。

仮に会社の代表者や相続人を見つけたとしても、協力してくれないことも考えられます。この場合、最終的には抵当権の抹消登記手続きを求める民事訴訟を起こす必要があり、判決が出るまでに時間がかかります。

もし相続税を払うために、親から相続した不動産を早く売る必要がある場合は、申告期限までに売却できず、別の方法で資金調達しなければなりません。このように抵当権をすぐに抹消できないとなると、さまざまな不都合が生じる可能性があるのです。

抵当権抹消登記を申請する方法

次に、抵当権抹消登記の申請方法を説明します。

登記手続きの流れ

登記手続きの流れは以下の通りです。

1) 資料、書類の収集

抵当権者から必要書類を受領してください。主に、委任状、登記原因証明情報(解除証書など)、登記識別情報(設定登記の時期によっては登記済証)が必要になります。

次に法務局で、抵当権が設定されている不動産の登記事項証明書を共同担保目録付きですべて取得してください。共同担保目録には担保に入っている不動産が記載されていますので、証明書の取得漏れがないかを確認してください。クレジットカードを持っている場合は、インターネットの『登記情報提供サービス』で登記情報を見ることができ、法務局で証明書を取得する手間が省けます。

2)登記申請書の作成

書式は法務局のホームページからダウンロードできます。

(例)A所有の建物1棟、土地1筆に設定された株式会社B銀行を抵当権者とする抵当権の抹消登記の書式例(一部記載省略)

登記申請書
登記の目的  抵当権抹消
原   因  令和○年○月○日弁済
抹消すべき登記 平成○年○月○日受付第○○号
登記権利者
兼登記義務者の代理人 (住所省略)A
登記義務者
 (本店省略)株式会社B銀行 代表取締役X
            (会社法人等番号0000-01-000000)
添付情報 登記原因証明情報 登記識別情報 代理権限証明情報 会社法人等番号
令和○年○月○日申請  ○○地方法務局
登録免許税 金2千円
不動産の表示(省略)

2) 法務局への申請

申請方法は、管轄の法務局の窓口に申請書を提出する、または郵送する方法があります。電子署名ができ、登記原因証明情報をPDFファイルにすることができる人は、オンライン申請(添付書類は窓口提出か郵送)も可能です。不動産の所在地によって申請先の管轄法務局は変わりますので、法務局のホームページで確認してください。

抵当権抹消登記の費用は?

抹消登記には登録免許税が課税されます。

計算式は【不動産の個数×1000円】です。司法書士に依頼する場合は、このほかに報酬が発生します。
ちなみに統一の報酬基準はありません。例えば不動産の個数が2個である場合、おおむね1万円から2万円くらいが相場となりますが、正確な費用を知りたい場合は、司法書士に見積りをしてもらいましょう。

司法書士に依頼した方がよいケース

上記で説明したように、抵当権抹消は個人でもできますが、以下のような場合は司法書士に依頼したほうがスムーズです。

申請書の作成や提出する時間がない

申請書はダウンロードできますが、登記簿と添付書類を照らし合わせて、自力で作成する必要があります。また、抹消登記のほかに所有者の住所変更登記が必要になる場合もあります。法務局には手続き案内コーナーはありますが、原則として予約が必要で、平日のみの受付です。

司法書士に依頼するほうが時間や労力の節約になります。

抹消登記を急いでいる

申請書や添付書類に不備があると、法務局に出向いて補正しなければなりません。万が一の場合は、申請を取り下げて、再度申請をしなければならず、登記が完了するまで時間がかかります。

抹消登記を急いでいる場合は、司法書士に依頼するほうがスムーズでしょう。

古い時代の抵当権がついている

明治・大正・昭和初期の時代の抵当権が残っている場合は、抵当権者の所在が不明なことが多いので供託手続きなどが必要になる可能性が高く、専門的な知識が要求されます。この場合は専門家に任せたほうが安心です。

抵当権者が金融機関以外

抵当権者が不慣れなことが多く、抵当権者のために必要書類の案内や押印書類の作成が必要になる可能性が高いです。司法書士に抵当権者との書類のやりとりを任せた方が安心です。

まとめ

不動産の抵当権の放置は、何かと面倒なことを招いてしまいます。完済したら、必要書類を取得し、なるべく早めに抹消登記手続きをしましょう。自身で行うのが難しい場合は、司法書士に相談してみることをおすすめします。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています。)