目次

  1. 1. 兄弟間で不動産を贈与するとかかる税金は?
    1. 1-1. 贈与税
    2. 1-2. 不動産取得税
    3. 1-3. 登録免許税
    4. 1-4. 印紙税
  2. 2. 兄弟間で不動産を遺贈する場合にかかる税金は?
    1. 2-1. 相続税
    2. 2-2. 不動産取得税
    3. 2-3. 登録免許税
  3. 3. 兄弟間での不動産贈与における贈与税の注意点
  4. 4. 贈与以外の方法の検討も

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兄弟間で不動産を贈与する場合、不動産を取得した人に①贈与税、②不動産取得税、③登録免許税がかかります。兄が所有する土地を弟に贈与する場合、下図の通り、弟にこれら税金がかかってきます。また、不動産贈与契約書には④印紙税を貼って消印する必要があります。

兄弟間で不動産を贈与する場合の税金
兄弟間で不動産を贈与する場合の税金

贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの間に贈与により取得した財産に対して課される税金です。財産を取得した人が贈与税額を計算し(又は、税理士に依頼し)翌年の3月15日までに税務署に申告して納税する必要があります。

贈与税の計算方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがありますが、兄弟間の贈与では相続時精算課税制度は使えないので、暦年課税制度で計算します。

【贈与税の計算式(暦年課税制度)】
贈与税=(1年間に贈与により取得した財産の価額-110万円)×贈与税率-控除額

土地の場合、財産の価額を国税庁公表の財産評価基本通達に基づいて路線価方式又は倍率方式により評価する必要があります。贈与税率は、兄弟間の贈与では一般税率(下表)を用いて計算します。

出典:国税庁HPタックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
出典:国税庁HPタックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)

不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した人に課税される税金です。原則的には不動産を取得した人が都道府県に申告することになっていますが、申告しなくても都道府県から納税通知書が送られてきます(送られてくる時期の目安は登記手続きが完了してから4~6カ月後)。

土地を贈与により取得した場合の不動産取得税の計算方法は以下の通りです。

【不動産取得税の計算方法】
不動産取得税=土地の固定資産税評価額×1/2(※1)×税率3%(※2)
 ※1 令和6年3月31日までに宅地を取得した場合、課税標準額が1/2とされています。
 ※2 令和6年3月31日までに取得した土地、住宅用家屋は税率3%とされています(本則4%)。

東京都に所在する不動産であれば、東京都主税局HP「不動産取得税計算ツール」で試算できます。

贈与により土地の所有権移転登記をした場合、固定資産税評価額に対して2%の税率で登録免許税が課税されます。

【登録免許税の計算式】
登録免許税=土地の固定資産税評価額×税率2%

司法書士に登記を依頼した場合には、司法書士報酬と合わせて司法書士が立て替えている登録免許税も一緒に司法書士に支払います。

不動産贈与契約書には、通常不動産の金額は記載しないので、印紙200円を貼って消印する必要があります。印紙は兄弟のどちらが負担しても問題ありません。

兄弟間で不動産の所有権を無償で移転する方法としては、贈与以外に遺贈(遺言による取得)も考えられます。兄が所有する土地を弟に遺贈する場合、下図の通り、兄の死亡時に弟に各種税金がかかってきます。また、遺言を公正証書で作成する場合には公正証書作成費用がかかります。

兄弟間で不動産を遺贈する場合の税金
兄弟間で不動産を遺贈する場合の税金

相続税は、被相続人(亡くなった人)の財産を相続、遺贈や相続時精算課税による贈与によって取得した場合に、その取得した財産の価額を基に課される税金です。相続税の申告納税期限は、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内です。

相続財産等の合計額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内であれば、一部例外的な場合を除き相続税はかかりません。相続税がかかるかどうか(相続税の申告が必要かどうか)の簡易判定ツールとしては、国税庁HP「相続税の申告要否判定コーナー」が便利です。

なお、被相続人の兄弟が遺贈で不動産を取得した場合で相続税がかかるときには、相続税の2割加算(相続税が2割増しになる取り扱い)があるので注意が必要です。

被相続人の兄弟が相続人の場合、不動産取得税は非課税となります。一方で、被相続人の兄弟が相続人以外であり、特定遺贈(遺産のうち特定された具体的な財産についての遺贈)により不動産を取得した場合には、贈与の場合と同じく不動産取得税がかかります。

被相続人の兄弟が相続人の場合、登録免許税の税率は0.4%です。一方で、被相続人の兄弟が相続人以外であり、遺贈により不動産の所有権移転登記を行う場合には、贈与の場合と同じく登録免許税の税率は2%となります。

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兄弟間で不動産の生前贈与を検討する場合、負担の大きな贈与税について、特に以下の事項に注意が必要です。

  • 相続時精算課税制度(特別控除2500万円)は使えない。
  • 暦年課税制度の基礎控除110万円の範囲内で毎年持分贈与を行い贈与税非課税とする場合、毎年不動産を評価する手間と所有権移転登記の手間がかかる(評価を税理士に、登記を司法書士に依頼する場合には専門家報酬も都度かかる)
  • 贈与による所有権移転登記(名義変更登記)を行うとその事実は税務署にも把握されるため、贈与税の申告をしないで無視することは事実上できない。
  • 兄から弟への不動産贈与で、本来弟が払うべき贈与税を兄が払ってあげると贈与税相当額を兄から弟へ贈与したことになり、再度贈与税がかかる。

兄弟間で不動産の生前贈与を検討する場合には、遺贈や売買による方法も兄弟間で検討してみることをお勧めします。

贈与、遺贈、売買等の各方法によって発生する税金とその税金を負担する人が異なりますが、税金が最も少ない方法がベストとも限りません。

例えば、不動産を所有する兄としては、別にお金はいらないから贈与で不動産を弟にあげる、又は自分が死亡したときに年の離れた弟に遺贈で不動産をあげるという想いの場合でも、兄の配偶者や子供はそれに納得しておらず、兄の死後、弟に遺留分侵害額請求を行うというようなことも考えられます。こうした場合には、適正価格での売買の方がよいということになります。

どのような方法で不動産を移転すべきか悩んでいる場合には、相続対策に精通した税理士などの専門家に事前に相談するとよいでしょう。

(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)

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