遺言で財産をもらった場合の相続税 相続人以外の人に贈る場合の注意点も解説
遺言があれば、相続人だけでなく、孫や内縁の妻といった第三者にも財産を遺すことができます。このとき、相続税はどう計算するのでしょうか。相続人以外の人が財産をもらうときの注意点も含め、税理士が解説します。
遺言があれば、相続人だけでなく、孫や内縁の妻といった第三者にも財産を遺すことができます。このとき、相続税はどう計算するのでしょうか。相続人以外の人が財産をもらうときの注意点も含め、税理士が解説します。
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遺言で財産を誰かに遺すことを「遺贈」と言います。遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」に分かれます。
「包括遺贈」とは、財産の全部あるいは一定の割合分を遺贈する方法のことです。「私の財産をすべて〇〇に遺贈する」「私の財産の半分を〇〇に遺贈する」などと遺言書に記載します。受遺者(財産を受け取る人)は、相続人と同等の権利義務を負うことになります。
「特定遺贈」とは、財産を特定して遺贈する方法のことです。「東京都中央区築地5丁目〇〇の土地を△△に遺贈する」といった形で遺します。受遺者は、特別な指示がない限り、遺贈者(遺言を残して財産を贈る人)の債務を引き継ぎません。
遺贈は民法上、贈与の一形態とされています。しかし、財産の移転のきっかけが持ち主の死亡であることから、税法では「贈与税」ではなく「相続税」の対象としています。遺贈に関する相続税は、次のようになっています。
遺贈だからといって、特別なことはありません。相続税の計算の流れは、通常の相続と同じです。他の相続人や受遺者が取得した財産といったん合算し、その合計額を基礎控除額と比較します。正味の遺産額が基礎控除額を超えると、相続税が生じます。
相続税には、税負担を軽くする制度がいくつかあります。大半は、受遺者が相続人であれば適用を受けられます。
例えば、遺贈を受けた人が被相続人の配偶者ならば、配偶者の税額軽減を受けられます。一定条件に該当する相続人ならば、障害者控除、未成年者控除、相次相続控除で節税できます。さらに、受遺者が一定条件に当てはまる親族なら、小規模宅地等の特例で敷地の評価額を下げることができます。
申告と納税の期限は、通常の相続と同じです。相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内となります。納税は原則として現金一括納付ですが、条件に合えば延納や物納も可能です。
遺贈を受けた人が相続人以外のときは、注意した方がよいかもしれません。受遺者が被相続人との血縁関係がない、あるいは血縁関係の薄い人だと、納税額が増えるからです。遺言で財産をもらった人が孫や友人、内縁の妻ならば、次の点を押さえておきましょう。
相続税には、遺族の生活保障という観点から、「基礎控除」「死亡保険金・死亡退職金の非課税枠」など、一定額まで非課税となる制度が設けられています。計算式はそれぞれ、次のようになっています。
【基礎控除額】3000万円+600万円×法定相続人の数
【死亡保険金・死亡退職金の非課税枠】500万円×法定相続人の数
この計算における「法定相続人」は、民法で定められた相続人のことです。相続人でない人は、遺言で贈与を受けても、基礎控除額や非課税枠の計算には含めません。故人の法定相続人となるべき人が1人もいない中、友人1人が財産をすべて遺贈で受け取ったら、基礎控除額は3000万円となります。
財産を取得した人が「被相続人の配偶者と一親等の親族(子どもと両親)」以外だと、相続税は2割増しになります。孫や兄弟姉妹、友人が受遺者のときは、納税額に注意しなくてはなりません。
ただし、代襲相続をした孫の相続税は2割増しにはなりません。既に亡くなった子の相続人の地位を引き継いでいるからです。
故人の財産を取得すると、亡くなった人の借金や未払費用、そして葬式費用を財産額から差し引くことができます。これは相続だけでなく遺贈でも同じです。ただし条件があります。それは「包括遺贈であること」です。つまり、財産の全部あるいは一定の割合分の遺贈であれば債務や葬式費用を差し引くことができます。
一方、「Aの土地を〇〇に遺贈する」といった特定遺贈で財産をもらったのなら、債務や葬式費用を差し引くことはできません。
相続人が死亡保険金を受け取っても、既述の非課税枠「500万円×法定相続人の数」までは課税されません。しかし、相続人以外の人が受け取った死亡保険金には全額、相続税がかかります。非課税枠を使えるのは、財産を相続した相続人だけです。
相続財産を取得した人が未成年や障害者に該当したり、あるいは過去10年以内に生じた相続で相続税を納めていたりすると、相続税から一定額を差し引けます。ただし、対象者は相続人だけです。相続人以外の人が遺贈で財産を取得しても、こういった控除を適用できません。
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相続の相談が出来る税理士を探す遺贈には他にも注意すべき点があります。
まず「不動産取得税」です。購入や贈与などで不動産を取得すると、不動産取得税がかかります。しかし、相続や包括遺贈で取得すると非課税です。ただ、相続人以外の人が特定遺贈で不動産を取得すると、不動産取得税がかかります。財産を取得した人の立場や取得形態には、注意が必要です。
次に「納税資金」です。遺言書の内容は、財産の持ち主が亡くなった後に開封されます。受遺者側からすれば、ある日突然多額の財産を受け取ることになるわけです。人によっては納税資金の準備ができておらず、困惑することもあるかもしれません。
遺贈放棄をすれば済む話ですが、遺贈を受けたいケースもあるでしょう。「前からあの土地が欲しかったから遺贈は受けたい。でも相続税が重い」といった場合は、資金繰りで苦慮する可能性があります。
遺言で取得した財産に相続税が生じると分かったら、10か月という短期間に申告と納税を済ませなくてはなりません。残念ながら、受遺者が相続人以外だと、高い相続税がかかりがちです。
ただ、税理士に頼めば、大変な申告作業から解放されるだけでなく、何らかの対策を考えてもらえるかもしれません。遺贈で悩んだら、なるべく早く税理士に相談することをお勧めします。
(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています。)
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