目次

  1. 1. 生前贈与の申告と期限
  2. 2. 申告する必要があるのはどんな場合?
  3. 3. 必要があるのに申告しなかった場合の追徴税
  4. 4. 時効を利用し納税を免れようとするのはハイリスク

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個人が財産の贈与を受けた場合にかかる税金が贈与税です。申告が必要になる具体的なケースは後ほど説明しますが、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日(休日の場合は翌日、以下同じ)が贈与税の申告・納税期間となります。贈与税は、1月1日から12月31日の1年間に受けた贈与額をベースとして、「暦年課税」と「相続時精算課税」のいずれかの方式によって計算されます。このうち原則的な方式が暦年課税であり、60歳以上の両親や祖父母から18歳以上の子や孫が贈与を受ける場合などに限って、相続時精算課税を選択することができます。

申告や納税の期限に遅れると、後ほど解説する追徴税の問題が生じますが、相続時精算課税を選択する場合はとくに申告期限に注意が必要です。相続時精算課税を利用するには、原則として申告期限までに、贈与税の申告書とともに、「相続時精算課税選択届出書」(以下「届出書」)という書面を提出しなくてはなりません。この届出書は、「この贈与者(特定贈与者)からの贈与は相続時精算課税の適用を受ける」ということを申請するものです。届出書を提出すると、指定した特定贈与者からの贈与については、相続時精算課税により贈与税が計算されるという仕組みになっています。

相続時精算課税を利用するつもりで贈与を受けたにもかかわらず、提出期限までに届出書を提出できなかった場合、相続時精算課税制度の適用は受けることはできません。そうすると、暦年課税で贈与税を計算するほかなく、贈与額によっては贈与税の負担が増えてしまうのです。

贈与税の申告の要否は、「暦年課税」と「相続時精算課税」のいずれの方式を選択するかによって変わります。暦年贈与の場合、個人が1年間に受けた贈与の合計が110万円以下であれば申告をする必要はありません。110万円超の贈与を受けたら、期限内に贈与税の申告をしてください。ただし、配偶者控除や住宅取得資金贈与の特例を利用する場合、特例により贈与税額がゼロになったとしても贈与税の申告は必要です。配偶者控除であれば婚姻関係を示す戸籍謄本など、住宅取得資金贈与の特例であれば住宅の登記事項証明書など、所定の必要書類とともに、期限内に贈与税の申告をしなくてはいけません。

相続時精算課税の方式を選択した場合についても、必ず贈与税の申告が必要です。相続時精算課税を適用しようとする初年度に期限内申告と届出書の作成が必要と説明しましたが、翌年以降に特定贈与者から贈与を受けたときも、その都度、贈与税の期限内申告が求められます。相続時精算課税には、特定贈与者からの贈与に対して2500万円の特別控除が設けられていますが、この特別控除を使ううえで期限内申告が条件だからです。

なお、暦年課税から相続時精算課税に切り替えることは可能ですが、ひとたび届出書を提出すると、その特定贈与者から贈与について暦年課税に切り替えることはできません。「今年の贈与は110万円以内だから、相続時精算課税から暦年課税に切り替えて申告を避ける」といったことはできないのです。

贈与税の申告・納税期限に遅れると、追徴税が加算される可能性があります。追徴税の内訳を簡単に説明すると、以下のとおりです。

無申告加算税:申告期限までに申告書を提出しなかった場合
過少申告加算税:期限内に申告した税額が過少だった場合
重加算税:事実を仮想隠蔽して過少申告や無申告をした場合
延滞税:納税が遅れた場合

追徴税の負担を避けるには、申告を忘れていたとしても、気づいたら早めに申告をすることが大切です。自ら期限後に正しく申告を行った場合の無申告加算税の税率は5%ですが、税務調査を受けて申告をした場合は税率が15〜20%に跳ね上がります。また、延滞税についても、期限から遅れた日数に応じて増えるしくみになっていますので、納税もできる限り早く済ませるようにしましょう。

なお、申告は期限内にできても、納税が難しいという場合もあるかもしれません。現金や預金の贈与を受けた場合は、その資金から納税をすることができますが、贈与されたのが不動産であれば、別途現金を用意しなくてはなりません。もし、贈与税の期限内納付が難しいのであれば、「延納」を検討することをお勧めします。延納とは、納税を先延ばしにできる制度で、以下の条件をすべて満たした場合に限って利用できます。延納を利用すると「利子税」が加算されますが、利子税の税率は延滞税よりも低く設定されています。

【延納の利用条件】
・税額が10万円を超えること。
・金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
・延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。
※ 延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
・延納申請に係る相続税の納期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。

最後に、贈与税の時効について簡単に説明します。贈与税の時効は原則として6年ですが、時効の到来を待って申告や納税を免れようとするのはハイリスクです。税務調査により贈与税の課税処分が行われる可能性がありますし、6年以上前の贈与が正当に成立していたことを示せなければ、「贈与がそもそも成立していない=贈与者の財産」として贈与者が死亡したときに相続税の対象になることも考えられます。期限内に贈与税の申告をすることを念頭に置きつつ、贈与は慎重に行うようにしましょう。

(記事は2022年8月1日時点の情報に基づいています)

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