目次

  1. 1. 不動産を売却すると税負担が重くなる
  2. 2. 譲渡所得にかかる所得税・住民税の計算方法
  3. 3. ふるさと納税を利用した節税の注意点
  4. 4. まとめ|節税策は税理士に相談を

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まずは、不動産を売却したときの税金の仕組みを見ていきましょう。不動産を売却したときの利益は「譲渡所得」と言い、所得税や住民税の対象です。この譲渡所得は、次の式で計算します。

譲渡所得=譲渡対価-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

譲渡対価は不動産の売却で買主から受け取ったお金です。売却代金だけでなく、固定資産税の精算金も含めます。取得費には、売却した不動産の取得価額の他、不動産取得税や登録免許税といった購入時に支払った税金、仲介手数料、測量費や整地費用といった取得にかかった費用が該当します。譲渡費用は、不動産の売却のときにかかった費用です。仲介手数料、印紙税や立退料、建物の取り壊し費用などが対象となります。特別控除額は、故人が終の棲家としていた空き家を売却したなど、一定要件に該当した時に差し引く金額です。適用するときは、要件を慎重に確認しなくてはなりません。

不動産の売却益への課税は、他の給与所得や一時所得、雑所得と分けて税率を乗じます。これを「分離課税」といいます。税率は、売却する年の1月1日時点での所有期間に応じ、次のように変わります。

5年以下…39.63%(所得税率30.63%、住民税率9%)
5年超…20.315%(所得税率15.315%、住民税率5%)

総合課税の対象となる所得額が少ないと、分離課税となる所得から色々な所得控除を差し引きます。この譲渡所得も所得控除の対象です。なお、相続した不動産を売却するときは、被相続人が購入した時点から所有期間を数えます。亡くなる間際に購入したのでなければ、多くは「5年超所有」になるはずです。売却した不動産が相続したものだと、正確な取得費が分からないことがあります。このようなケースでは、「譲渡対価×5%」を取得費として計上します。

不動産の売却益は数百万、数千万に上ります。そのため、売却した翌年はたいてい、所得税や住民税が高くなります。しかし、上がるのは税金だけではありません。国民健康保険、保育料、後期高齢者医療保険料のような公的負担も高くなります。こういった地方自治体の公的サービスに伴うものは、住民税の所得金額を基準に計算されます。そのため、売却による実際の負担は「売却益×税率」以上なのです。この他、高額療養費の自己負担額が増える、児童手当や就学援助、シルバーパスが使えなくなることもあります。

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生活に大きな影響を与える譲渡所得ですが、ふるさと納税を活用すれば負担を減らせます。ふるさと納税は、現在住んでいる場所以外の自治体にも寄附ができる制度です。所得税は所得控除、住民税は税額控除で「寄附額-2000円」を節税できる他、返礼品で地方の特産品をもらえます。

手っ取り早く節税したいなら、ふるさと納税はぴったりです。他の制度と違い、細かい条件を気にしなくていいからです。相続した不動産の売却益にかかる税金を抑える方法には、「空き家の3000万円控除」「取得費加算の特例」があります。これらは節税効果が高い反面、売却時期や相続税の有無など厳しい条件が付されています。条件に当てはまるかどうかを一般の方で判別するのも難しいものです。しかし、ふるさと納税は、寄附さえすれば納税額を抑えられます。

ふるさと納税は手軽な節税策ですが、次のような注意点があります。

■ふるさと納税は「年」「人」「利益」に注意
ふるさと納税は寄附するタイミングや寄附する人に注意しないと、節税できずに終わってしまいます。まずタイミングです。売却した年と同じ年にふるさと納税をしなくてはなりません。売却した年の翌年にふるさと納税をすると、寄付した金額を譲渡所得から差し引けなくなるのです。また、不動産を売却した人の名義でふるさと納税をしないと節税できません。売却した人の配偶者や子ども、親の名義で寄附しても控除できないのです。ふるさと納税で節税するなら、売却は年末を避けた方がよいでしょう。11月や12月になると、売却益や寄附額の目安を計算したり、ふるさと納税を実行したりする余裕がほとんどありません。

■返礼品が50万円超だと一時所得で課税に
ふるさと納税で受け取る返礼品は、一時所得として課税の対象です。返礼品の総額が50万円を超えると所得額が生じるので、所得税や住民税が増えます。たくさんの返礼品を受け取るときは要注意です。

■資金繰りに要注意
ふるさと納税で節税するということは、多額の現金を支出するということです。「節税」の2文字にとらわれると、お金を使いすぎるおそれがあります。寄附するときは、毎月の生活費や事業費を確保してからにしましょう。

■控除上限額に注意
ふるさと納税での控除には、上限額があります。所得税では「総所得金額等×40%」、住民税の基本分では「総所得金額等×30%」が上限です。上限額を超えて寄附をすると節税効果はなくなり、「高いお金で返礼品を買っているだけ」の状態になります。寄附しすぎには注意しましょう。

■シミュレーションは目安と割り切る
多くのポータルサイトでは、寄付しすぎて損をしないよう、寄附の上限額を試算できるようになっています。ただし、1円単位まで正確に計算することは困難です。シミュレーションサイトで計算した上限額は目安だと割り切りましょう。

■ワンストップ特例使っても確定申告を
ふるさと納税でワンストップ特例を利用する人が増えました。ただし、何らかの事情で確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。節税効果を活かすなら、ふるさと納税も同時に申告しなくてはなりません。ワンストップ特例を使った方は、「譲渡所得と一緒にふるさと納税も確定申告する」と意識しておきましょう。

ふるさと納税は誰もが利用しやすいシンプルな節税策です。しかし、納税額をゼロにはできません。納税額を大きく抑えたいなら、空き家の3000万円控除や取得費加算の特例の方が向いています。ただし、既述の通り、注意すべき点が多々あるのも事実です。
自分に合った節税策を知りたいのなら、税理士に相談するとよいでしょう。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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