目次

  1. 1. 不動産を売却したらかかる税金は3つ
  2. 2. 税金をシミュレーションしてみる
  3. 3. 税金の申告は早めに税理士に相談を

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具体的な税金シミュレーションの前に、不動産を売却した場合に係る税金である印紙税、譲渡所得税及び住民税の3つについてそれぞれ簡単に解説します。

・印紙税
印紙税は、不動産売買契約書作成時にかかる税金です。税額は下表の通り、契約書に記載された契約金額に応じて段階的に税額が増えていく仕組みになっています。

※国税庁HP「タックスアンサーNo.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」より抜粋

例えば、相続した不動産の売買契約(売買代金4000万円)を締結し、契約書を作成した場合、印紙税1万円がかかります。なお、印紙税は、金融機関等で納税するものではなく、郵便局等で購入した印紙を契約書に貼り、消印することで納税したことになります。貼り付けて消印するのは、印紙の再使用を防止するためです。

・譲渡所得税及び住民税
譲渡所得税及び住民税は、不動産を売却して売却益が出た場合にかかる税金です。これら税金の計算体系は下図の通りです。

譲渡所得税及び住民税の計算体系イメージ

①収入金額
収入金額は、基本的には不動産売買契約書の売買代金です。ただし、別途買主から支払われる未経過固定資産税・都市計画税の精算金があればそれを加える必要があります。

②取得費
相続した土地の取得費は、被相続人が支払った購入代金や購入手数料等に、相続人が相続した際に支払った登記費用、登録免許税等を加算した額になります。相続した建物も基本的な考え方は土地と同じです。ただし、土地と異なり、取得費の計算上、減価償却費相当額(建物の経年減価相当額)を計算して控除する必要があります。

以下のようなケースでは、収入金額の5%相当額を取得費とすることができます。実務上これを「概算取得費」と呼びます。

  • 相続した不動産が先祖代々のもので、実際の取得費が不明なケース
  • 実際の取得費<概算取得費(収入金額×5%)で概算取得費の方が税務上有利なケース

相続した不動産を、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(通常、死亡した日から3年10カ月)までに売却した場合、相続税額のうち一定の方法により計算した金額を取得費に加算することができます。実務上これを「相続税の取得費加算」と呼びます。

③譲渡費用
譲渡費用は、不動産を売却するために直接要した費用で、仲介手数料、登記費用、測量費、印紙税等が挙げられます。なお、古家を取壊して更地として売却する場合の建物の取壊し費用や借家人を立ち退かせるための立退料も譲渡費用に含まれます。

④特別控除
相続した不動産を売却した際に適用できる可能性がある特別控除の1つとして「空き家譲渡の3000万円控除」があります(適用要件等の詳細は以下国税庁HPリンク参照)。なお、「空き家譲渡の3000万円控除」と先にご紹介した「相続税の取得費加算」は重複適用できませんので注意が必要です。(参考:国税庁HPタックスアンサー「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

⑤譲渡所得に乗じる税率
税率は、不動産を売却した年の1月1日現在における所有期間によって以下の通り異なります。所有期間5年以下(短期)の方が5年超(長期)よりも税率が高いですが、これは平成初期のバブル期に「土地転がし」と呼ばれる投機的取引が増加したことを受け、こうした取引を防止するために短期の税率が高く設定されたのがルーツと言われています。

(注1)相続した不動産の場合、通常、被相続人が取得した日から所有期間をカウント。
(注2)所得税の2.1%である復興特別所得税は令和19年まで。

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以下、3つのケースごとに税金シミュレーションした結果をご紹介します。どのケースも相続人が相続により取得した実家(土地建物)に戻る気はなく売却を検討しており、建物が老朽化しているため取壊して更地として4000万円で売却する場合を想定しています。

■相続した不動産の実際の取得費が不明なケース
相続した不動産の実際の取得費が不明であり、「相続税の取得費加算」、及び、「空き家譲渡の3000万円控除」等の特別控除の適用は無い前提でシミュレーションした結果は下表の通りです。

■相続した不動産の実際の取得費が不明で「相続税の取得費加算」の適用ありのケース
相続した不動産の実際の取得費が不明であり、「相続税の取得費加算」の適用ありの前提でシミュレーションした結果は下表の通りです。なお、「空き家譲渡の3000万円控除」は「相続税の取得費加算」を適用する場合は適用できません。

■相続した不動産の実際の取得費が不明で「空き家譲渡の3000万円控除」の適用ありのケース
相続した不動産の実際の取得費が不明であり、「空き家譲渡の3000万円控除」の適用ありの前提でシミュレーションした結果は下表の通りです。なお、「相続税の取得費加算」は「空き家譲渡の3000万円控除」を適用する場合は適用できません。

税金シミュレーションの具体例を3つご紹介しましたが、相続した実家を更地化して売却するという前提が同じでも適用する特例が異なると税金が大きく異なるのがわかっていただけたかと思います。「相続税の取得費加算」や「空き家譲渡の3000万円控除」等の特例の適用に当たっては適用要件を1つ1つ慎重に判定する必要があり、実際の所得税確定申告書に特例適用に当たり必要な書類を添付しなければなりませんので、できるだけ早めに税理士に相談するのがよいでしょう。

(この記事は2021年3月1日現在の情報に基づきます)

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