目次

  1. 1. 教育資金の一括贈与とは
  2. 2. 制度の概要・注意点
    1. 2-1. 期間:2023年3月31日まで延長
    2. 2-2. 贈与を受ける人(受贈者)の要件
    3. 2-3. 贈与する人(贈与者)の要件
  3. 3. 「教育資金」とは?どんな教育資金が対象か
    1. 3-1. 学校などに対して直接支払うもの(1500万円まで非課税)
    2. 3-2. 学校以外へ支払うもの(500万円まで非課税)
    3. 3-3. 通常の贈与との違い
  4. 4. 手続きの流れ
    1. 4-1. 教育資金を孫へ贈与する
    2. 4-2. 学校等へ教育資金を支払う
    3. 4-3. 注意点
  5. 5. 暦年贈与とその他の制度の併用
  6. 6. まとめ

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「教育資金の一括贈与の特例」とは贈与税の特例制度で、祖父母から子どもや孫の世代へと教育のための資金を1人につき1,500万円まで非課税で贈与できるという制度です。

本来、他人に金銭を贈与した場合、1年間の非課税枠は110万円であり、また、相続するとなれば、多くの資産を保有している場合、相続税も多額となります。

しかし、「教育資金の一括贈与の特例」を利用すれば、1人につき1500万円まで非課税で子どもや孫に贈与できるため、相続税対策としても非常に有効な節税方法といえます。

教育資金の一括贈与の特例は2013年に創設されました。時限的な措置でしたが、2023年3月まで延長されました。

・30歳未満の子ども、孫であること
この特例により、贈与を受ける人の要件は、贈与を受ける時に30歳未満であることとされています。1人当たり1500万円までが非課税となるので、例えば、3人の孫に教育資金を一括贈与する場合は4500万円まで非課税となります。

・前年の所得が1000万円を超えないこと
贈与を受ける人の前年所得が1000万円を超えていると、その年に教育資金の贈与を受けてもこの特例の適用を受けることはできません。

贈与する人は直系尊属(祖父母や父母)であることが要件となっています。贈与する人の年齢はいくつであってもかまいません。贈与は複数回に分けて、数年に渡って贈与することも可能なので、子どもや孫の成長に合わせて贈与額を決めることができます。

幼稚園、小中高校、大学(院)、専修学校、認定こども園や保育所、外国の日本人学校や国内のインターナショナルスクール、外国人学校などに通う子どもの入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、入学試験の費用、学用品費、修学旅行費、給食費などが対象となります。

教育資金の一括贈与は1500万円まで非課税ですが、そのうち500万円までは学校以外の課外活動にかかる以下のような費用も、この特例制度の適用対象となります。

  • 学習塾やスイミングスクールなどの月謝
  • スポーツインストラクターやピアノ、絵画の講師へ支払う指導料
  • 上記で使用する物品の購入代金
  • 制服や体操着など学校が必要と認めたものの購入代金
  • 通学定期券、留学のための渡航費など

・親からの仕送りには贈与税はかからない
1人暮らしの大学生なら、親から仕送りをもらって生活している人はたくさんいます。入学金や授業料も親が払っているケースが多いでしょう。しかし、それら教育資金を受け取っている学生で、贈与税を納めた人はいないはずです。これは、通常の贈与においては、教育のための資金を必要な時にそのつど渡し、それを使いきっているのであれば、贈与税は非課税とされているからです。

・一括贈与と仕送りの違い
教育資金の一括贈与の特例制度との違いは、「必要な時にそのつど」の部分の違いといえます。通常の贈与では、教育のための資金を前もって一括で贈与することはできません。
教育資金の一括贈与の特例制度は、資金の渡し方と使い方について条件を緩和しているといえるでしょう。すぐに使う予定はないものの将来必要になると見込まれる教育資金を、前もって一括で贈与することができるという制度が「教育資金の一括贈与の特例制度」です。

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この制度を利用するためには、金融機関に教育資金口座を開設し、その金融機関を通じて「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。それでは、贈与者を祖父母、受贈者を孫として手続きの流れをみていきましょう。

  1. 贈与者(祖父母)と受贈者(孫)の間で、贈与契約書を交わす。
  2. 受贈者(孫)名義で金融機関に「教育資金口座」を開設する。
  3. 口座を開設した金融機関に「教育資金非課税申告書」を提出する。
    (「教育資金非課税申告書」を金融機関経由で、税務署に提出する)
  4. 贈与者が教育資金口座へ教育資金を入金する。

  1. 孫が授業料を支払い、領収書を受け取る。
  2. 教育資金口座を開設した金融機関へ領収書を提出し、教育資金口座からお金を引き出す。

教育資金を使った場合はそのつど、領収証を金融機関へ提出する必要があるので、きちんと保管してください。

教育資金の一括贈与の特例制度を利用して贈与を受けたものの、30歳の誕生日までにその教育資金を使い切れなかった場合、残った金額に対して贈与税がかかるため注意が必要です。

暦年贈与とは、1年間で110万円までの贈与が非課税となる制度です。教育資金の一括贈与の特例を利用しても、この暦年贈与は別枠でそのまま使えます。また、相続時精算課税制度の併用も可能となっています。

教育資金の一括贈与の特例は、とても利用しがいのある制度となっていますが、その手続きはやや複雑です。もし、興味があるのであれば、早めに税理士に相談することをおすすめします。お子さんやお孫さんの人数によっては、大きな節税対策となることでしょう。

(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)

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