違反建築物とは 法改正で後から違法になる建物も

「違反建築」と聞くと、所有者が故意に違反していると思うかもしれませんが、実際は本人が意図しないうちに違反建築物になってしまうこともあります。違反建築物になるケースは、大きく二つに分かれます。

一つ目は、法律を無視して、故意に、あるいはわざと違反であると知っていて建物を建てるケース。
二つ目は、法律の改正によって違法になってしまうケースです。

一つ目は、建築してはいけない建物と知っていて故意に建築してしまうので、論外ですが、問題は二つ目の所有者本人が意図しないうちに違反建築になってしまうケースです。こちらを中心に説明していきましょう。

本来適法に建築された建物が、その後の法改正によって違反建築となる建築物を「既存不適格建築物」と言います。既存不適格建築物とは、法律の改正により新しくなった基準に合わなくなってしまった建物のことです。つまり、すでに建っている建物が、改正後の基準に適合しなくなったということです。ここで言う法律とは建築基準法のことで、これに抵触する建物は建てることができません。後ほど触れます。

では、何故、「既存不適格建築物」になるのでしょうか?
建築基準法に限らず、日本の法律ですが、古くは明治時代に作られたもので、その当時と比べて現在社会にはその適用がそぐわなくなり、改正の必要が求められる場合があります。例えば最近の改正例で言えば、40年ぶりに改正された民法やあおり運転の罰則が創設された道路交通法などです。

建築基準法が改正されるのは、「阪神淡路大震災」のような大地震や、耐震偽装事件のような建築物に関連する大きな出来事や問題があった後に改正されることがあります。大地震が発生すると、古くからの建物には崩壊が起こりやすくなります。日本は地震大国なので、今後に備えるためにも今まで以上に強固な建物を建てることがどうしても強いられます。

法の改正があった場合、それ以降は新基準を満たさない建物を建てることが出来なくなります。また、古くからの建物を新基準に適合するように建て直すことはすぐには無理なので、どうしても既存不適格の違反建築になってしまいます。故意ではないので「既存不適格建築物」と表現するようになった訳です。
よって、「違反建築」のすべてが悪とは限らないのです。

既存不適格建築物以外で違反になる物とは

答えは「建築基準法」の内容に反しているからです。

それでは、「建築基準法」の主な内容を見ていきましょう。

1、接道義務

建物を建てるにはその土地が4m以上の道路に最低2m以上接していること。
この義務を課す理由の一つは、火災が発生した時等に緊急車両が通行できるようにするためです。

2、建蔽率(建ぺい率)

建物を建てる土地の面積に対する建物面積の割合のことです。イメージとして建物を宙に浮かせて屋根を取り外して真上から光を当てると地面に影が出来ます。この影が土地に対して何%なのか。ということです。

3、容積率

建物を建てる土地の面積に対する建物の延べ床面積の割合のことです。現在社会においては戸建てであれば2階建てや3階建てが一般的です。その延べ床面積が土地に対して何%なのか。ということです。

建蔽率と容積率はまとめて考えたい内容です。建蔽率60/容積率200と表現をすることがあります。この数字は行政によって決まっています。

例えば、土地面積が100㎡で建蔽率60% 容積率200%の場合を見てみましょう。
建蔽率は土地面積が100㎡なので建築できる建物面積は60㎡が最大です。
容積率は土地面積が100㎡なので建築できる延べ床面積は200㎡が最大です。
但し、注意点として容積率は接道している前面道路の幅も影響してきます。

4、斜線制限

建物を建てることによって、隣人の日照や採光や通風などの環境の最低限を保つためのルールです。細かくは隣地斜線制限・道路斜線制限・北側斜線制限に分かれます。例えば、街中にあるマンションを見ると、ある高さより上の階から階段状になっていたり、戸建て住宅でも北側の屋根に傾斜があったりする建物がありますが、まさにこの制限によるものです。

代表的なものを四つ説明しましたが、これらをはじめとするものに違反が無ければ、「検査済証」として書類が交付されます。「検査済証」とは建築確認、中間検査、完了検査の3つ検査が法律で決められており、計画通りになっていれば検査済証として書類が交付されます。

違反建築物を相続したら

違反建築かどうかは、「検査済証」の有無で確認できます。ただし、相続した建物が建った時は10年~30年前の建物である可能性もあり「既存不適格建築物」になっているかも知れません。再度の繰り返しになりますが、「既存不適格建築物」は違反建築ではありません。
「検査済証」が見つからない時は建物のある住所地の役所に出向いてみてください。「建築台帳」がありますので、記載があれば検査済証に代わる証明書を発行してもらえます。ただし、かなり古い建物に関しては、再発行が無理な場合もあるようです。

違反建築物かどうかの調査は役所に出向き、色々な管轄の部署で調べることになります。例えば、接道する道路であれば道路課であったり、建蔽・容積率などは建築指導課などです。ご自身での調査は結構な労力がかかりますので、有料になりますが、建築士にお願いするのもよいかと思います。

相続によって違反建築物を取得した場合、新たな所有者が違反を是正しなくてはならず、放置しておくと使用禁止になったり、罰金刑などの処分を受けることもあります。

違反建築物は売却できるのか?

違反建築物を相続した場合、売却することはできるのでしょうか。売却の相談は不動産業者に依頼することになるかと思います。不動産仲介業者は、買主に対して「重要事項説明書」の書類を発行しなければならず、これは不動産の調査の内容を記載するものです。違反内容があれば、そのことを明記する必要があります。となると、違反建築物を購入しようとする買主は少ないのではないでしょうか。

ではどうすればよいのでしょうか?
例えば、築年数が浅く建蔽・容積率のオーバーのものであれば、減築やリフォームをして違反建築を是正してから売却をすることを検討します。あるいは、築年数が経過しているものであれば、解体して更地で売却するのも一つの手です。注意点として「更地にしてしまえば違反建築物ではなくなる」というものではなく、土地そのものが「再建築不可」に該当する場合には更地にしてしまうと、今後、建物が建てられず、売却できる見込みは少なくなりますのでご注意ください。
ただ、やはり違反建築物の売却は、なかなか難しいと考えた方がよいでしょう。
その理由は大きく二つあります。

1、買主が住宅ローンをくめない

手持ち現金で購入できる方以外の多くは、金融機関からの融資となります。融資条件としては建築基準法に適合している建築物が対象になるので、購入物件が違反建築の場合融資の許可が出ません。

2、違反は買主にも及ぶ

違反状態の是正義務は新たな所有者になります。是正義務のある不動産を買おうとする人は少ないと考えたほうがいいでしょう。

違反建築物を売却するためには多額の費用を捻出して違反状態を解消する必要があります。古い建物を相続した場合は、違反建築物にあたらないかどうか確かめてみるといいでしょう。

(記事は2020年10月1日時点の情報に基づいています)