相続した実家が「再建築不可物件」かも? 調べ方と対応策
あなたが相続した実家が、建築基準法の要件を満たしていない「再建築不可」と判断されてしまったら? そうなった場合、売却や建て直し、安全面などさまざまなデメリットが生じることになります。まずは物件の確認が大切です。住宅問題に詳しいファイナンシャル・プランナーが解説します。
あなたが相続した実家が、建築基準法の要件を満たしていない「再建築不可」と判断されてしまったら? そうなった場合、売却や建て直し、安全面などさまざまなデメリットが生じることになります。まずは物件の確認が大切です。住宅問題に詳しいファイナンシャル・プランナーが解説します。
「再建築不可」の物件とは、ひとことで言えば、建て替えができない物件のことを指します。再建築不可とされてしまう要因にはさまざまなものがありますが、主な要因として挙げられるのが、建築基準法上の「接道義務」を満たしていないケースです。
建築基準法では、第42条と第43条に「道路」に関する規定と、「接道義務」に関する規定があります。建築基準法上の道路というのは、原則として幅員(道路の幅)が4メートル以上のものをいいます。4メートル未満の場合は道路と認められないということです。そして、建築物を建てる土地は、幅員4メートル以上の道路に、2メートル以上接していなければならない、という決まりが接道義務です。
なぜ4メートルと2メートルなのかというと、筆者が20年以上前に不動産の勉強をしたときに教えてくださった先生曰く「道路に駐車車両が1台あったとしても、消防車や救急車などの緊急車両が問題なく通ることができるのが4メートルで、消防隊員やタンカなどが問題なくすれ違うことができるのが2メートルだから」だったようです。つまり、この接道義務を満たしていない土地に建物を建ててしまうと、万一火災などが起きたときに、消火活動や救助活動がスムーズに行うことができない可能性がある。だから、建物を建ててはいけないという規定なのです。
しかし、都心の古くからある町並みを歩いていると、車が1台ギリギリ通れるかどうかという細い道の両側に、たくさんの家が建ち並んでいるのを見つけることができます。幅員4メートル未満だと、道路とは認められない。道路ではない道に建物が建っている。建築基準法上はありえないことになります。これは、建築基準法ができた1950年(昭和25年)以前から町並みができていた幅員4メートル未満の道路で、特定行政庁が指定したものは特別に道路とみなすことにしたからです。
この規定が建築基準法第42条2項にあることから、これに該当する幅員4メートル未満の道路は、俗に「2項道路」と呼ばれています。2項道路に面した土地の建物を建て替える際には、「セットバック」をしなければならないことになっています。セットバックとは、道路の中心線から2メートル下がったところを、土地と道路との境界線にしなければならない決まりです(道路の反対側が川や崖などの場合は、道路の反対側の端から4メートル下がったところとなります)。
なので、古くからある細い道の町並みを注意深く見ながら歩いていると、新しい家が建っている部分だけ、土地が少し凹んでいて道が広くなっていることに気づくことができます。それがセットバックです。いずれ古い町並みの家々が取り壊されて、新しい家が建ち並ぶころには、道の両側の土地のすべてがセットバックされ、自然に幅員4メートルの道路が完成するという仕組みなのです。
相続した実家が「再建築不可」とされてしまう場合のデメリットはというと、老朽化した建物を取り壊して、新たに建物を建てることができない点が最も大きなものでしょう。再建築が不可能な土地なので、売却しようと思っても、なかなか買い手がつかないかもしれませんし、売れたとしても近隣の相場に比べて大幅に安い価格でしか売れないかもしれない点もデメリットになるでしょう。また、接道義務を満たしていない土地に建っている建物だとすると、その家に移り住むとした場合、万一の火災や地震などの災害が起きた際に、通常の消火活動や救助活動を受けられない可能性がある点も大きなデメリットと言えるでしょう。
再建築不可かどうかを確かめる方法は、その土地の所在する市町村役場の建築関係の部署に聞きに行くのが一番です。聞きに行く際には、事前に法務局(登記所)で、登記事項証明書や公図、地積測量図、建物図面などを手に入れてから行くと、スムーズに確認作業が進むと思います。まずは電話でもけっこうですので、その土地のある市区町村役場に連絡をして、再建築不可かどうかの確認がしたいことを伝え、必要書類などを確認してから訪問するとよいでしょう。
再建築不可の物件を相続した場合の対応策は、その土地の状況によって異なります。
まず、すべてのケースに共通する対応策としては、リフォームやリノベーションをして貸し出すことなどは可能だということです。建て替えや増改築はできませんが、リフォームやリノベで魅力ある物件に変えることができれば、家賃収入を期待できる物件にできるかもしれません。それから、2項道路(幅員4メートル未満の道路)に面している土地の場合は、セットバックをすれば建て替えも可能なので、セットバックの費用はかかるでしょうが、建て替えが容易な分、売却もしやすいと考えられます。なお、セットバックの費用は、自治体によっては補助が出る場合もあります。
一方、完全に道路から離れている土地で、道路から土地までの通路の幅が2メートルよりも狭い場合や、隣の土地のなかを通行しないと土地にたどり着けないような場合は、隣の土地の一部の買い取りを交渉するという方法があります。交渉が成立し、買い取ることができれば、接道義務を満たし、建て替えが可能になるかもしれません。
なお、自治体によっては、条例によって再建築が可能になる要件を緩和しているケースもあるようなので、まずはその土地の所在する自治体に問い合わせてみましょう。再建築不可物件を売却するには、専門的な知識や経験を持っていてノウハウも蓄積している業者だと、スムースに進む可能性もあります。まずは、一度、相談することをお勧めします
(記事は2020年9月1日現在の情報に基づきます)
クランピーリアルエステートは、底地や共有持分、再建築不可物件といった、いわゆる訳あり物件を専門的に取り扱う不動産企業。これまでに培ったノウハウと、不動産専門の弁護士や税理士などの全国ネットワークを活かし、問題を解決します。
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