ビットコインは相続できる? 故人の「仮想通貨」資産を見つけ出して引き取る方法
近年ニュースでもよく聞く「仮想通貨」は、日本国内でも徐々に普及し、いまや相続税の対象にもなる、一つの資産形態になりつつあります。故人の仮想通貨の財産をいかに探し当て、遺族が引き取れるようにできるのか。専門ライターの古田雄介さんが解説します。
近年ニュースでもよく聞く「仮想通貨」は、日本国内でも徐々に普及し、いまや相続税の対象にもなる、一つの資産形態になりつつあります。故人の仮想通貨の財産をいかに探し当て、遺族が引き取れるようにできるのか。専門ライターの古田雄介さんが解説します。
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「相続会議」の税理士検索サービスで
今回は、関東で暮らしている70代女性からのご相談です。
「過日、夫が急死したため遺産について調べています。
夫は財テクも私にオープンにしていたのであらかた掴めましたが、ビットコインという仮想通貨の所在だけはよくわかりません。
口ぶりからかつて所持していたことは確実なのですが、現状どうなっているのかさっぱり分からず。果たして相続対象となるのかも判断がつきません。
どうかご助言をよろしくお願いします」
デジタルの金融資産についてのご相談は、「スマホのロックが開けない」に次いで多くいただく内容になります。そのなかでも、最近は「仮想通貨」について尋ねられる頻度が高くなっていると感じています(持ち主の方からの相談が大多数ですが)。
仮想通貨とは、現在は暗号資産と呼ばれている金融資産です。ビットコインはその代表例ともいえる存在。ほかにもイーサリアムやモナコインなど様々な種類があります。
どこかの国の中央銀行が管理・発行している通貨ではなく、オンライン上で多くの人や端末を介して分散管理されているので、なかなか実態が掴みにくいところがあります。それでいて、国内においては資金決済法で通貨に近い性質を持つものと提示されており、相続税の対象にもなる資産とみなされる側面も有しています。
2009年に生まれたばかりの若い資産ということもあって銀行預金や有価証券と比べて相続に関する整備が追いついていないところも多いです。しかし、いざ相続となったら捨て置けない資産であることには変わりありません。
ですから、故人が暗号資産を扱っていた見込みが高いのなら、他の金融資産と同じように、どこにどれだけ所持しているのか調べる必要があると考えてください。
暗号資産の取得にはいくつかの道筋があります。
もっともメジャーなのは、暗号資産取引所を介する方法です。FX会社やネット証券のように、好みの暗号資産を自由に売買して運用できます。「財テク」の一環として所持しているなら、もっとも手軽なこの方法を利用している見込みが高いです。
財産調査もFXや有価証券を探す流れとほとんど変わりません。故人のスマホに暗号資産取引所のアプリや暗号資産管理アプリがあれば、そのユーザーページを調べましょう。電子メールや郵送物で契約や売買の履歴が残されていることもあるので、パソコンや重要書類入れなどをチェックすることも有効です。
ほかには、暗号資産の運用を手伝うことで対価として暗号資産を得る方法もあります。俗にマイニング(採掘)と呼ばれる方法で、パソコン等を使って高負荷な処理をこなすことで取得できます。また、個人間取引で物々交換のように他のユーザーから暗号資産を購入するという方法もあります。
いずれも、暗号資産の仕組みをより深く理解し、自分自身で暗号資産を管理・運用することになるため、財テク以外に必要なスキルが増えてしまいます。今回のケースを考えると、マイニングと個人間取引の手法はとりあえず後回しにしてよさそうです。
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相続の相談が出来る税理士を探すでは前者の取引所を調べる方法に戻ります。
亡くなった家族が使っていた取引所が分かったら、そのホームページにアクセスして、サポートメニューやサポート電話などを頼りに相続手続きを調べます。サポートメニューでは「相続」「相続手続き」「死亡した場合」などのキーワードで検索すると見つけやすいです。
国内の多くの暗号資産取引所は、金融庁に「暗号資産交換業者」として登録しており、国税庁が作成した暗号資産の相続手続きのガイドラインに沿って対応してくれます。
具体的には下記の4ステップを踏むことになります。
1.代表相続人が所定の書類(契約者の除籍謄本と代表相続人の本人、手続き申請書類など)を揃えて取引所に提出。
2.取引所が代表相続人に残高証明書などを送る。
3.代表相続人が書類に沿って相続人全員の同意を示したうえで、相続の意向を取引所に伝える。
4.相続する場合は、残高が日本円に換算されて、代表相続人の指定口座に振り込まれる。
暗号資産の換算は契約者の死亡日のレートに基づくことが多いですが、ニッチな通貨の場合は個別に検討する流れになります。ガイドラインが発表された2018年11月以降、こうした相続手続きはじわじわと広がっており、ある有力取引所は「ここ数ヶ月は月間5~7件程度で推移しています」と話していました(2019年10月時点)。
金融庁登録の取引所なら以上のプロセスで相続できますが、海外を含む非登録の取引所の場合は相続の枠組みが未整備であるケースも多く、知識のない状態から対応するのはかなり難しくなるでしょう。マイニングや個人間取引の場合も同様です。
そうした場合は、暗号資産やデジタルに詳しい士業に相談するのがベターです。
今回のように、何も言わずに暗号資産を残していると多くの遺族が困惑してしまうと思います。暗号資産を扱っている方は、いざというときに利用している取引所や所持しているコインの情報などが家族に伝わるように備えておくことを強くお勧めします。
たとえヘソクリであっても、です。
前回は故人の「ネットバンク」口座追跡について書きました。今後もこちらのコラムで、デジタルの遺品や相続にまつわる疑問や不安にお応えしていきます。
(記事は2020年5月1日時点の情報に基づいています)