家族信託の相談は誰にするのがいい? 詳しい専門家や気になる費用の解説も

家族信託について相談したい場合、誰に相談するのがいいのでしょうか。詳しい専門家を適切に選ぶ方法や、相談した場合にかかる費用、相談をした後の家族信託の流れなどをご紹介します。
家族信託について相談したい場合、誰に相談するのがいいのでしょうか。詳しい専門家を適切に選ぶ方法や、相談した場合にかかる費用、相談をした後の家族信託の流れなどをご紹介します。
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家族信託の相談先として第一候補に挙がるのが、弁護士や司法書士などの法律の専門家です。
家族信託は、比較的新しい財産管理手段です。そのため、家族信託の運用に活用できる判例などが出そろっておらず、将来的なトラブルを予測しにくい状況にあります。そんな中でも弁護士や司法書士に相談すれば、家族信託手続きをスムーズに進めることができるでしょう。ここからは、家族信託を士業に相談するメリットを紹介します。
家族信託の相談相手として弁護士や司法書士をすすめる理由はいくつかあります。
特に、信託財産に不動産が含まれている場合は、「信託登記」の申請が必須です。司法書士は登記の専門家のため、司法書士に家族信託を相談すれば、信託契約の内容の相談と調整だけでなく、不動産の信託登記申請手続までまとめて依頼できます。
家族信託は新しい仕組みだからこそ、前例があまりありません。そのため、常に最新の情報を仕入れて信託契約に反映させることが、失敗しないために不可欠です。弁護士や司法書士は、自分たちの業務に関わる法制度を常にチェックし、知識をアップデートしています。信託契約の前段階からアフターフォローまで抜かりのないサポートを求めるなら、弁護士や司法書士に相談すると良いでしょう。
すべての弁護士や司法書士が家族信託に精通しているわけではありません。ここからは、家族信託を安心して相談できる専門家を見きわめるためのチェックポイントを紹介します。
第一に家族信託の取扱件数をチェックしましょう。相談相手となる士業の経験が多ければ多いほど、家族信託を相談したときの安心度や安定感も高くなります。
家族信託が注目され始めたのは最近のことで、実際に相談を受けて対応している士業は全体からみると多くありません。相談する士業に迷っているなら、まずは家族信託の相談実績等を問い合わせてはいかがでしょうか。
家族信託に強い士業をみきわめるポイントの2つ目が、「専門性の高さ」です。士業が取り扱う業務は幅広いため、事務所ごとに得意とする専門分野が異なります。体の不調の原因によって診てもらうべき専門医が異なるように、家族信託の相談は家族信託を専門に取り扱っている事務所への相談がベストです。
家族信託に対する専門性の高さを明確に判断するには、「著書本の有無」を確かめましょう。第一人者として活躍している専門家は、家族信託に関する書籍を出版している傾向にあります。また資格「家族信託専門士」の所持もポイントです。家族信託専門士の資格を持っていることは、その士業が家族信託について一定ライン以上の知識があることの指標になるためです。
きめ細かなサポートやアフターフォローまで対応してくれることも重要です。
実績の豊富さや専門性の高さを備えていても、コミュニケーションがとりにくかったり、親身じゃないと感じたりするなら別の事務所を探してもよいかもしれません。
家族信託の相談では、家族構成や財産状況、信託の目的や内容を専門家に対してこと細かに説明する必要があります。信頼できないと感じる相手に、重要な個人情報を伝えるのは抵抗があるものです。大切な財産の管理、運用に関わる相談ですから、なおのこと、人間としての相性やコミュニケーションのとりやすさは重視すべきでしょう。「この人になら任せられる」と、安心感をおぼえられるかどうかも、相談相手選びの基準としてください。
また家族信託の契約締結後に法律や判例が変更したときや、財産状況が変わったときなどには、契約内容の調整が必要になる可能性があります。そうなったときに、あらためて相談にのってくれるなどのサポートが充実しているかどうかも、最初に確認しておきましょう。
家族信託手続きをスムーズに進めるには、広範囲にわたる専門知識を必要とします。そのため、家族信託一つひとつの案件ごとに、それぞれ法律、税金、不動産売買(賃貸)に精通した専門家たちが連携しながら、相談から信託契約後のフォローまで取り組むのが一般的です。
もしも、家族信託を相談した事務所に専門外のネットワークがなければ、スムーズなサービスを受けるのは難しいかもしれません。関連士業や関連会社との独自のネットワークを持っている専門家を選ぶことをお勧めします。
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相続の相談が出来る司法書士を探す家族信託の契約内容や目的に関しては、知識と実績、経験が豊富な弁護士や司法書士を頼れます。ただ、家族信託と切り離せないのが、相続税などの税金面の問題です。
税金についての心配や疑問点があるなら、税の専門家である税理士に相談しましょう。また、信託財産が不動産であり、かつ、信託契約のなかで不動産の売却や賃貸を検討しているのであれば、専門の不動産会社へ相談してみるのも手段の一つです。
なお最近では、家族信託プランを取り扱っている金融機関も増えてきています。ローンを活用しながら信託財産を運用していきたい人には心強い味方です。
このように疑問点や不安の方向性によって、相談すべき専門家や機関は異なるため、家族間で信託の方向性を十分に話し合ってから、最初の窓口に誰を選ぶかを決めると良いでしょう。
実績豊富で、書籍も出版していて、関連業種とのネットワークが深く、親身になってくれる専門家がベストではあります。しかし、家族信託を取り扱っている事務所は少なく、ベストといえる専門家を見つけにくいのが現状です。
ただ、家族信託の第一人者といえるような専門家も未経験からスタートしています。たとえ経験が浅くても、セミナーや勉強会で積極的に家族信託を学び、依頼者のために真摯に相談にのり、対応してくれる専門家もいるのです。実績がないからと言って最初から切り捨てると、良い専門家との出会いの機会を逃してしまうかもしれません。
まずは相談して、対応の誠実さやコミュニケーションのとりやすさ、家族信託への熱意などを確認したうえで依頼を決めても遅くはありません。
ここからは、家族信託の主な相談事例を3つ紹介します。
相続税の節税目的で、家族信託の利用を検討する人は多いです。しかし実際のところ、家族信託自体にダイレクトな節税効果があるわけではありません。
もちろん、なかには「信託した現金で収益用不動産を購入したら、相続時に課税対象となる財産総額が減った」といったように節税効果につながるケースはあります。ただしあくまで間接的な効果なので、節税をメインに考えるなら家族信託以外に目を向けましょう。
自分の財産を相続させる相手を決める一般的な方法が「遺言」です。遺言書のなかで、どの財産を誰に相続させるかを指定できます。
しかし、遺言書による相続人の指定には限界があります。たとえば遺言では「財産は妻に相続させて、妻が亡くなったあとは姪に相続させる」などと、二代目以降の相続人を指定することは認められていないのです。
遺言で指定できるのは、あくまで「自分の財産を誰に相続させるか」までで、自分の死によって、財産は相続人のものになります。相続人のものになったあとの財産の行く末までは遺言書で指定できませんし、指定したとしても無効です。
家族信託なら信託契約に定めることによって、たとえ二世代後の財産の承継人でも、自由に指定ができます。また、承継させたい相手だけでなく、自分が亡き後の財産の管理、運用方法までをも決めておくことができます。
ただし財産を最終的に承継させる相手との関係によっては、相続税や贈与税が課されるため、その点は信託契約前に十分検討しておく必要があります。
家族信託は、認知症対策としても利用できます。
認知症などで判断能力が低下した人は、原則として、銀行窓口で預金をおろしたり、不動産の売買契約や賃貸借契約を結んだりといった行為ができません。
では、親が認知症になった場合に、その子どもが親の代わりとして上記のような手続きができるかというと、残念ながら基本的に認められません。
このことから生じがちな問題について、例を使って説明しましょう。
ひとり親のAさんが認知症になったため、息子のBさんは、Aさんをケアの行き届いた介護施設に入所させようと検討しています。入所するための資金は、Aさんが所有する自宅とその敷地を売却して工面する予定でした。しかし、認知症になったAさん自身は、所有する自宅の売買契約を結ぶことができません。息子であるBさんが代わりに契約することもできず、結局、どうにもできないまま、Bさんは自宅と敷地を売却する機会を失ってしまいました。
さて、AさんとBさんは、どうすればよかったのでしょうか。
認知症になったAさんが自宅を売却できる可能性がある方法が1つあります。それは、「成年後見制度」です。成年後見制度では、家庭裁判所が選んだ「成年後見人」が、「被後見人(判断能力が低下した人)」の代わりにさまざまな手続きをおこなうことで、被後見人の生活をサポートします。
ただし、成年後見人制度が適用しづらいケースがあります。
成年後見人は被後見人の代わりに、必要な契約手続きができるため、一見、成年後見人がいれば、Aさんの不動産は売却できるように思えるでしょう。しかし、成年後見人の財産管理における役割は、主に被後見人の財産の「現状維持」であるため、被後見人の住んでいる不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
さらに、家庭裁判所に対して「どうしても不動産を売却しなければならない理由」を説明する義務もあります。理由によっては許可が下りないでしょうし、許可が下りるまでに時間がかかれば、売却のチャンスを逃してしまいかねません。この不自由さが、成年後見制度の弱点といえます。
その弱点をカバーできるのが、家族信託なのです。上の例で説明すると、Aさんが認知症になる前に、Bさんを受託者、Aさんを委託者兼受益者として自宅と敷地の信託契約を結びます。Bさんに自宅と敷地の名義がうつり、Bさんは自宅と敷地を管理、処分する権利を手にします。このようにしておけば、Aさんが認知症になってもBさんは問題なく自宅と敷地を売却できるのです。売却したお金は、当然に受益者であるAさんのものなので、介護施設への入所資金にあてることができます。
財産管理や処分の方法についてAさんの意思を最大限反映できるのも、家族信託のメリットの一つです。ただし、認知症になった後から新たに家族信託の契約はできないので注意が必要です。
家族信託を士業に相談するときの費用相場についてみていきましょう。ほとんどの事務所では、初回相談を無料としています。ただし、2回目以降の費用については事務所ごとに異なるので事前確認は必須です。
弁護士に家族信託を相談したときにかかる費用は、事務所によってまちまちです。初回相談が無料とされていても、2回目以降からは「30分5000円」「1時間1万円」などと定めている事務所や、コンサルティング料という名目で費用が発生する事務所が多いでしょう。出張費用として別途数万円がかかることもあります。
家族信託を司法書士に相談したときにかかる費用も、事務所によって異なります。初回無料の事務所もあれば、初回から時間制で相談費用がかかる事務所もあるので、目当ての事務所におおよその相談費用を確認してみましょう。
家族信託は専門家に相談するイメージが強いですが、実は個人での手続きも可能です。ここからは、家族信託の手続きの流れを簡単に紹介していきます。
代表的な家族信託が、委託者と受託者の「信託契約」によるものです。財産を託す人を「委託者」といい、委託者から財産を託される人を「受託者」といいます。「受益者」という、信託財産から発生する利益(お金など)を受け取る人もいますが、契約の当事者は基本的に「委託者」と「受託者」の2者です。ちなみに、「委託者兼受益者」といって、委託者が受益者を兼ねることもできます。
信託契約を用いた家族信託では、認知症対策のため、障害のある子どもの生活を守るため、自由な財産承継をかなえるため…など信託の目的を決めます。
目的が決まったら、信託契約の内容を決めます。「どのような方法で財産を管理するのか」「最初の受益者が亡くなったら、次は誰が受益者になるのか」などを可能な限り具体的に決める段階です。内容が固まったら信託契約書を作成します。信託契約書は、できるだけ公正証書で作成しましょう。
契約書を作成して委託者と受託者が署名押印した後に、財産の名義を委託者から受託者にうつします。信託財産に不動産が含まれているのなら、信託にもとづいて所有権移転登記を申請しなければなりません。また、現金や預金を信託する場合は、新たに「信託口口座」という専用の口座を作り、その口座で信託財産であるお金を管理します。
遺言代用信託とは、「委託者が亡くなったときに、委託者から指定された人へ受益権を承継させる」信託契約を指します。
最初に委託者が、生前に委託者自身を受益者とする信託契約を受託者と結んでおきます。そして委託者が亡くなったら、契約の中であらかじめ指定しておいた人に受益権が承継されるのです。
ひとり親のAさんと、その子どもであるBさんが一緒に暮らしているケースでみてみましょう。Bさんには障害があり、高齢のAさんは自分が亡き後のBさんの生活を心配しています。
そこで、甥であるCさんを受託者、Aさんを委託者兼受益者として「Aさんが亡くなったらBさんに受益権がうつる」という内容で財産を信託することにしました。この信託により、しっかり者のCさんに財産管理を任せつつ、Aさんが亡き後は信託財産の管理、運用により発生する利益をBさんに残すことができます。
このように、「残された人の生活を支える」という目的をスマートにかなえるのが、遺言代用信託の特徴です。
家族信託はやはり将来的なトラブル予防の観点からみると専門家への相談がおすすめです。
大切な家族と財産について、士業とはいえ第三者に相談することは気がひけるかもしれません。しかし、専門家へ相談することで、家族信託に対する理解が深まり、家族信託で本当にかなえたい願いが見えてくることもあります。財産管理や承継に関する悩みがあるなら、まずは専門家の無料相談を利用するところから始めてはいかがでしょうか。
(記事は2020年4月1日現在の情報に基づきます)