指定分割と協議分割の違いとは 遺産を分ける二つの方法を解説
遺産相続の方法として「指定分割」と「協議分割」の2種類があります。指定分割とは、亡くなった被相続人が、遺言書で遺産分割の方法を指定することです。一方、協議分割は、相続人たちが自分たちで話し合って遺産の分け方を決めることです。これから遺産分割を控えている方に、二つの遺産方法の違いや注意点について解説します。
遺産相続の方法として「指定分割」と「協議分割」の2種類があります。指定分割とは、亡くなった被相続人が、遺言書で遺産分割の方法を指定することです。一方、協議分割は、相続人たちが自分たちで話し合って遺産の分け方を決めることです。これから遺産分割を控えている方に、二つの遺産方法の違いや注意点について解説します。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
指定分割は、被相続人(亡くなった方)が遺言書によって指定する遺産分割の方法です。たとえば遺言書で「長男に自宅不動産、次男に〇〇銀行の預貯金を相続させる」などと指定していると「指定分割」になります。
指定分割では、被相続人が自由に遺産分割の方法を決定でき、法定相続分に従う必要はありません。すべての遺産を1人の相続人に集中させても構いませんし、特定の相続人に遺産を多めに相続させることも可能です。
有効な遺言書が残されていると、基本的には遺言書の内容に従い「指定分割」の方法で遺産分割を進めることになります。
指定分割では、被相続人が自分の意思で遺産分割方法を指定できます。死後に希望通りに財産を受け継がせることができるのは、故人にとって大きなメリットとなるでしょう。
また法定相続に従う必要がないので、自由に財産の引継方法を決められます。
さらに遺産分割の方法を指定しておけば、相続人たちが遺産分割協議をしなくてよいので相続争いを避けやすくなります。
遺言書の内容が不公平な場合、不利益を受ける相続人が不満を持ちます。「遺言書は無効」と言い出してトラブルになったり、「遺留分侵害額請求」が行われたりするリスクも発生します。またきちんと遺言書の要式に従って作成しないと遺言書が無効になり、そもそも指定分割できなくなる可能性もあります。
遺産分割のもう一つの方法が「協議分割」です。協議分割は、相続人たち同士がみんなで話し合って決定する遺産分割の方法です。
遺言書がない場合や、遺言書があってもすべての遺産の分割方法が指定されていない場合、相続人たちは協議分割によって遺産を分け合う必要があります。
協議分割では、基本的に「法定相続分」に従います。ただし相続人全員が納得すれば法定相続分と異なる割合での遺産分割もできます。
協議分割の場合、指定分割と違って法定相続分に従って公平に遺産分割できます。相続人全員が納得できる方法で遺産分けができるのはメリットと言えるでしょう。
相続人全員が協議に参加して合意しないといけないので、手間がかかります。また相続人同士の意見が合わずにトラブルになってしまうケースも少なくありません。
指定分割と協議分割は、個々の相続でメリットとデメリットは異なります。「自分の場合では、どちらが適しているのか?」と迷った場合は、弁護士に相談してみてください。
指定分割と協議分割は、どちらが優先するのでしょうか?
基本的に有効な遺言書があれば、法定相続よりも優先します。つまり「遺言書があれば、協議分割せずに遺言書に従って遺産分割すべき」ということです。この意味で「指定分割は協議分割に優先する」といえます。
ただし、相続人全員が納得すれば、遺言書とは異なる方法での遺産分割も可能です。
指定分割が優先するとはいっても絶対的ではなく、全員の合意があれば協議分割の方法で遺産分割を進められます。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す遺言書によって指定分割するときには、基本的に被相続人が自由に遺産分割の方法を指定できます。しかし一定の法定相続人には「遺留分」が認められるので注意が必要です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分です。
遺言書で遺留分を侵害すると、遺留分権利者は侵害者(遺言によって多めに相続した人)へ「遺留分侵害額請求」できます。
遺留分侵害額請求が行われると、侵害者と請求者との間でトラブルが発生するリスクがあります。
遺言書で指定分割をするときには、なるべく遺留分を侵害しないように配慮すべきです。
遺言書を作成しても必ず有効とは限りません。遺言書には法律上、厳格な要式が求められるので、作成方法を誤ると無効になってしまうからです。
また遺言書を発見した相続人が隠したり書き換えたりしてしまうおそれもあります。
遺言書で指定分割するなら、自分で書く「自筆証書遺言」ではなく、信用性が高く無効になりにくい「公正証書遺言」を利用した方が安心です。
協議分割するときには、相続人全員が遺産分割協議に参加して全員が合意しなければなりません。1人でも反対すると協議分割はできません。合意できない場合には家庭裁判所で遺産分割調停や遺産分割審判を行う必要があり、大変な手間と時間がかかります。
遺言書で遺産分割の方法が指定されていたら基本的には遺言書に従う必要がありますが、相続人全員が納得すれば遺言書と異なる方法での遺産分割も可能です。
遺言書に納得できない場合には、相続人同士で話し合ってみると良いでしょう。
将来の遺産相続に備えるには、遺言書を作成しておくことが有効です。ただ、遺言書で指定された分け方がもとで相続トラブルになるケースもあります。できれば相続人を交えてあらかじめ話し合いの機会を持ち、全員が納得しやすい内容で指定分割して遺言書を作成しておくのが良いでしょう。困ったときには弁護士に相談してみてください。
(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)