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類似業種比準価額とは? 非上場株式評価の注意点や計算方法を解説
類似業種比準価額は、会社規模と業種判定の整理が重要です(c)Getty Images
非上場株式を相続する場合、相続税申告のために株式の評価額を算定する必要があります。その際に用いられる代表的な評価方法の一つが、類似業種比準価額です。類似業種比準価額は、会社の規模や業種の判定、斟酌率の考え方などによって評価結果が大きく変わるため、相続税評価では慎重な判断が求められます。
類似業種比準価額の基本的な仕組みや純資産価額方式との違い、実務上の注意点を整理します。
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1. 類似業種比準価額とは
類似業種比準価額は、非上場株式の相続税評価において用いられる評価方法の一つです。
非上場株式の相続税評価では、会社の規模や事業内容などに応じて評価方法が定められており、類似業種比準価額は、その中でも比較的多くのケースで用いられる方式とされています。
しかし、類似業種比準価額は、評価の前提となる要素が多く、会社の規模や業種の判定によって評価結果が左右されることがあります。そのため、考え方や仕組みを十分に理解しないまま評価を行うと、後に問題となる可能性もあります。
ここでは、類似業種比準価額の基本的な考え方と評価の仕組みについて整理します。
1-1. 非上場株式の「時価」を計算するためのルール
非上場株式は、市場で自由に売買されていないため、上場株式のように客観的な市場価格が存在しません。そのため、会社オーナーの死亡などにより非上場株式を相続する場面では、相続税申告のために株価評価を行う必要があります。
相続税評価では、非上場株式についても時価を基準に評価する考え方が採られていますが、その時価は、実際の取引価格ではなく、税法上定められた評価ルールに基づいて算定されるものです。
類似業種比準価額は、こうした評価ルールの一つとして、上場企業の株価や財務指標を基準に非上場株式の価値を算定する方法として位置づけられています。
1-2. 事業が似ている上場企業の株価を参考にする仕組み
類似業種比準価額は、非上場株式そのものの取引価格を用いるのではなく、事業内容が類似する上場企業の株価や財務指標を基準として評価を行う点に特徴があります。その際、評価対象となる会社の事業内容に応じて、国税庁が定める業種区分の中から類似業種を選定し、その業種に属する上場企業の株価や指標を基に評価を行います。
つまり、個別の会社の状況のみを直接反映させるのではなく、同業種全体の水準を踏まえて相対的に評価する仕組みとなっています。もっとも、どの業種を類似業種として選定するかによって、参照されるデータや評価結果が異なるため、事業内容の把握や業種判定が重要です。
1-3. 会社の規模によって評価方法が決まる
非上場株式の相続税評価では、類似業種比準価額を用いるかどうかを、納税者が任意に選択できるわけではありません。評価方法は、会社の資産規模や従業員数、取引規模などを踏まえて判定される会社規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両者を併用する方式が適用されます。
このため、どの評価方法が用いられるかは、相続時点の会社の状況によって左右されます。
2. 類似業種比準価額の仕組みと評価の考え方
類似業種比準価額は、前章で述べたとおり、事業内容が類似する上場企業の水準を基準として、非上場株式の価値を算定する評価方法です。ここでは、その評価に用いられる具体的な算定要素や調整の考え方に焦点を当て、実務上のポイントを整理します。
2-1. 「配当・利益・純資産」の3要素を基準に算定する
類似業種比準価額の算定では、配当・利益・純資産という3つの要素が用いられます。これらは、評価対象となる会社の経営状況や財務内容を把握するための指標として位置づけられています。
配当や利益は主に収益力を反映する要素であり、純資産は会社が保有する財産の状況を示す要素です。類似業種比準価額では、これら3要素を一定の方法で組み合わせ、類似業種に属する上場企業の数値と比較することで、非上場株式の価値を算定します。
2-2. 業種ごとに定められた類似業種を用いる
類似業種比準価額では、評価対象となる会社の事業内容に応じて、国税庁が定める業種区分の中から類似業種を選定し、その業種に属する上場企業のデータを用いて評価を行います。
業種の判定にあたっては、会社の定款上の目的や実際の事業内容、売上構成などを踏まえて判断されます。単に社名や表面的な事業内容だけで決まるものではなく、実態に即した業種判定が求められます。
2-3. 評価時点の株価水準が反映される
類似業種比準価額の前提となる数値は、評価時点の株価水準や財務データを基にしています。相続税評価では、原則として相続開始時点を評価時点とし、その時点で利用可能な上場企業の株価や指標を用いて評価を行います。市場環境や業績動向は常に変動しているため、同じ会社であっても、相続の時期が異なれば評価額が変わる可能性があります。
このように、類似業種比準価額は固定的な数値ではなく、評価時点の状況を反映して算定される点に特徴があります。
2-4. 非上場株のリスクを考慮する「斟酌率」とは
斟酌率とは、類似業種比準方式によって算定された評価額を、そのまま適用するのではなく、非上場株式特有の事情を踏まえて調整するための割合です。上場企業と比べて流動性が低いことなど、非上場株式の特性を考慮する趣旨で設けられています。
類似業種比準価額の算定では、上場企業の数値を基準とするため、そのままでは非上場株式の実態を十分に反映できない場合があります。斟酌率は、こうした点を踏まえ、評価額を一定程度調整する役割を持っています。もっとも、斟酌率は恣意的に設定できるものではなく、制度上の枠組みに基づいて適用されるものです。
そのため、斟酌率を下げて評価額を調整するといった恣意的な操作はできず、会社規模区分に応じた率を用いる必要があります。
3. 相続税評価における類似業種比準価額の算定手順
類似業種比準価額は、一定のルールに従って段階的に算定されます。以下では、相続税評価における基本的な算定手順を順に整理します。
3-1. 【STEP1】会社の規模を判定する
類似業種比準価額を用いるかどうかは、まず会社の規模を判定することから始まります。相続税評価では、会社の資産規模や従業員数、取引規模などを基に、会社規模が区分されます。
この会社規模の判定結果によって、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両者を併用する方式のいずれが適用されるかが決まります。
3-2. 【STEP2】会社の業種を特定する
次に、評価対象となる会社の業種を特定します。類似業種比準価額では、国税庁が定める業種区分に基づき類似業種を選定し、その業種に属する上場企業のデータを参照して評価を行います。
業種の判定は、会社の定款上の目的だけでなく、実際の事業内容や売上構成などを踏まえて行われるため、実態に即した整理が必要です。
3-3. 【STEP3】自社の比準要素(配当・利益・純資産)を計算する
業種を特定した後は、評価対象会社の比準要素を整理します。類似業種比準価額の算定では、配当・利益・純資産という3要素が用いられ、これらの数値を基に類似業種の水準と比較して評価額を算定します。
どの数値が必要になるのかを整理したうえで、算定に用いる基礎資料を揃えることが重要です。
3-4. 【STEP4】国税庁の公表データ(類似業種比準株価等)を確認する
次に、国税庁が公表している類似業種に関するデータを確認します。類似業種比準価額は、類似業種に属する上場企業の株価や指標を基に算定されるため、評価時点に対応する公表データを参照する必要があります。
どのデータを用いるかは、業種の選定や評価時点と密接に関係するため、参照する資料の範囲や時点を取り違えないよう注意が必要です。
3-5. 【STEP5】計算式に当てはめ評価額を算出する
最後に、必要な数値と公表データを計算式に当てはめ、1株あたりの評価額を算出します。基本的な考え方としては、類似業種の株価を基準に、自社と類似業種の3要素の水準を比較し、必要に応じて斟酌率を乗じて調整する流れになります。
計算式の全体像は、あくまでイメージとして、以下のように理解しておくと分かりやすいでしょう。
類似業種の株価 ×(自社の3要素 ÷ 類似業種の3要素の平均値) × 斟酌率
= 1株あたりの株価(評価額)
4. 類似業種比準価額による相続税評価の注意点
類似業種比準価額は、一定のルールに基づいて算定される評価方法ですが、前提条件や判断を誤ると、評価結果が想定と異なることがあります。相続税申告においては、評価方法そのものだけでなく、算定過程での判断や取扱いにも注意が必要です。
4-1. 類似業種の選定ミスは評価額に大きく影響する
類似業種比準価額では、どの業種を基準として評価を行うかが重要な前提となります。類似業種の選定を誤ると、参照される上場企業のデータが変わり、評価額にも影響が生じます。
とくに、複数の事業を行っている会社の場合には、主たる事業がどれに当たるのかが問題となりやすく、売上構成や事業実態を踏まえた業種判定が求められます。形式的に一つの業種に当てはめるのではなく、実態に即した整理が重要です。
4-2. 評価時点や資料の取り扱いを誤ると修正の対象となる
類似業種比準価額は、評価時点の株価水準や公表データを基に算定されます。そのため、参照すべき時点や資料を取り違えると、評価の前提そのものが適切でないと判断される可能性があります。
たとえば、評価時点と異なる期間のデータを用いて算定した場合や、公表資料の選択を誤った場合には、算定過程が確認対象となることがあります。そのため、相続税申告では、用いたデータや資料を後から説明できる状態にしておくことが求められます。
4-3. 相続税申告後に評価方法が問題となることがある
類似業種比準価額による評価は、申告時点では問題が表面化しなくても、後の税務調査などで評価方法や前提条件が確認されることがあります。
業種判定や会社規模の判断、参照データの選定について見解の相違が生じた場合には、評価額そのものではなく、算定の考え方が問われることもあります。評価の経緯や判断理由を整理したうえで申告を行いましょう。
5. 類似業種比準価額に関連するよくある質問
Q. 類似業種比準価額方式と純資産価額方式は自由に選べる?
原則として、相続税評価における評価方式は、会社の規模などに応じて定められており、納税者が任意に選択できるものではありません。会社規模の判定結果によって、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両者を併用する方式が適用されます。
Q.類似業種比準価額は毎年同じ金額になる?
類似業種比準価額は、評価時点の株価水準や財務データを基に算定されるため、毎年同じ金額になるわけではありません。相続が発生した時期によって、評価額も変動します。
Q. 生前に類似業種比準価額を引き下げる対策はできる?
配当や利益、純資産といった比準要素は、会社の経営状況を反映するため、結果として評価額に影響することがあります。生前対策を検討する場合には、評価への影響や税務上のリスクを踏まえ、税理士に相談しながら慎重に進める必要があります。
6. まとめ 類似業種比準価額は「どの会社と比べるか」で評価が決まる
類似業種比準価額は、非上場株式の相続税評価において広く用いられている評価方法の一つです。上場企業の株価や財務指標を基準に算定する仕組みである一方、会社規模の判定や業種選定、評価時点の取り扱いなど、前提となる判断が評価額に影響します。
相続税評価では、評価方法を自由に選べるわけではなく、制度上定められたルールに沿って算定する必要があります。そのため、評価額の大小だけで判断するのではなく、どの方式が適用されるのか、どのような根拠で算定されたのかを整理しておくことが重要です。
非上場株式の評価は、会社の状況や相続のタイミングによっても結果が変わり得る分野です。判断に迷う場合には、評価の前提や算定過程を含めて税理士に確認しながら進めることが、後のトラブルを避けるうえで有効といえるでしょう。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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