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2015年の相続税改正とは 基礎控除引き下げと相続税対策のポイントを解説
2015年相続税改正により、課税の対象者が大幅に増えました(c)Getty Images
2015年の相続税改正は、日本の相続税制度における大きな転換点となりました。基礎控除の大幅な引き下げにより、これまで相続税とは無縁だった一般家庭や都市部の持ち家世帯も、課税対象となるケースが急増したためです。相続税は、「富裕層だけの税金」ではなくなり、誰にとっても無関係ではない制度へと変わりました。
2015年改正の背景と具体的な変更点、税負担がどう変わったのか、さらに改正後に重要性が増した相続税対策や近年の改正動向まで、分かりやすく解説します。
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1. 2015年相続税改正の背景と目的
2015年の相続税改正が行われた背景には、高齢化の進行で相続の発生件数が増え、税制の持つ再分配機能を強める必要が高まったことがあります。とくに都市部では地価や金融資産の増加により、資産が一部の世帯に偏りやすい状況が続いていました。
そこで政府は、相続税を「富裕層だけが負担する税」から、一定の資産を持つ一般家庭にも広く負担を求める仕組みへと見直し、税収の安定確保と公平感の向上を図りました。あわせて、負担能力の高い層にはより重い負担を求め、社会全体での資産の偏在を是正する狙いもあります。
2. 改正①基礎控除の引き下げで課税世帯が増加
2015年の相続税改正において、もっとも多くの人に直接的な影響を与えたのが「基礎控除の引き下げ」です。
相続税は、相続財産の総額すべてに課税されるわけではなく、一定額までは非課税とされています。その非課税枠が基礎控除です。この基礎控除が大幅に縮小されたことで、これまで相続税とは無縁だった世帯まで課税対象となり、相続税が一気に身近な問題になりました。
2-1. 非課税枠を4割カット
相続税の基礎控除とは、相続財産の合計額から差し引くことができる非課税枠のことです。相続財産がこの基礎控除の範囲内であれば、相続税はかからず、申告も不要となります。
改正前の基礎控除は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」でしたが、2015年改正により「3000万円+600万円×法定相続人の数」へと引き下げられました。たとえば法定相続人が2人の場合、非課税枠は7000万円から4200万円へと大きく縮小しています。
このように基礎控除が約4割カットされたことで、不動産や預貯金を一定程度保有しているだけでも、相続税が発生する可能性が高まりました。とくに地価の高い地域では、一般的な住宅を所有しているだけで課税ラインを超えるケースも珍しくなくなっています。
2-2. 相続税が課税される世帯が急増
基礎控除の引き下げによって、相続税が課税される世帯数は大幅に増加しました。改正前であれば、たとえば、評価額4500万円程度の自宅と数百万円の預貯金しかない場合、相続税が発生しないケースが多く見られました。しかし改正後は、同じ財産内容でも基礎控除を超え、相続税の申告と納税が必要になる可能性があります。
とくに影響が大きかったのが、地価の高い都市部です。都心やその周辺では、一般的な戸建て住宅やマンションであっても、相続税評価額が4000万円を超えることは珍しくありません。その結果、「自宅しか相続していないのに相続税がかかる」「現金が少なく、納税資金の確保が難しい」などの問題が顕在化しました。実際、相続税の申告件数は改正後に大きく増加し、相続税は一部の富裕層だけの税金ではなく、一般家庭にとっても避けて通れない税制へと変化したといえます。
3. 改正②多額の相続にかかる税率をアップ
2015年の相続税改正では、基礎控除の引き下げだけでなく、相続税の税率構造そのものも見直されました。とくに影響が大きいのが、多額の相続財産に対する税率の引き上げです。改正前は相続税の最高税率は50%でしたが、改正後は55%へと引き上げられ、「6億円超」の区分が追加されました。これにより、一定額を超える相続については、より高い税率が適用される仕組みとなっています。
| 課税される相続財産額 |
改正前 (〜2014年12月31日) |
改正後 (2015年1月1日〜) |
| 1,000万円以下 |
10% |
10% |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 |
15% |
15% |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 |
20% |
20% |
| 5,000万円超〜1億円以下 |
30% |
30% |
| 1億円超〜2億円以下 |
40% |
40% |
| 2億円超〜3億円以下 |
45% |
| 3億円超〜6億円以下 |
50% |
50% |
| 6億円超 |
55% |
この改正は、資産規模の大きい相続に対して、より重い負担を求めることを目的としたものです。相続財産が高額になるほど税率が急激に上昇するため、富裕層や多額の不動産・金融資産を保有する世帯では、相続税負担が明確に増加しました。
一方で、少額の相続については税率の変更による影響は限定的です。相続税が「広く薄く」ではなく、「資産規模に応じてより重く」課される税制へと調整された点が、この改正の大きな特徴です。
4. 改正③未成年者控除・障害者控除の控除額が拡大
2015年の相続税改正では、税負担を強める改正が行われた一方で、特定の相続人に配慮するための控除制度も見直されました。その代表例が、未成年者控除と障害者控除の拡大です。これらの控除は、相続人の年齢や事情を考慮し、相続税の負担を軽減する目的で設けられています。
未成年者控除は、相続人が未成年の場合に適用され、20歳に達するまで(2025年現在は18歳まで)の年数に応じて控除額が計算されます。改正前は1年につき6万円でしたが、改正後は10万円に引き上げられました。同様に、障害者控除も85歳に達するまで1年につき6万円から10万円へと拡大され、特別障害者については12万円から20万円へと大幅に引き上げられています。これにより、若年の相続人や障害を持つ相続人がいる家庭では、相続税の負担が軽減されやすくなりました。
5. 改正④小規模宅地等の特例の節税効果を拡大
基礎控除の引き下げによって相続税の対象が広がる一方、居住用や事業用の土地を引き継ぐ相続人の負担を和らげる目的で、小規模宅地等の特例についても見直しが行われました。この特例は、一定の要件を満たす宅地について、相続税評価額を大幅に減額できる制度で、相続税対策の中でも非常に重要な位置づけにあります。
改正後は、特定居住用宅地について、被相続人が住んでいた自宅の土地を相続した場合、最大330㎡(元は240㎡)まで80%の評価減が認められる仕組みがより使いやすく整理されました。二世帯住宅や同一敷地内に居住用と事業用の建物があるケースなど、従来は判断が難しかった取扱いが明確化されたことで、適用の可否が分かりやすくなっています。また、自営業用地や貸付事業用地についても要件が整理され、併用の可否や適用面積の考え方が整理されました。
この改正により、都市部で評価額が高くなりやすい土地についても、特例を活用することで相続税評価額を大きく引き下げることが可能となりました。ただし、同居要件や保有・利用の継続など、細かな条件を満たす必要がある点には注意が必要です。
6. 2015年改正後の相続税対策のポイント
2015年の相続税改正により、相続税が課税される人が増え、税額も重くなりました。その結果、相続税は発生後に考えるものではなく、生前から計画的に備えるべき税金へと性質が変わっています。
6-1. 課税対象者・税額の増加
2015年改正によって基礎控除が引き下げられた結果、相続税が課税される世帯の割合は大きく増加しました。改正前は、相続税の申告が必要な人は全体の約4%程度にとどまっていましたが、改正後は約8%前後まで増加したとされています。とくに都市部では、不動産評価額の上昇も重なり、一般的な持ち家世帯でも相続税の申告・納税が必要になるケースが珍しくなくなりました。
また、課税対象が広がっただけでなく、税率構造の見直しにより、相続税額そのものが増加するケースもあります。その結果、相続税の計算や土地評価、特例の適用可否をめぐる相談が急増しました。相続税は「かかるかどうか」だけでなく、「いくらかかるのか、そして納税資金をどう確保するか」まで含めて考える必要がある税金へと変化したといえるでしょう。
6-2. 生前からの相続対策がより重要に
2015年改正後の相続税対策では、相続が発生してから対応するのでは遅く、生前からの準備が不可欠となっています。基礎控除が減少する一方で、小規模宅地等の特例や配偶者控除など、活用次第で税負担を大きく抑えられる制度も存在するため、事前の設計が結果を左右します。
具体的には、生前贈与を計画的に行うことや、遺言書を作成して分割方法を明確にしておくこと、家族信託などを活用して財産管理を整理する方法が挙げられます。また、配偶者が一次相続で多くの財産を取得すると、配偶者が死亡したときの二次相続で税負担が重くなるケースもあるため、長期的な視点での対策が重要です。
7. 2015年の相続税改正に関してよくある質問
Q. 2015年改正は誰にいつから適用される?
2015年の相続税改正は、2015年1月1日以降に亡くなった人の相続から適用されます。相続開始日を基準に判断されるため、相続税の申告時期ではなく、死亡日が基準になる点に注意が必要です。2014年以前に亡くなった場合は改正前の制度が適用されます。
Q. 民法の相続に関する条文改正(2018・2020)との関係は?
民法改正は、相続人の権利や財産の分け方を見直すもので、配偶者居住権や遺留分制度の変更などが含まれます。一方、2015年改正は相続税の計算方法に関する見直しであり、両者は目的も内容も異なる別の制度です。
Q. 相続税の改正は2024年・2025年も行われた?
2015年改正ほど大きな変更はありませんが、2024年には暦年贈与の加算期間が3年から7年に延長され、相続時精算課税制度にも新たな基礎控除が設けられました。2025年は制度整理が中心で、大幅な増税ではありません。
Q. 相続税について今後の改正は何か議論されている?
今後も高齢化や財政状況を背景に、相続税の見直しが議論される可能性があります。とくに贈与税との一体化や控除制度のあり方、資産の偏在是正などが検討テーマとされており、継続的な制度変更には注意が必要です。
8. まとめ 2015年の相続税改正により、生前からの相続対策が重要に
2015年の相続税改正は、基礎控除の引き下げや税率引き上げにより、相続税の対象を大きく広げた重要な制度改正でした。とくに都市部では、一般的な持ち家世帯でも相続税が発生するケースが増え、「富裕層だけの税金」という認識は通用しなくなっています。
一方で、未成年者控除や小規模宅地等の特例など、負担を調整する制度も整備されました。改正後の相続税は、生前からの計画的な対策が不可欠です。近年も制度見直しが続いているため、最新の動向を踏まえた準備が重要といえるでしょう。
(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)
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