自動販売機ビジネスを土地活用でするメリットは? 費用や設置の流れ、注意点を解説
自動販売機を活用したビジネスは、自動販売機を置く土地(場所)があればできます。しかし販売に結びついてこそビジネスです。この記事では、自動販売機ビジネスに精通する会社経営者が土地活用法の一つとして自動販売機ビジネスを行うときに知っておきたいメリットやデメリット、費用、得られる収入などをわかりやすくご紹介します。
自動販売機を活用したビジネスは、自動販売機を置く土地(場所)があればできます。しかし販売に結びついてこそビジネスです。この記事では、自動販売機ビジネスに精通する会社経営者が土地活用法の一つとして自動販売機ビジネスを行うときに知っておきたいメリットやデメリット、費用、得られる収入などをわかりやすくご紹介します。
目次
自動販売機ビジネスとは、自動販売機(自販機)を用いて利益を生み出す事業を指します。最近では、相続した土地活用方法のひとつとして注目されています。
自販機で取り扱う商品には飲料を中心にパン、お菓子、フルーツ、冷凍食品なども注目されていますが、この記事では主に清涼飲料水を対象とします。
土地活用における自販機ビジネスには、大きく二つの方法があります。
(A)フルオペレーション方式
自販機運営会社(オペレーター)へ設置場所を提供し、全ての管理を委任する方式です。売上があった場合、売上金額に応じた販売手数料(ロケーションマージン)をオペレーターから受け取ります。販売商品はオペレーターの選択したブランド商品となり、価格設定についてもオペレーター主導で行われます。
(B)セミオペレーション方式
土地オーナー自ら機材と中身商品を選定・購入し、価格設定や売上金管理、商品補充も自ら行う方式です。飲料の場合、一部小売店などを除いて実例はそれほど多くはありません。
自販機ビジネスには、大きく四つのメリットがあります。
オーナー所有地に新しく自販機を設置する場合、必要な許可申請はいりません。ただし、公道にはみ出しての設置は条例違反になりますので注意しましょう。また、紙コップ自販機の場合は保健所への届出の義務があります。
設置および撤去作業は必ず専門業者が行うため、手間がかかりません。
自販機ビジネスは、小さいスペースで始められるのもメリットです。自販機本体は機械種類により幅900〜1200mm、奥行700〜1000mm程度であり、このスペースが確保できれば問題ありません。飲み終えた容器を投入できるリサイクルボックスを用意するときも、幅約500mm余分にあれば十分です。
自販機は、その前面に管理番号ステッカー(トラブル発生時のオペレーター連絡先および設置場所住所)が貼付されています。それにより、災害時や交通事故が発生した場合の住所確認にしばしば活用されています。
自販機ビジネスには、いくつかのデメリット(注意点)があります。始める際は、あわせておさえておきましょう。
自販機は設置しただけでは期待した利益に結びつきません。儲けを出すためには、オーナーの土地の立地条件を把握し、周囲の環境を生かした方法を取る必要があります。
自販機の省エネ化技術が進んでいるおかげで、自販機にかかる電気代は減少傾向にあるものの、2,000~3,000円/月の負担が発生します。
ただし、消費電力が大きくなればその分かさみます。たとえば、夏の「冷たい」より秋・冬の「温かい」方が消費電力は大きくなります。また売れる本数が多くなるほど電力は消費されます。ここで示した電気代はあくまでも目安としてください。
自販機の横にしばしば据え付けてあるリサイクルボックスは、本来その自販機で買った飲み物を捨てるために設けてあるものですが、購入者がその場で飲み干すことは少なく、他の場所で購入して飲み終えた容器を投入する場合がほとんどです。飲料容器以外の異物が入れられることもしばしばあります。
リサイクルボックスに捨てられた容器は、オペレーターが定期的に回収作業を行うのが一般的です。また、今は飲料容器以外の異物投入を防止する下から投入するタイプのリサイクルボックスが増えています。
このため、オーナーの負担が増えたり、周辺に迷惑を大きくかけたりすることはなくなってきています。ただし異物が投入されるケースがなくなっているわけではないため、注意を払っておくのが肝要です。
自販機への「いたずら」も残念ながら無いとは言い切れません。たとえば、商品が落ちてこないように取り出し口にテープを貼る、硬貨投入口や紙幣投入口に異物を詰める、などの事例があります。
カメラ付き自販機やキャッシュレス自販機によって今後は減少すると予想されていますが、自販機ビジネスをする上で注意したいポイントのひとつです。
自販機ビジネスにかかる費用をご説明します。
自販機ビジネスにかかる初期費用は、以下のとおりです。
(A)フルオペレーション方式
必要な費用はオペレーターが全て負担するためゼロ円です。
(B)セミオペレーション方式
・機材購入費用:新台70~100万円、中古30~50万円
・電源工事費用:100V電源が設置場所の近くにない場合に必要。費用は工事引受先による
・設置費用:基本3万円程度。階段の場合はさらに負担増
(A)フルオペレーション方式
毎月の電気代のみです。
(B)セミオペレーション方式
基本は毎月の電気代のみですが、機械が故障した場合、修理費用が必要となります。
自販機ビジネスで得られる年収は、オペレーション方式とセミオペレーション方式で異なります。
それぞれ簡単にシミュレーションをしてみましょう。ここでは、月間販売数300本、月間売上金額45,000円と仮定します。この数字は、ビジネスとして考えたときの最低ラインです。
(A)フルオペレーション方式の収益見込み
以下の条件だったときの収益見込みは、以下のとおりです。
販売手数料:売上金額の20%
電気料金:3,000円
1カ月の収益 = 45,000円 × 0.2 - 3,000円 = 6,000円
見込み年収 = 6,000円 × 12カ月 = 72,000円
(B)セミオペレーション方式の収益見込み
以下の条件だったときの収益見込みは、以下のとおりです。
仕入原価:売価の70%
電気料金:3,000円
1カ月の収益 = 45,000円 - 45,000円 × 0.7 - 3,000円 = 10,500円
見込み年収 = 10,500円 × 12カ月 = 126,000円
オペレーターとの契約内容や問屋などでの仕入れの状況、さらに季節変動や環境変化などで売上や費用は変わりますので、上記シミュレーションはあくまで目安とお考えください。設置されたあとは長く継続することが販売増につながります。
フルオペレーション方式での自販機ビジネスを始めるときの大まかな流れをご説明します。
フルオペレーション方式では、オペレーターの選定がビジネスの成功の鍵を握ります。
オペレーターは飲料メーカーが直接運営するブランド「コカ・コーラ」「サントリー」「キリン」「アサヒ」「ダイドードリンコ」「伊藤園」「ポッカ・サッポロ」の主力7社に加えて、一つの会社で各ブランドを取り扱う総合オペレーターがあります。
オペレーターを選ぶときは、まずインターネットで「当該地域(〇〇市など) 自販機会社」と検索します。
複数の企業サイトがヒットしますので、その中からホームページ内容を確認の上、3社程度に連絡します。
オペレーターに連絡したら、担当者に設置したい場所の現地下見をしてもらい、設置の可否を判断してもらいます。
このとき注意したいのが、自販機を動かすための100V電源がある、設置面の強度が十分にあるなどの物理的な条件に加えて、収益の見込みも設置の条件にあることです。
特に、設置する敷地に面している道に人の流れが常にある(例えば通勤・通学の経路になっている、スーパーなど定期的に人が足を運ぶ施設の通り道になっている)ことは、自販機の収益に直結するため、オペレーターが設置の可否を決める大きなポイントになります。他にも、もし設置箇所の近くに同じオペレーターが置いた自販機があれば、その売上実績を見て判断されることもあります。
担当者に設置可能と判断されたら、企画書の作成を依頼します。企画書には設置する自販機のサイズ、飲料ブランド、契約年数、販売手数料、訪問回数、空き容器回収などの契約内容が明記されています。
ポイントはこの企画書を、複数のオペレーターから集めることです。ひとつのオペレーターに決め打ちせず、各オペレーターの企画書の内容を比較した上で依頼先を決定します。
オペレーターと契約締結をします。契約締結前に、あらためて以下の点を確認することが安心につながります。
・契約期間(通常3年、以降自動更新が一般的)と中途解約のペナルティはどうなっているか
・機械は省エネ型か?(ヒーポンプ式が最も省エネで、電気料金を削減できる)
・手数料内訳が具体的に明記されているか(売上金額の〇%、売れた本数 × 〇円などオペレーターによって異なる場合がある)
・手数料明細の開示方法(ハガキ、インターネットなど)は明記されているか
・利用度の上がっているキャッシュレス対応の説明はあるか
・機械故障や購入者からの苦情時の連絡先の説明はあるか
合意された自販機設置日にオペレーター担当者と設置業者が作業を行います。設置の際は、地震などを想定し、事故防止のための措置がされます。
機械の据え付けや中味商品の投入にかかる時間は1時間程度ですが、商品が適温になるまでに2時間から3時間必要なので事前に自販機内でタイマーをセットします。タイマーをセットすると、解除されるまでは「準備中」や「売切」のランプが点灯し、お金を入れられないようになります。解除されたら、いよいよ自販機ビジネスの開始です。
自販機は100V電源がない場所には設置できません。
設置したい箇所に電源がない場合、工事によって設けることができますが、それも難しい場合は別の場所にする必要があります。延長コードを使えばよいのでは、と考える人もいますが、漏電につながるため絶対NGです。
なお、電源工事はフルオペレーション方式の場合、オペレーターが行ってくれます。一方、セミオペレーション方式の場合は、自分で工事の手配をし、費用も自分で負担する必要があります。
セミオペレーション方式の場合、自分で自販機を購入することになります。
その際、中古の自販機にする場合は電気料金の安い省エネ型を選ぶのはもとより、取引成立後の責任確認(故障の補償の有無など)を必ず確認しましょう。売り切りの契約は要注意です。
また、メンテナンスや設置のサポートをしてくれる自販機関連企業が販売しているものをおすすめします。
食品自販機の場合、屋外向けに作られたタイプもありますが、種類は非常に少ないのが現状です。売上を上げるにも駅、高速SA・PA、大型ショッピング施設、競技場、遊園地クラスの人流が必要です。そのため、個人が土地活用の一環として設置する機械としてはあまりおすすめできません。
冷凍食品自販機も屋外で使用可能なタイプがありますが、投資費用が飲料に比べて大きく(購入がほとんどです)、販売商品と仕入元の選定にも手間がかかります。ただし、適したロケーションならば地元飲食店との協業も検討でき、より大きなビジネスになる可能性があります。
アパート経営の場合、敷地内に居住者向けとして自販機を設置する例は珍しくありません。ただし、販売につなげるためには、居住者以外の一般利用者も購入しやすいロケーションであることが重要です。
自動販売機ビジネスは、自販機を継続して利用する人がいることで成立します。
「餅は餅屋」の観点から多くの経験を踏まえて運営している飲料会社や、総合オペレーターからの助言や提案を受け入れることで正しい判断につながりますが、それぞれの地域には所有地での自販機活用ノウハウを充分備えた不動産会社もあります。そのような不動産会社へ相談するのもひとつです。また、インターネットの土地活用プラン一括請求サービスを活用すれば、一度に複数社からの提案を受けることができるので、活用を検討してみるのもよいでしょう。
この記事を読んだ人が、良きパートナーとなり得るオペレーターと契約を締結し、「三方(利用者・オペレーター・オーナー)よし」となるように心より願っています。
(記事は2024年2月1日時点の情報に基づいています)