目次

  1. 1. 秋田すぎが植わった山を相続 どうすれば
  2. 2. 相続した実家を売却し200万円の税金 節税できたのに…
  3. 3. 一定額以下の財産なら、相続税はゼロ円
  4. 4. 老後の生活に影響が出ない程度に、相続税対策を
  5. 5. 対談後記 「知ったかぶりせず 税理士に相談します」

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菊池編集長は57歳。定年後の生活が近くなるにつれ、自身の「終活」や「相続」も意識し始めています。そんな菊池編集長の悩みの一つが、父親から相続した5㌶にも及ぶ秋田の山です。秋田すぎが植わっているものの、利用も売却もできぬまま放置してあります。自治体に寄付できないかと検討しましたが、市からは「道路に面しておらず、利用価値がないため無理です」と断られてしまいました。

菊池:こうした利用価値のない山林や不動産を相続して困っている人はたくさんいると思います。どうすればいいでしょうか?

相原:お金を払えば山林を引き取ってくれる業者もあるので、相談する手もあります。ですが基本的には、手放すことが困難なのが現実だと思います。一つ朗報があります。来年4月以降、不要な土地の所有権を放棄して、国庫に帰属させる制度が創設される見込みです。

菊池:国がもらってくれるってことですか? やった!

相原:ただし、無料で受け取ってもらえるわけではありません。10年分の管理費用相当額の負担金の納入が必要になります。

菊池:持参金か。仕方ない。

相原:この制度は、相続により取得した土地が対象になります。また、建物が残っていたり、境界が明らかでなかったり、崖があったりする土地は要件を満たしません。

菊池:所有する森林の境界もわかんないです。崖もありそうだし。

相原:そうなると、ハードルが高いかもしれませんね。

菊池:悔やまれるのは、父親が元気なときに「相続のこと、ちゃんと考えておいて」と会話しなかったことですね。でも、死んだ後の話は親とはしづらくて、そのままにしてしまった。そのツケが今、回ってると思います。自分の子どもたちに、この山林をさらに引き継ぐわけにもいかないし、困ったなぁ。

菊池編集長の初めての相続体験は17年前のこと。父が他界し、福島県内の実家を相続しました。3年前に1150万円でその家を売却し、仲介料50万円を差し引いた1100万円を、きょうだい3人で山分けに。すると翌年、譲渡税が200万円ほどかかったそうです。

菊池:きょうだいは3人なのに、支払った税金のことを考えると、4人いるかのような気分になりました。何かできることはありましたか?

相原:いくらで父親が自宅を購入したかが記された書類は残っていましたか? 例えば、売買契約書です。

菊池:なかったです。

相原:なるほど、それで譲渡税が高くなったんですね。譲渡税は、不動産を売却して得た利益にかかる税金です。利益は、不動産の売却額から取得費などの経費をさしひいて計算します。購入額がわからない時は、売却額の5%しか取得費として認められません。

菊池:えー。1150万円で売却したので、その5%である約58万円しか取得費としてみなされないってことですか。約1000万円もの売却益が出たことになってしまったのか。

相原:はい、(5年を超えて保有する不動産の)譲渡税の税率は約20%ですので、税額は200万円ほどになります。

菊池:極端に言えば、実家の購入費が1150万円だったら、譲渡税はゼロ円だったということですか。

相原:建物の価値は減価されるのでそう単純ではありませんが、売却費1150万円に対し、取得費が仮に1000万円で仲介費が50万円だったとすると、売却益は100万円です。そのうちの約20%に譲渡税が課せられるので、20万円で済みましたね。

菊池:180万円あまりも違いますね。

相原:大事なことは、自宅の売買契約書や、境界線を示した書類を残しておくことです。
親は子どもたちにどこにその書類があるのか、伝えておくとよいでしょう。子どもの立場だったら、親に聞いて下さい。

菊池:私みたいに、契約書が見つらなかった場合はどうすればいいんでしょうか。

相原:購入時にローンを組んでいれば、不動産登記簿の「乙欄」にある債権額から購入資金を類推するなどの手はあります。

菊池:そうなんですね。知らないことばかりだなぁ。自分で確定申告なんてせず、税理士さんに相談すれば、節税になったかもしれないですね。しまったなぁ。

森:ほかに相続した不動産で注意することは?

相原:古い建物が残っていると売却しづらいと考えて、すぐに建物を解体しないことです。更地にしたのはいいけど、土地がなかなか売れないケースは困ります。更地にすると、固定資産税が6倍にもなりえますので、慎重な検討が必要です。

森:不動産は金額も大きいから、相続時にもたくさんの相続税がかかりますよね。

相原:そうですね。もっとも、いろいろな特例があります。まず活用できるのは、「小規模宅地等の特例」です。亡くなった人の自宅の土地は、配偶者か、同居していた親族が相続すると、評価額が8割引きになります。5000万円の土地なら、1000万円で評価されます。

森:この制度は知っておきたいですね。

相原:使える面積は、330平方メートルまでです。この特例を使うことで、相続した遺産の金額は基礎控除以下になり、相続税がゼロ円になる人もたくさんいます。

菊池:基礎控除とは?

相原:一定額以下の相続財産だったら、相続税はかかりません。基礎控除は、その「一定額」のことです。相続する人の数によって、この金額は変わります。

菊池:私が亡くなった時、遺産は妻と、子ども3人が相続する予定です。

相原:基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されますので、菊池さんの場合、5400万円を超えなければ相続税がかかりません。

相原:また夫婦間の相続には、1億6000万円までは相続税はかかりません。

菊池:配偶者が全額相続するのが、一番よいってことですかね!?

相原:いえ、そう単純ではありません。確かに、遺産が1億6000万円以下の場合、全額を妻に相続させたら税金はゼロ円です。しかし、妻が亡くなった後、子どもたちの相続税が高額になる恐れがあります。

菊池:どういうことですか?

相原:ポイントの一つが相続人の数です。たとえば菊池さんが亡くなった場合、相続人は計4人います。しかし、妻が亡くなった時、相続人は3人になります。相続人が減るほど、基礎控除は減るので、相続税は高くなる可能性があります。ほかにも、配偶者控除が使えなくなりますし、子どもが独立してほかの場所に住居を構えていたら「小規模宅地等の特例」も使えないなど、使える特例や控除が少なくなります。こうしたことをトータルで考える必要があります。

森:配偶者が亡くなった時の「一次相続」と、両親いずれもが亡くなった時の「二次相続」の両方をあわせて相続対策を考えるのが大切なんですね。ただ、一般の方が自力でここまで考えるのは難しそうです。やはり、相原さんのように専門家に相談するのが大切ですね。

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森:基礎控除を超える資産がある方々は、どのような生前対策をすればよいでしょうか

相原:子どもや孫への生前贈与を活用する方法があります。110万円以下なら贈与税は非課税です。さらに贈与から3年を過ぎた分は、相続財産に含める必要がありませんので、実質的に相続財産を減らせます。ただし、この生前贈与について法改正で変更するという話があります。贈与時には贈与税が課税されないものの相続時に課税されるとか、亡くなる前の10年以内の贈与は相続財産に含めて計算されるとかいう話がでています。そのため、改正の内容によっては、こうした対策はできなくなります。

森:なるほど。ほかに利用できる制度は?

相原:子や孫への教育費の贈与であれば1500万円まで贈与税を非課税にできる特例があります。子や孫の住宅取得の援助も非課税でできます。

森:こうした制度を活用し、どんどん生前贈与をすれば、持っている資産を減らせるので、相続税が減らせるということですね。

相原:注意しないといけないのは、相続税対策をし過ぎて、自分の老後の生活が苦しくなるケースがあることです。生前贈与を繰り返し、自分の生活費が足りなくなったという人もいます。相続税対策は、老後の生活に影響を与えない範囲でしてください。

森:お話を聞きながら、税理士に相談することの大切さを改めて感じました。まず無料相談を活用するのも手だと思うのですが、どの税理士に正式に依頼するかどうか、どういった観点から決めればよいでしょうか。

相原:たくさんの相談実績がある税理士を選ぶのも手ですが、相談者と税理士との相性も大事です。財産という極めてプライベートなことをオープンしないといけないので、無料相談時に「この人なら信頼関係できるな」「話しやすいな」と感じられるかどうかを判断基準にしてもらえたらよいと思います。

税金の取材は何度もしてきたので、知ってる気になっていました。WEBでの確定申告の経験もあり、なんとなくやれてしまったのが落とし穴でした。相原さんとの対談を通し、相続にはいろんな制度があることを知り、目から鱗(うろこ)が落ちました。生半可な知識や知ったかぶりでお金を損したのでは、元も子もありません。妻と子ども3人、孫が4人いますので、人生後半でお金を無駄にすることはできません。「餅は餅屋」。次回、難しい税金の話に直面したときは、迷わず税理士さんに相談することに決めました。(菊池)

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