目次

  1. 1. 山林の売買相場の調べ方
  2. 2. 山林の農地法の許可は必要か
  3. 3. 山林でも売買契約書には印紙が必要
  4. 4. 山林売買後は買主の届出が必要
  5. 5. 山林売買における制限
  6. 6. 山林売買による税金
  7. 7. まとめ

山林は土地総合情報システムを使うと相場を調べることができます。
山林の取引相場を確認するには、トップページから「不動産取引価格情報検索」をクリックします。

次に、「種類を選ぶ」の中から「林地」をクリックし、「地域を選ぶ」で調べたい地域を選択していきます。

例えば「茨城県常陸太田市」で絞り込んで「この条件で検索」をクリックすると、以下のような取引事例が羅列されます。

土地総合情報システムは、国土交通省が売買当事者に対してアンケート調査を行った結果に基づいたデータベースです。
実際に行われた取引の価格であるため、相場の把握に役立てることができます。

山林は基本的に農地とは異なるため、原則として農地法の許可は不要となりす。
農地法の許可とは、農地を売るための許可のことです。

ただし、例外的に山林でも農地法の許可が必要となることもあります。
農地法の対象としている農地は登記簿の地目で判断されるものではなく、現況が「耕作の目的に供される土地」であるかどうかで判断されます。
また、休耕地や果樹園、竹林の育成地、林業種苗地も「農地」に該当します。

よって、以下のケースでは山林は農地に該当し、売却する場合には農地法の許可が必要です。

【農地法の許可が必要となるケース】

  • 登記簿の地目が山林で現況が田・畑等の農地のケース
  • 果樹園、竹林の育成地、林業種苗地
  • 雑木林のような山林状態になっている休耕地

山林が上記の農地に該当する場合、単純に売買するのであれば「農地法3条許可」が必要となります。
また、農地を農地以外に転用を伴って売買する場合、「農地法5条許可」が必要です。

農地に該当する山林のケースにおいては、例えばソーラー発電用地として売買する場合は、転用許可(農地法5条許可)が必要になります。

山林でも売買契約書には印紙が必要です。
不動産の売買契約書は印紙を貼らなければならない課税文書とされています。
印紙税額は売買契約書に記載する金額によって決まっており、その税額は下表の通りです。

※軽減税率は2022年3月31日までの売買契約書で適用
※軽減税率は2022年3月31日までの売買契約書で適用

山林売買後は買主に以下のいずれか届出が必要です。

【山林売買後の買主の届出】

  • 森林法による届出
  • 国土利用計画法による届出

(1)森林法による届出

森林の土地の所有者となった人は、購入した森林の面積に関わらず、土地の所有者となった日から90日以内に市町村長への届出が必要です。
届出の対象となる森林は、都道府県が策定する「地域森林計画」の対象となっている森林となります。

ただし、国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している買主は、森林法の届出は不要です。

(2)国土利用計画法による届出

山林か否かに関わらず、一定の面積を超えた土地を購入した人は国土利用計画法の事後届出が必要です。
届出対象となる土地の面積は以下の通りです。

山林は面積が大きいことから、国土利用計画法の届出の面積要件に該当してしまうことがよくあります。

国土利用計画法の届出先は市町村の窓口であり、契約をした日を含めて14日以内に届け出ることが必要です。

山林の売買は、法律上の制限は特に存在しません。

【保安林も売買の制限はない】

保安林であっても自由に売買することは可能です。

保安林とは、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するために、農林水産大臣または都道府県知事が指定した森林のことです。
保安林は伐採等に関しては一定の制限はありますが、売買については自由です。

【仲介手数料の制限もない】

宅地建物取引法上の宅地でもないことから、「仲介手数料の制限もない」ことになっています。

法律上の仲介手数料はいくらでもいいということになりますが、商習慣として宅地と同じ計算方法が用いられることが一般的です。

参考までに、宅地における仲介手数料の上限額の計算式を以下に示します。

山林売買に伴う税金は、「林業を行っていない場合」と「林業を行っている場合」の2つのケースで生じる税金が異なります。

【林業を行っていない場合】

林業を行っていない場合は、通常の不動産を売却したときと同じ考え方となり、譲渡所得に対して税金が課税されます。
譲渡所得とは売却益のことであり、その計算式は以下の通りです。

・譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用

譲渡価額は、売却価額のことです。
取得費は山林の購入額になりますが、購入額がわからない場合は概算取得費を用います。
概算取得費とは「譲渡価額×5%」で計算されるものです。
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税などの売却に直接要した費用となります。

税金は、譲渡所得に対して税率を乗じて計算します。

・税金=譲渡所得×税率

税率は山林の所有期間によって決まり、売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」の税率を用います。
相続で引き継いだ山林を売る場合、所有期間は親の所有期間も引き継ぎます。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

【林業を行っている場合】

林業を行っている場合は、立木等の売却で発生する山林所得に対して税金が生じます。
山林所得の計算式は、以下の通りです。

・山林所得=総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)

総収入金額とは、立木等の売却額のことです。
必要経費とは、植林費などの取得費のほか、下刈費などの育成費、維持管理費、伐採費、搬出費、仲介手数料等が該当します。

税金は、「5分5乗方式」と呼ばれる方法で求められ、その計算式は以下の通りです。

・山林所得の所得税額=山林所得×5分の1×税率×5

税率は「山林所得の5分の1」に乗じた額によって決まり、その「山林所得の5分の1」に乗じる税率は以下の通りです。

以上、山林の売買について解説してきました。
山林の相場は「土地総合情報システム」で調べることができます。

山林の売買では、原則として農地法の許可は不要ですが、現況農地や山林状態になっている休耕地等は農地法の許可が必要です。

また、地域森林計画内の山林の売買では買主が所有者となった日から90日以内に市町村へ事後届出をしなければいけないことになっています。
山林の売買には特に制限はなく、保安林であっても自由に売買することが可能です。

税金に関しては、林業を行っていない人が売却を行うと所得税等が生じます。
山林売買の概要がわかったら、早速に売却の準備に取り掛かってみましょう。

(記事は2022年1月1日時点の情報に基づいています。)

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