目次

  1. 1. 遺族年金は2種類ある
  2. 2. 子のいる妻が死亡したら「遺族基礎年金」
  3. 3. 共働きの妻が死亡したら「遺族厚生年金」
    1. 3-1. 遺族厚生年金は男女で「配偶者」の条件が異なる
  4. 4. 妻が死亡しても遺族年金がもらえないケースとは
    1. 4-1. 保険料納付要件を満たせなかった場合
    2. 4-2. 生計維持関係が認められない場合
    3. 4-3. 夫が再婚した場合
    4. 4-4. 夫が老齢年金を受給している場合
  5. 5. まとめ 専門家に相談を

国の年金制度は2階建てとなっています。1階部分は20歳から60歳までのすべての国民が加入する国民年金(基礎年金)、これに加えて会社員や公務員が加入する2階部分の厚生年金があります。遺族年金も遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類あり、亡くなった人の年金加入歴や受給要件に応じて支給されます。

遺族基礎年金は、死亡した人(今回の場合は妻とします)が以下の要件に当てはまる場合に、死亡した妻に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れる年金です。

  1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
  3. 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき※
  4. 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき※
    ※保険料納付済み期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である場合のみ

「子」とは、死亡当時、婚姻をしていない以下のいずれかに該当した者となります。

  • 18歳になった年度の3月31日までの間にある
  • 20歳未満であって障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある

つまり、子どもが高校生になる以前に妻が亡くなってしまった場合には、遺族基礎年金を夫が受け取る可能性が高いと言えます。夫が受け取る場合の遺族基礎年金の金額は78万900円(令和4年1月現在)に、子の人数によって金額が加算されます。

遺族厚生年金は、死亡した妻が以下のいずれかの要件に当てはまる場合に、死亡した人の遺族が受け取ることができます。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  2. 厚生年金の被保険者であった期間に初診日がある傷病により、初診日から起算して5年以内に死亡したとき
  3. 1級または2級の障害厚生(共済)年金の受給権者が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
    ※保険料納付済み期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である場合のみ

妻が仕事をしていた場合には、遺族厚生年金を受け取れる可能性があり、受け取れる遺族は、死亡当時、死亡した人によって生計を維持していた①配偶者または子、②父母、③孫、④祖父母の順で、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。

一方で、遺族厚生年金でいう「配偶者」は、妻と夫で条件が違っていることに注意が必要です。配偶者が夫の場合には、妻が死亡した当時に55歳以上でなければ対象とならず、仮に55歳以上であったとしても、受給開始は60歳から※となります。対して配偶者が妻の場合には、年齢等の条件はなく、寡婦加算という加算要件に合致する場合には金額が上乗せされることもあります。このように受け取るのが妻か夫かによって違いが生じてしまっているのが現状です。
※遺族基礎年金を併せて受給できる場合は、60歳より前から受給可能

遺族厚生年金の金額は、死亡した妻が厚生年金加入期間中の報酬額と加入期間に応じて計算される金額となり、人によって異なります。

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では、妻が死亡したときに夫が遺族年金を受給できないケースとは、どのような場合でしょうか。

死亡した妻の要件として、一定期間、年金の保険料を納付済みであることが必要です。こちらに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
参考:遺族年金がもらえないケース 年金の種類別に社会保険労務士が解説│相続会議

遺族年金は、亡くなった人が「生計を維持していた」遺族に対して支給されるもので、この生計維持には以下の要件を満たす必要があります。
ア.年収850万円未満または年間所得655万5000円未満(前年あるいは前々年)
イ.死亡した方と住民票上同一世帯であった、あるいは別居でも家計を一にしていた

夫が家計を維持するために収入の多い仕事に就いているような場合には、ア.の要件を満たすことができず、遺族年金を受け取れないということが起こり得ます。ただし、5年以内に年収が850万円未満となる認められる事由(退職など)がある場合は、受給可能となることもあります。

遺族年金には受給権の消滅に関するルールがあり、「婚姻したとき」も受給権が消滅することになっています。こちらも、過去の記事をご覧ください。
参考:再婚すると遺族年金をもらえない? 受け取れるケースや手続きを解説│相続会議

夫が65歳以上で自身の老齢厚生年金を受給し始めていて、妻の遺族厚生年金が発生した場合には、支給額が調整されます。基本的には、自身の老齢厚生年金は全額支給され、その老齢厚生年金に相当する額分の遺族厚生年金が支給停止となります。

例えば、夫自身の老齢厚生年金が80万円で、妻の遺族厚生年金が100万円だった場合、遺族厚生年金としては80万円が支給停止となり、残りの20万円が支給されるということです。逆を言うと、自身の老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも金額が高い場合には、遺族厚生年金の全額が支給停止となるため、実際は受け取れないということになります。

遺族年金を受け取れるようになった場合の心配事として税金があります。老齢年金とは違い、遺族年金については課税されることは一切ありませんのでご安心ください。

以上のように、妻が死亡した場合に夫が遺族年金を受給することもありますが、どちらかというと夫の方が受給できないケースが多いのが現実です。とはいえ、実はもらえるはずだったものを逃してしまうといったことが無いように、「自分では判断がつかない」「請求方法がわからない」といった場合には社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

(記事は2022年2月1日時点の情報に基づいています)