アパート建て替えの費用とは? 退去時や建築費の相場を知ろう
アパート経営は相続対策の一つです。ただし、アパートが古くなると、「借入金が減る」「空室が多くなる」といった理由から相続税の節税効果が薄まります。節税効果を回復させるには、古くなったアパートを相続前に建て替えるのが望ましく、アパートの建て替え時には、退去費用や解体費用などが必要となります。アパート建て替えの費用についてわかりやすく解説します。
アパート経営は相続対策の一つです。ただし、アパートが古くなると、「借入金が減る」「空室が多くなる」といった理由から相続税の節税効果が薄まります。節税効果を回復させるには、古くなったアパートを相続前に建て替えるのが望ましく、アパートの建て替え時には、退去費用や解体費用などが必要となります。アパート建て替えの費用についてわかりやすく解説します。
最初にアパートの建て替えの流れについて解説します。アパートの建て替えの全体像を示すと下図のとおりです。
アパート建て替えには、大きく分けて「退去費用」「解体費用」「建築費用」の三つが発生します。
建て替えには大きな投資が発生します。そのため、まずは立ち退きに着手する前に建て替え後のプランをしっかり検証したうえで建て替えの決断をすることがポイントになります。たとえば2階建てアパートの場合、解体工事の期間は約1カ月程度となります。建て替え後も2階建てアパートを建築する場合、建築工事期間は約3~4カ月程度と考えましょう。
一方、立ち退きに関しては、相手次第でもあるため、期間は読めません。残りが1、2戸で、すんなり決着がつく場合は3~6カ月程度で終わることもあります。対照的に、裁判までもつれてしまうような場合は、退去してもらうまで2~3年程度かかることもあります。
建て替えは投資が発生するだけでなく、期間が読めない部分も少なくありません。そのため、退去交渉に臨む前に建て替え後の収益性をしっかりと見極めたうえで着手するようにしましょう。
アパートに普通借家契約による入居者が残っている場合、退去費用、いわゆる「立ち退き料」が必要となります。普通借家契約とは更新ができる契約のことであり、賃貸借契約書に更新に関する規定があれば、その契約は普通借家契約です。
普通借家契約では、借地借家法第28条によって貸主から借主に契約解除を申し出る際は、「財産上の給付」と「正当事由」の二つが必要なことになっています。財産上の給付とは、いわゆる立ち退き料のことであり、正当事由とは、契約を解除するに値する正当な理由のことを指します。
正当事由には、たとえば建物を自分で使う必要がある(自己使用の都合性)などが挙げられます。通常、アパートが古くなったから建て替えたいという理由は、正当事由に該当しないとされています。
アパートの建て替えのような理由は、正当事由として弱いため、弱い理由を補完するために立ち退き料を支払うことになります。アパートの退去費用の相場は、1戸あたり「50万円~100万円程度」となることが多いです。
なお、立ち退き料は、下記のとおり、「移転に伴う実費」と「移転先の増加負担」の二つを合算したものとされています。
【立ち退き料の構成要素】
(移転に伴う実費)
・引っ越し代
・引っ越し先の物件の仲介手数料
(移転先の増加負担)
・移転先賃料と現行賃料の差額の1~1.5年分
・礼金
・敷金の不足分
「移転先賃料と現行賃料の差額」については、おおむね1~1.5年分を負担することが標準的です。
以下に、退去費用の計算の参考例を示します。
【前提条件】
引っ越し代:15万円
現在の家賃:8万円
現在、預かっている敷金:16万円
周辺の標準的な家賃相場:10万円
周辺の標準的な礼金の月数:1カ月
周辺の標準的な敷金の月数:2カ月
家賃差額の補償期間:1年
【計算例】
(移転に伴う実費)
引っ越し代は前提条件より15万円となります。
引っ越し先の物件の仲介手数料は、家賃の1カ月分が通常であるため、標準的な家賃相場より10万円とします。
移転に伴う実費 = 引っ越し代 + 仲介手数料
= 15万円 + 10万円
= 25万円
(移転先の増加負担)
前提条件より、移転先賃料と現行賃料の差額は1年分を補償します。
差額家賃の補償 = (移転先賃料 - 現行賃料) × 12カ月
= (10万円 - 8万円) × 12カ月
= 24万円
礼金は1カ月分が標準月数であるため、10万円(家賃相場10万円の1カ月分)と試算します。
敷金は2カ月分が標準月数となるため、20万円(家賃相場10万円の2カ月分)が相場です。ただし、現在貸主が預かっている敷金が16万円あり、この敷金は返還するため、20万円と16万円の差額である4万円を補償することになります。
移転先の増加負担 = 差額家賃の補償 + 礼金 + 敷金の差額
= 24万円 + 10万円 + 4万円
= 38万円
よって、立ち退き料(退去費用)は以下のように算出されます。
立ち退き料 = 移転に伴う実費 + 移転先の増加負担
= 25万円 + 38万円
= 63万円
上記の求め方は、一つの考え方に過ぎず、絶対的な正解ではありません。立ち退き料は、あくまでも交渉ごとであり、双方の合意によって定められるものであることを覚えておきましょう。厳密に求めるというよりは、50万円~100万円の範囲のなかで妥結されれば常識の範囲内と思われます。
なお、立ち退き料を安くするには、残戸数を少なくしてから交渉を始めることが最大のコツと考えられています。建て替え予定のアパートは、自然退去が発生したらその後は埋めず、残戸数が1、2戸程度になった段階で交渉を始めると、立ち退き料の総額を抑えられます。また、残戸数が少なくなれば、立ち退きに要する期間も確率的に短くなります。
アパートの解体費用の相場は、一般的には以下のような水準となります。
「1平米」は0.3025坪ですので、平米数に0.3025を乗じると坪面積が算出できます。
木造アパートで延べ床面積が100坪の場合には、解体費用は400万円~500万円程度かかるということになります。
解体費用は、相見積もりを取ると解体工事会社によってかなり金額が異なります。たとえば、解体重機をリースしている会社よりも、解体重機を保有している会社のほうが金額は安くなります。
解体工事費用を安くするには、相見積もりを取ることが最も効果的です。したがって、必ず複数の見積もりを比較して検討することをおすすめします。
アパートの建築費用の相場は、一般的には以下のような水準となります。
2階建てアパートの場合、構造は「木造」または「軽量鉄骨造」が採用されることが多いです。3階建て以上のアパートになると、構造は「重量鉄骨造」または「鉄筋コンクリート造」が採用されることが一般的となります。
建築費は、3LDKのような広い物件よりも、1Kのような狭い物件のほうが高くなります。狭い間取りにすると、面積当たりの戸数が増え、キッチンやバス、トイレ等の住宅設備の数が増えるためです。
ただし、賃料単価は3LDKのような広い物件よりも、1Kのような狭い物件のほうが高くなります。そのため、竣工後の収益性は1Kのような狭い間取りのほうが高いです。
建築費用も安くするには、相見積もりを取ることが最も効果的となります。
アパートは、相続会議の土地活用プラン請求サービスを使うと、複数のハウスメーカーから無料でプラン提案を受けることができます。プラン提案では、初期費用や設計図面、竣工後の収支シミュレーションなど、アパート経営で知りたい全ての数字を提示してもらえます。工事費と収支を簡単に知ることができますので、立ち退きを着手する前にぜひご利用することをおすすめします。
以上、アパート建て替えの費用について解説してきました。
おさらいになりますが、アパートの建て替え費用には、主に「退去費用」「解体費用」「建築費用」の三つが生じます。
退去費用は、戸数が十分に少なくなった段階で交渉を開始するのが安く抑えるポイントです。また、解体費用や建築費用でコストを抑えるには、相見積もりを取ることが効果的となります。アパートの建て替えを行うには、まずは建て替え後のプランを十分に検討することから始めてみてください。
(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)