地盤改良の費用の相場はどれくらい? 新築で知っておきたい注意点とは
調査してみないとわからない地盤改良費用は、納得しにくい費用の一つといえます。費用が判明するときは既に施工会社や設計内容も決まっており、金額交渉もしにくいことが多いようです。場合によっては100万円を超えるケースもあるため、提示された費用の妥当性を知りたい方も多いのではないでしょうか。この記事では「地盤改良の費用」について解説します。
調査してみないとわからない地盤改良費用は、納得しにくい費用の一つといえます。費用が判明するときは既に施工会社や設計内容も決まっており、金額交渉もしにくいことが多いようです。場合によっては100万円を超えるケースもあるため、提示された費用の妥当性を知りたい方も多いのではないでしょうか。この記事では「地盤改良の費用」について解説します。
目次
地盤改良とは、そのままの状態では直接基礎が不可能な場合において、必要な支持力を得るために行う工事のことです。
まず、建物の基礎は大きく分けて「直接基礎」と「杭基礎」の2種類に大別されます。
直接基礎とは、建物の基礎を直接固い地盤の上に作り、荷重を地盤の広い範囲に分散させる形式の基礎のことです。直接基礎は、支持層が浅い場合や、木造の戸建住宅等の自重が比較的軽い建物の場合に用いられます。
一方で、杭基礎とは、杭を使って建物を深い位置の硬い地盤で支持する形式の基礎のことです。杭基礎は、支持層が深い場合や、賃貸マンションなどの自重が重い建物の場合に、用いられます。
地盤改良工事は、直接基礎が不可能な場合に、基礎の下の地盤を頑丈にするための工事であるため、基本的には木造の戸建て住宅などの自重が軽くて小さな建物を建てる場合に出てくることが多いです。
土地活用で賃貸マンションやオフィスビルなどの大きな建物を建てる場合、最初から杭基礎を前提としているため、地盤改良工事ではなく杭工事が発生します。杭工事は工事費全体のうち、1割程度の金額を占めることが多くなっています。
土地活用の場合には、戸建て賃貸や小さな木造アパートなどで地盤改良工事が出てくる可能性があります。地盤改良工事には、主に「表層改良工法」と「柱状改良工法」、「鋼管杭工法」の3種類があります。
【地盤改良なし】
地盤が良好な場合は、土地の上に直接基礎が築くことができるため、「地盤改良なし」となります。地盤改良なしの場合には、地盤改良工事費用は不要です。
【表層改良工法】
表層改良工法とは、軟弱な地盤が2m程度の場合に可能となる工事で、セメント系凝固材を混ぜ合わせて強固な地盤をつくる工事です。直接基礎の下の地盤を頑丈するという意味では、最も言葉のイメージに近い工事といえます。
【柱状改良工法】
柱状改良工法とは、軟弱な地盤が2~8m程度の場合に用いることができる工事で、セメント系凝固材を地盤に注入しながら、支持地盤まで強固な柱を到達させる工事です。一見すると杭基礎のように見えますが、杭基礎ではなく、地盤改良杭と呼ばれる建物が下に沈み込まないようにするための杭となります。杭基礎では基礎と杭を一体化しますが、地盤改良杭では建物が杭の上に載っているだけという点が違いです。
【鋼管杭工法】
鋼管杭工法とは、軟弱な地盤が5~10m程度の場合に必要となる工事で、やや細い鋼管杭を埋め込んで荷重を支持地盤に伝える工事です。
地盤改良費用の相場は下表の通りです。総額は標準的な戸建て住宅を建てた場合の金額になります。
坪単価は、建物の延床面積あたりの単価で表現されることが多いです。一般的な戸建て住宅の延床面積は30坪程度ですので、坪単価は30坪程度の建物を前提に表示しています。
なお、標準的な戸建て住宅の土地の面積は40~50坪程度となります。40~50坪の土地の上に延床面積が30坪の建物が建っているのが一般的です。土地の面積に地盤改良費用の単価を乗じてしまうとかなり大きな金額になってしまいますので、戸建ての場合には延床面積からの総額で相場を把握した方が適切といえます。
この章では、地盤改良費が判明するまでの流れについて解説します。
地盤改良費の悩ましい点は、最初に金額が確定できないという点です。
家を建てる場合、ほとんどの場合、最初に複数のハウスメーカーからプランを取り寄せて検討することからスタートします。工事の概算金額を確定するために、設計内容をある程度固めることが必要です。
ハウスメーカーは設計が固まった段階で、概算見積もりを提示します。この概算見積もりの中には地盤改良費は含まれていません。理由としては、地盤調査をした後でないと、地盤改良費が分からないからです。
一般的には概算見積もりを受けたら、ハウスメーカーを選んで1社に決めることになります。ハウスメーカーを選んだら、その後に地盤調査を行います。地盤調査とは、支持地盤の深さを知る工事のことです。杭基礎が前提となっている大きな建物では、ボーリング調査と呼ばれる本格的な地盤調査を行います。一方で、直接基礎を前提としている戸建住宅では、スウェーデン式サウンディングと呼ばれる簡易な地盤調査が行われることが多いです。
スウェーデン式サウンディングの費用は5~10万円程度となっています。
地盤調査の結果、固い地盤であれば地盤改良不要です。一方で、軟弱地盤であれば、表層改良工法や柱状改良工法、鋼管杭工法のいずれかの工事が必要となり、地盤改良工事費用が提示されます。
地盤改良が必要であれば、当初の概算見積もり金額にプラスされ、最終的に請負工事金額が確定します。地盤改良費が判明するのは当初計画時よりも後となってしまうため、事前に正確な金額を把握できない点がネックとなります。なお、杭基礎となる建物を建てる場合であっても、杭工事費が確定するまでの流れは基本的に地盤改良費と同じになります。
地盤改良工事費用は、ある程度の予測によってあらかじめ予算を見込んでおくこともできます。
役所では、周辺の土地の地盤調査結果がわかる地盤資料があり、閲覧することが可能です。自治体によってはホームページでも周辺のボーリング調査結果を調べることもできます。ボーリング調査の結果は専門的でわかりにくいため、ハウスメーカーに事前に周辺の地盤調査の結果を調べてもらうことをおすすめします。経験豊富なハウスメーカーは周辺の地盤資料から、地盤改良の必要の有無を事前に教えてくれます。
この章では地盤改良費用を抑える方法について解説します。
地盤改良が必要となった場合には、ハウスメーカーの下請け業者に相見積もりを取ってもらうことがポイントです。
地盤改良は、ハウスメーカーが直接行うのではなく、下請けの工事業者が行います。地盤改良を安くするには、少なくとも2社以上の下請業者に見積もりを取ってもらい、安い方を選ぶのが効果的な方法です。下請け業者からの見積もりを必ず提示してもらい、内容をしっかり確認してから選ぶようにしましょう。
直接に地盤改良費用を抑える方法ではありませんが、予算オーバーをしてしまったら、他の工事を減額することも検討する必要があります。減額については、ハウスメーカーに「地盤改良費で増えた分の減額提案が欲しい」と伝えれば減額案を提案してくれます。提案内容で許容できるものがあれば採用し、予算に近づけてから請負工事契約を締結します。
以上、「地盤改良の費用」について解説してきました。地盤改良とは、基礎の下の地盤を固く補強するための工事です。費用は、表層改良工法なら30~50万円程度、柱状改良工法なら50~80万円程度、鋼管杭工法なら100~180万円程度となります。
地盤改良費は、設計後に地盤調査を行った後でないと正確には分かりません。予算として見込むためには、ハウスメーカーに周辺の地盤資料を事前調査してもらうことが適切です。地盤改良は、安全・安心に暮らすための必要不可欠な工事となりますので、予算を確保して、しっかりと行うようにしましょう。
(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)