頭がしっかりしている間に親子一緒に「生前整理」

実家の片付けで困っている子ども世代は、とても多いのが現状です。特に別居していると、親にとって大切なものが何なのかもわからずに、なかなか手がつけられない可能性もあります。親だけで片付けをするのは、気力体力ともに使うため難しいことがほとんどです。親も頭がしっかりしているうちでなければ片付けはできません。たとえ高齢であっても、判断能力があれば、大切なものはなにか判断ができます。また、処分する場合でも、他の相続人に親が説明することができれば、後々もめることも少ないでしょう。実家の片付けをしようとするのであれば親子で一緒にするのが良いでしょう。

【手順1】親の価値観を知り、受け止める

使っていないのは「もったいない」

戦後の「モノのない時代」に育った親世代は、モノがあれば幸せという時代を過ごしてきました。そして高度成長期に欲しい物を手にしてきました。それが幸せの1つの指標だったのです。しかしバブル期も経験し、必要なモノは全て手にしています。「もったいない」と言う言葉がありますが、物のない時代はモノを大切に使おうとすることが、ある意味「もったいない」でした。しかし現在ではその意味を変えなくてはなりません。「使っていないのはもったいない」。この考え方を親に伝えていくことが大切です。

そこで価値観の違いを見ていく必要があります。以前は1ドル360円の固定時代が長く続きました。現在は1ドル108円〜110円程度ですので、ドルは円に比べて3倍以上の価値があったといえます。女性が捨てられないトップの原因が、「高かった!」です。そこに当てはめてみても、子ども世代が親の思い入れの強さを理解する必要があります。現在買えるものでも、当時は3倍高かったというわけです。

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モノへのストーリーを聞き気持ちを受け止める

モノにはストーリーがついています。なかなか捨てられない親御さんには、そのモノに関するストーリーを語ってもらいましょう。ストーリーを話すだけで心が満足し、手放せる方も多くいらっしゃいます。つまり「自分の気持ちを受け止めてもらった!」と言う感情を大切にすることが重要になっていきます。人間は感情の生き物です。親がどのような心の動きをしているのか確認をしながら話を進めていくのが、遠回りのようですが、結局は近道になります。片づけ始めて、途中で拒絶をされないためです。

「捨てる」でなく「手放す」

「捨てる」という言葉は使わないようにします。この捨てるという言葉は親が拒否反応を起こす代表的な言葉です。「捨てる」と言う代わりに「手放す」という言葉を使います。同じ意味合いではあるのですが、「捨てる」は「子どもから捨てさせられる」と言う強迫観念が生まれやすく、「手放す」は自分が意図的に処分する意味合いが生まれやすいのです。
つまり主体的に片付けをしている→手放すことができた→部屋がきれいになっていく。これを繰り返すことで自信が生まれます。片付ける行為が、未来の明るい人生のためにする行為であることが明確になっていれば、行動に移しやすいのです。

片付けた後の人生をイメージ

子どもの都合で捨てさせられていると捉えられるのが一番問題を生じやすいのです。家を片付けて、その後どのような人生を送っていきたいのか? このイメージを作るように心がけましょう。

例えば、お友達とお茶がいつでも出来るような空間を作る。自分の新しい趣味の部屋を作る。油絵を習うとか、詩集を作るなど親が子供の頃にしたかったこと、空想していたような人生を思い描く。片付けが親の未来の明るい人生につながることを理解してもらうことが重要です。それを今なら始めることができるのです。時間と資金の余裕がある時期だからこそできることなので、それをせずに人生を閉じる事は、もったいない話です。モノを使わずに後生大事に収納していることが、モノを大切にしていることではないのです。

モノ探しの無駄な時間をなくす

本当にもったいないのは、残りの人生を自分がしたかったことに使えないことです。モノが多くなればなるほど探し物の時間が増え、自分らしく生きる時間が減っていきます。この話をいかに親にうまく伝えられるかということが大きいかもしれません。一日のうち、探しモノに使う時間は何分ありますか? その分数に365日を掛けてみましょう。無駄な時間のなんと多いことかがわかります。

【手順2】物を減らす まずは床に置いた物をなすく

親の価値観を知ったら、「大切なモノ」と「そうではないモノ」を先に聞いていきます。人によっては捨てたくないと言われる親御さんもいらっしゃると思います。一番重要なのは、親が安全に安心な状態で暮らせることです。普段暮らしている場所で床に置いた物をなくしましょう。転倒などの危険を避けるためにも、これが一番最初です。

大切なモノとそうでないモノを分ける

どうしても捨てられないという親御さんでしたら、納戸部屋に収納してもいいので、リビングと寝室・キッチンは床にものを置かないでとお願いしてみましょう。心地よく暮らせる場所ができれば、親の気持ちもスッキリとします。部屋の状態は頭の中の状態と同じです。モノがごちゃごちゃあるほど判断力が鈍ります。小さなスペースでもいいので、すっきりした空間を作ることを優先しましょう。それにより快適さを感じてもらえれば、今後減らすことも可能になっていきます。
なぜ大切なモノとそうではないモノを聞いておくのでしょうか? 遺品整理の段階になった場合に、親がいらないと言っていたモノを一気に処分することができるからです。聞いていない場合、何が大切で何を捨てたくなかったのか、親の気持ちを考えて処分自体ができなくなる子世代がいます。そうなると空き家のまま放置される現象が起きます。

社会で問題化 法整備が進む

これは社会的な問題が起きており、不審者が住んだり、庭などが手入れされずに周りに多大な迷惑を与えたり、トラブルが起こることがあります。現在は法律の「空家等対策の推進に関する特別措置法」で放置してはいけないと決まっているので、法的措置を取られることもあります。大切なモノだけでも聞いておきましょう。

抵抗感の少ないモノから始める

捨てられないと言っても、その重要度は人によって様々です。洋服なのか、食器なのか、雑貨なのか。何であれば減らしても抵抗が少ないのかを聞き、抵抗感が少ないアイテムから始めます。初めはあまり捨てられなくても気にしないでください。処分できるものが少なくても、本人にとっては減らせたということが成功体験になります。そしてそれらのものが無くても生活には全く支障がないのだということを体感してもらいましょう。

納戸部屋に仕舞うのも同じことで、それらのものが無くても問題ないことを認識させるのが最初です。「使わないのがもったいないこと」という考え方を繰り返し伝えて、使ってもらえるところに寄付することを勧めてください。介護施設ではタオル系は喜ばれます。リサイクルショップや買い取り業者を使うのもいいでしょう。ここは子どもが焦らずに、親が捨ててもいいと判断したモノを減らしていく考え方です。ここで勝手に捨てられたとなると次の工程に進みません。積極的に本人に関わってもらう。これが一番大切なことです。なるべく小さなスペースから始めると楽なので、薬箱などはいかがでしょうか? 期限の切れている薬は処分できますし、病院から処方された薬のチェックもできます。

健康でいるためにも片付ける

買い置きしている食品も、賞味期限が切れていれば捨てやすいものです。健康でいたいなら、期限の切れた食品は食べないように伝えます。乾物などはまだ食べられると抵抗されやすいですが、食べ物は身体の元を作っている大切な栄養素。元気でいるためにはサプリメントで補うのではなく、栄養があるものを食事でとりましょう。

判断に疲れたら長期戦の覚悟で

ここで人間の脳の話をしましょう。人によって異なりますが、一日に判断できる容量というのが決まっていると言われます。普段から捨てている人は、成功体験があるのでこれが要らないとわかるため、さっさと処分することができます。その時に脳の判断する部分をあまり使わずに済むのです。しかしそれまで全くやったことのない人が要る要らないを判断する事は、とても脳が疲れます。

長い時間やっていると、判断をしない、つまり捨てないという選択をする人が多くなるようです。どんなに長くても3時間までがいいでしょう。ここが限界だと思ってください。要は長期戦なのです。親にきちんとした整理の考え方が身に付いた時は、お一人でも少しずつ始められる方もいらっしゃるでしょう。その人なりの判断基準があると進みやすくなります。

1年使わなかったモノは手放す

推奨している基準は、「1年使わなかったモノは、この先何年経っても使わないので手放す」です。ただそれだとほとんどのモノが使っていないことになるかと思います。そこでもう少し広げます。過去1年以内使っていないモノで、これから先1年以内に使う予定のないもの。ここに「いつか」「どこかで」というのは入りません。これからの予定で何月何日にこういうイベントがあるから着る洋服とか、パーティーをする予定があるから使う食器など明確に期限があるものに限ります。

また押し入れの奥にあるが、出すのが面倒臭いので他のもので代用している。これも使っていないモノになります。親子で一緒に片付け始めたときに、どうしてこれは減らした方が良いのかを伝え合いながらできると一番良いと思います。長時間になると言葉数が減っていきます。子供も不機嫌になってくるので、そうなったらその日は終了としましょう。その後にちょっとしたティータイムを設けてはいかがでしょうか。

ほめることも忘れずに

「がんばったね!お母さん。スッキリして気持ちいいね!」。ほめることもお忘れなく。承認欲求を満たすと次の片付けに大きな推進力を持ちます。そして楽しい親子の会話が出来るように、美味しいおやつも持参しておきましょう。片付けの後に楽しいことが待っている。これもやる気につながります。

【手順3】動線を考える

使いづらさには、生活動線が関わります。動線とは、人が歩いたところを線で表したものをいいます。例えば、洗濯機と干す場所が近いと動線が短くて負担が少ない。1階で洗って2階に干すのは動線が悪いことになります。収納場所も同じで、お風呂から出たらすぐに下着が取れる。そんな洗面所なら楽です。大量の古びたタオルを収納するのではなく、フカフカの新しいタオルを1人あたり3枚と下着、パジャマがある棚に変えてみてはいかがでしょうか。タオルの枚数はお洗濯回数によります。毎日洗濯をするなら、予備も含めて3枚あれば十分でしょう。ただ減らせと言うより、理論的に伝えることができれば不安感はなくなります。真新しいタオルの柔らかさは、人を幸せにするものです。カピカピの堅いタオルは、心も硬くなってしまうのではないでしょうか。古びたタオルは、外回りの掃除に真っ黒になるまで使い、「ありがとう!」の言葉と共にさようならをしてください。

「遺品整理」のトラブルを防ぐために

親から大切なモノを聞いていれば、それ以外のモノはすぐに処分できるはずです。その際に、相続人の許可を得ておくとトラブルになりません。できれば親にエンディングノートに書いてもらっておくといいでしょう。証拠になります。

相続放棄の場合は手を付けない

相続放棄をする場合には、親のモノに手を付けないことです。車などは処分しがちですが、処分した時点で相続すると宣言したことになります。親に借金がありそうな場合は、念のため相続の猶予を申請しておきます。業者は3カ月を過ぎて相続人が債務から逃げられない状況になってから連絡がきます。そのため、裁判所に申し立てをすることで、相続する前に借金の有無がわかることがあります。

遺品整理を自分でやる場合、ごみ収集日を念頭にいれて日程を決めます。燃えるゴミ、燃えないゴミは収集日が決まっていますから、それに合わせて出していく必要があります。集積場が小さい場合には、大量に処分品を出すと近隣に迷惑がかかることもあります。少しずつ処分したという話もよく聞きますので、何度も実家に通うことも必要になってくるでしょう。

業者に依頼時は必ず立ち会いを

自分だけでは遺品整理ができない場合、業者に頼むことも視野にいれます。料金は様々で、産業廃棄物として処理するのと、お供養をしてから処分するのでは雲泥の差があります。ゴミ扱いされているのを見て心が痛くなり、途中で業者に帰ってもらったという話もあります。また、家ごとつぶして更地にしたら、300万円かかったというのも聞いています。少し大きな家で500万円ということも。葬式代より高い場合もありますので、死んだら処分してくれという親には費用がかかることを伝えるのもいいでしょう。

業者に任せるにしても、立ち会いはしてください。高齢者はタンス預金をかなりの確率でしています。洋服のポケットや本の間など、様々な場所からでてきます。立ち会っていなければ、親族にそのお金は戻ってこないと認識しておきましょう。

まとめ

実家の生前整理をしておくと、子どもも安心ですし、なによりも親が暮らしやすくなります。親がいきいきと暮らせる、楽しく生きがいが持てる家を目指してください。骨折をすると、コロナ禍の今は家族も面会しにくいため認知症になりやすいと聞きます。リスクを減らすためにも、生前整理を進めてください。
親が亡くなった後には、相続人の精神的、金銭的、また時間的にも負担が軽減しますので、なるべく早く、親の頭がはっきりしているうちに始めていきたいものです。

(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)