目次

  1. 1. 生前整理とは
  2. 2. 生前整理を行うにあたって
    1. 2-1. 「もの」の整理
    2. 2-2. デジタル機器など
    3. 2-3. 高齢者施設等への入居に伴う生前整理
  3. 3. 生前整理をプロに頼む場合の費用
  4. 4. 生前整理をする中で見えてきた課題をどうするか

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生前整理とは、生きているうちに自分の財産や持ち物などを整理して、不要なものや遺族が処分に困るものをあらかじめ処分しておくことです。ブームにもなっている「断捨離」という言葉が示すように、「もの」を捨てたり誰かに譲ったりして「減らすこと」が大きな目的となります。処分できなかったものについて、どれをどのように処分するかを誰かに依頼しておくことも、生前整理といえるでしょう。人生後半期に向けた身じまいです。

また、高齢になって子どもと同居したり、高齢者住宅や介護施設等に入居したりするときには、現在の家にあるものをすべて持っていくわけにはいきません。家の中がゴミ屋敷のようになってしまって、自分や家族が生活しづらい場合や、介護する人が困るという場面もあるでしょう。これらのように死後に備えるのではなく、生前に必要に迫られて荷物の処分を行うことを「生前整理」と呼ぶ場合もあります。こちらは時間との戦いです。深く考えずにバッサリと切り捨てる覚悟が必要です。

生前整理はある意味、長年の暮らしを変えることでもあります。死後の準備であるとともに、人生後半期の生活を考えるという点で、終活の中では、どんな人にも関係が深い分野です。生前整理には体力・気力が必要なので、高齢になってからではなく40、50代世代の人こそ、始めておくべきことといえるでしょう。

実際に生前整理を行うときの手順について見ていきましょう。

まずは片付けがしやすい「もの」から整理していくといいでしょう。死後整理という観点で処分に困るものとして、その人の想いがこもっているもの、例えばアルバムや写真、書籍・ビデオ・CD・DVD、趣味のもの、日記や手帳、衣類やカバン、食器類、などがあります。

それぞれを、次のように分けていきます。

①現在使っているもの ⇒ 原則として死後は処分
②手元に置いておきたいもの ⇒ 原則として死後は処分
③誰かに残したいもの・価値があるもの ⇒ 誰かに譲る
④すぐには決められないもの ⇒ 原則として死後は処分
⑤使っていないもの ⇒ すぐに処分

このように分けていくことで、ものに対する自分の愛着度を知ることができます。⑤は順次処分しましょう。家の中をすっきりさせることで、生前整理のメリットを感じられるからです。④は箱などに入れてしまいます。ものを減らすという目的であれば、④を随時見直して処分することが大切なので別にしておきます。③については、譲るのは「今」なのか「自分の死後」なのか、考えてみましょう。そして①②のうち、自分の死後に誰かに譲りたいものは、そのことを伝えておきましょう。

ものを片付ける中で、過去のこと未来のこと、そして現在の自分について考えることと思います。そういった想いや伝えたいことをエンディングノートなどに書いておきます。書くことにより、自分の想いをまとめることができます。

亡くなった後にはその人の考えていることが全くわからなくなるので、このようにものを仕分けして、自分の考えを家族等に伝えておくだけでも、家族や相続人の負担は減ります。処分するかどうか、迷うことが少なくなるからです。

人の寿命は予想することができません。高齢者だけでなく、40代50代の現役世代の方にも、生前整理を行う上では、遺された家族等の負担を減らすことを心掛けていただきたいと思います。

最近の相続、遺品整理で問題になっていることの1つに、「デジタル遺品」の処分があります。デジタル遺品とは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器と、デジタル機器内やインターネット上に保存されている情報やデータ、そしてプロバイダ・SNS・会員サイト・購入サイトの契約などです。中でも注意すべきは、情報やデータです。

こういった情報やデータは消したつもりでも簡単に復元できることがあります。完全に消去するには機器そのものを破壊し、場合によっては専門家の助けが必要となります。また、SNS等の解約には故人のIDやPWが必要なこともあります。

デジタル関係の生前整理としては、まず、所有しているデジタル機器や契約等を一覧にまとめておくといいでしょう。使っていない契約はできるだけ解約しておきます。重要な情報やデータがあるデジタル機器やサイトについては、確実に処分されるよう家族などに依頼しておくことが大切です。

IDやPWを託すときには、手書きでは間違えたり判別できなかったりすることもあります。できるだけ、パソコン等で入力したものを残しておくといいでしょう。IDやPWなどの情報は、生前は他人に知られない場所に保管し、死後には処分する人に伝わるようにしておくことが大切です。信頼できる人に託す、貸金庫などに保管しておく、専門の業者に委託するなどの方法が考えられます。

この場合は、ものは最小限に減らさざるを得ません。これからの生活で実際に使うものや、どうしても手元に置いておきたいものだけをピックアップする作業が必要です。

そうは言っても、長年の暮らしでなじんできたものを、すべて処分するのは寂しいものです。「好きなものに囲まれて暮らしたい」という気持ちを尊重することも大切です。使っていないから、不要だからと何もかも処分させるというのは、その人のためになりません。

そういう時には、持っていけないもので処分したくないものは、トランクルームやレンタル倉庫などに保管しておくという選択肢もあります。たとえ、現実的には二度と見ることや使うことがないものでも、いざというときには取り戻せるという安心感につながります。

高齢になると生前整理をすべて自分で行うのは大変です。高齢の親の生前整理の場合には、可能であれば家族が、それが難しい場合は生前整理の専門家や生前整理業者に頼む方法もあります。

生前整理を依頼者と一緒に行う専門家(整理収納アドバイザーなど)に頼む場合には、アドバイス料・コンサルタント料は、おおむね日額1万円程度からです。複数人の手助けが必要であれば人数分の金額がかかると考えてください。不用品の処分は自分でゴミ処理場に持ち込むなら無料あるいは少額の手数料で済みます。自治体によっては取りに来てくれる場合もあるので、確認してみてください。処分を業者に頼む場合には量によって数千円から数万円かかります。

自宅を処分して高齢者施設等へ入居するために、家具も含め室内のものをすべての処分を依頼する場合には、数万円~数十万円かかります。遺品整理業者が生前整理業務も行うことが多いので、遺品整理の費用とほぼ同じくらいと考えてください。

遺品整理の場合、それほど大きくない家でも、押し入れなどにものが詰まっているような状態であれば、20万~60万円くらいの費用はかかるのが現実です。生前整理で少しずつものを減らしておくことは、遺品整理にかかる費用を減らすことにもつながります。

プロに頼むには高額の費用がかかるので、事前に複数業者から見積もりを取り、どこまでやってくれるのか、しっかり確認しておきましょう。

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生前整理には、相続など自分が亡くなったあとのことを意識するようになるという効果もあります。生前整理を行ったことで見えてきた課題は、その分野の専門家に相談してみるといいでしょう。相続では勘違いが悲劇を生むこともあるので、遺言を書く、相続税対策を行う、などの相続対策の必要性を感じたら、弁護士や司法書士、税理士、その他相続の専門家などのプロのアドバイスを受けることをお勧めします。

親に相続の話を切り出すのは財産狙いかと思われるようで難しい、という声を聞きます。逆の立場で自分がお子さんから「相続の準備をして」とだけ言われたら、嫌な気持ちになるのではないでしょうか。

そういうときには、まず自分が生前整理を行い、その経験を活かして親の生前整理を手伝ってみてはいかがでしょうか。生前整理によってこれからの暮らしの見通しを立ててもらった後でなら、スムーズに相続のことも話し合うことができるかもしれません。

(記事は2020年10月1日時点の情報に基づいています)

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