目次

  1. 1. 終活でお墓を準備するメリット
    1. 1-1. メリット1:自分の希望が反映され、遺族の負担も軽減
    2. 1-2. メリット2:相続税の軽減
  2. 2. お墓を選ぶポイントは?
    1. 2-1. お墓の跡継ぎがいるか
    2. 2-2. 宗教
    3. 2-3. 予算
  3. 3. お墓を決める際に注意したいこと

かつてお墓というのは、家制度の象徴ともいえる存在でした。それぞれの家には先祖代々の墓があり、それを次世代が引き継いでいきます。子どもがいない家は養子を迎えて、家と墓を守っていきました。長男など跡継ぎが先祖代々のお墓を受け継ぎ、跡継ぎ以外の人は同じ場所や移り住んだ場所でお墓をつくり、それを次世代に引き継いでいくことが一般的でした。

しかし、現在では家制度は形骸化し、生涯結婚しない人や子どもを持たない人も増えています。お墓を誰も引き継ぐ人がいないケースや、一人で複数の親族のお墓を管理しているケースも増えています。遠い故郷にあるお墓は引き継ぎたくないと、きょうだいでお墓を押しつけ合うということも起こっています。

こういった時代背景もあるため、終活において「お墓をどうするか」を決めておくことは、重要な項目の一つとなっているのです。

生前にお墓を準備したり、方向性を決めておいたりすることで、自分の希望どおりに埋葬してもらえる可能性が高くなります。同時に、遺族の負担も減らせます。

まったく準備がなければ、遺骨をどうするかで遺族が悩むことになります。先祖代々のお墓がある人でも、お墓のある場所が遠くて墓参りに行くのは時間的にも経済的にも負担が大きいケースもあるでしょう。そのお墓を別の人が管理している場合、納骨を断られることもあります。従来型のお墓を新規に購入する場合には、その購入費や管理を誰が担うのかで遺族でもめる可能性もあります。

「どのような方法での埋葬を希望しているのか」「生前に購入した墓があるなら、それはどこにあるのか」「納骨や墓の管理を誰に頼むのか」ということをあらかじめ整理して、遺族に依頼しておきましょう。

二つ目のメリットは、相続税の軽減です。墓地の権利や墓石は、相続税非課税なので、生前にお金を払って準備しておけば、その分に相続税はかかりません。ですから、相続税を軽減できるという利点があります。

「遺骨は必ずお墓に納めなければいけない」という法律や決まりはありません。ご夫婦のどちらか、あるいは親や子が亡くなったときに、残ったほうが亡くなるまで自宅に遺骨を置いておくという人も増えています。遺骨が収納できる仏壇なども販売されています。ただし、いずれはどこかに納める必要が出てくるわけですから、そのときのことを含めて考えてみましょう。

お墓には以下のように三つの役割があります。

① 遺骨の収納場所
② 遺族が故人を偲ぶ場所
③ 自分や故人が生きた証

遺骨の収納場所としては、一般的な墓地のほかに、永代供養墓や集合墓、共同墓、納骨堂などがあります。また、海洋散骨や樹木葬のように、海や大地に粉末にした遺骨を撒く方法もあります。

遺族が故人を偲ぶ場所としての役割も見逃せません。お墓参りで故人に語りかけるということは、多くの人が行った経験があると思います。共同墓や納骨堂でも、花や線香を手向ける場所を設けているところが多くあります。

自分や故人が生きた証として、お墓がほしいという人もいます。通常は墓石や墓誌に氏名を刻みますが、共同墓や納骨堂でも、納骨した人の氏名が書かれたプレートを残せるところもあります。

こういった役割を念頭におきながら、次のようなポイントでお墓や埋葬方法を選ぶと良いでしょう。

従来型の一般的なお墓(家墓/墓地に墓石を建てるタイプ)は、お墓を引き継いで管理する人がいることを前提としています。

墓石は購入するものの墓地は借り物なので、購入時には「永代使用料」を払って墓地を借りる権利を入手し、その後毎年、お墓や墓地の「管理費」を支払います。寺院墓地(檀家のためのお墓)であれば、「お布施」などのお寺に関連する支払いや、寺の行事への参加を求められることがあります。

子どもなどに継がせることができるお墓には次のような選択肢があります。

<跡継ぎがいるお墓、子などに引き継げるお墓>

①家墓(いえはか)…墓地を契約して、そこに墓石や墓碑を建てます。

②納骨堂…遺骨を安置するための施設です。ロッカー式、棚式、仏壇式、自動搬送式など、遺骨を納めるスタイルはいろいろあります。跡継ぎが必要で引き継げるものと、跡継ぎ不要で一代限りのものがあります。

③樹木葬…墓石ではなく、樹木の下に納骨します。1区画を契約して、定員に達するまで家族で使うことができるタイプもあります。遺骨をそのまま土に埋める、専用の袋に入れて埋める、粉末にして里山の所定の区画に撒くなど、方法はさまざまです。

跡継ぎがいらないお墓(埋葬法)には、次のような選択肢があります。

<跡継ぎがいらないお墓、一代限りのお墓(埋葬法)>

①永代供養墓・集合墓…寺院やお墓の管理者に管理してもらえる一代限りのお墓です。33回忌など一定期間が過ぎたら、合葬(他の遺骨と一緒に埋葬)されるのが一般的です。夫婦で入る「夫婦墓」というタイプもあります。

②共同墓…集合墓とかたちは似ていますが、会員組織になっているという特徴があります。

③納骨堂…遺骨を安置するための施設です。跡継ぎがいらないタイプもあります。

④樹木葬…跡継ぎがいらないタイプもあります。

⑤その他…遺骨を宗派の本山に納骨する「本山納骨」、お寺に納めた遺骨を粉状にして土に混ぜて仏像を作る「骨仏」、粉末にした遺骨を船から海に撒く「海洋散骨」などがあります。

最近では子どもがいても負担にならないように、あるいは費用を比較的安く抑えるために、前述のような「跡継ぎのいらないお墓(埋葬法)」を選ぶ人も増えています。

一般的な家墓の場合、お墓はお寺など宗教と結びついていることが多いので、宗教も重要なポイントです。一般的な寺院墓地は檀家のためのお墓であるため、納骨時にはそのお寺またはその宗派の戒名をつけることが求められます。「戒名はいらない」「自分で戒名をつけた」といって、トラブルになる例もあるので、注意が必要です。

宗教にとらわれたくないのであれば、宗教宗派を問わない「民営墓地」や「公営墓地」が選択肢になります。

跡継ぎのいらないお墓でも、永代供養墓や本山納骨、寺や教会などの納骨堂は、宗教宗派が関係してくる場合もあります。宗教宗派にとらわれたくないのであれば、民営墓地の集合墓や納骨堂、共同墓、樹木葬、海洋散骨などが選択肢になるでしょう。

墓地に墓石を建てる家墓の場合、「墓地の永代使用料」と「墓石代・工事費」などの合計で、150万~500万円程度かかります。利便性の良い都市部は永代使用料が高いが墓石は小さめ、都市部以外では永代使用料は安いものの、墓地が広くお墓全体が大きくなるので墓石等の代金が高くなります。その結果、かかるお金はあまり変わらないようです。

永代供養墓や集合墓、共同墓、納骨堂、樹木葬は、家墓より費用は安くなります。ロケーションや設備、個別か合葬かによりますが、数万円~数十万円です。跡継ぎ問題に加えて、お墓にお金をかけたくないからと、これらを選ぶ人も増えています。

親が亡くなったあと、親族に「立派なお葬式を行え、お墓をつくれ」と言われて、葬儀費用とお墓の購入費用として数百万円の借金を背負ってしまったという若いご夫婦の話を聞いたことがあります。小さいお子さんを抱えていて、これからお金がかかるときになのに、どうしたら良いのかと途方にくれていたそうです。

お墓や埋葬のかたちは変わりつつあります。お墓のために、子どもなどに多大な借金を背負わせるようなことはしてはいけません。お金に余裕がないのであれば、従来型のお墓以外の選択肢も検討しましょう。

死後のことで、遺族に多大な負担をかけるのは避けたいものです。お金の問題以外にも、お墓が遠方や交通機関で行けない場所にある、広大な霊園の入口から遠いところにお墓があるなどの理由で、お墓参りが大変という事例もあります。

自分を弔ってくれる遺族がいるのであれば、その人たちの意見も聞いてみましょう。子どものためにと立派なお墓を購入したものの、子どもにとっては迷惑ということもあるのです。逆に遺族の負担にならないようにと海洋散骨を選んだものの、故人を偲ぶ場がないことで寂しい思いをする可能性もないとは言えません。

最初に書いたように、一度納骨してしまうと、簡単に移動することができません。常識にとらわれすぎないこと、思いつきで行動しないことが、終活でお墓や埋葬法を考えるときに気をつけたいポイントです。前述したような、お墓の役割や、選ぶときのポイントを考えながら、お墓の終活をすすめてみませんか?

(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)