目次

  1. 1. 減価償却費は代表的な経費の1つ
  2. 2. 不動産所得と他の所得との損益通算による節税
  3. 3. 注意したい節税のデットクロスのリスクとは?
  4. 4. 減価償却費による節税は課税の先送りにすぎない

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そもそも減価償却とは何なのかを先に解説します。賃貸アパート経営では、収入から経費を控除して利益を求め、この利益(年額)に対して所得税が課税されます。所得税法上この利益を不動産所得と呼びます。ここで経費とは、収入を得るために直接必要なコストを意味します。そして、減価償却費は、家賃収入(果実)を生む建物(元本)の経年減価分であり、代表的な経費の1つです。

賃貸アパート経営の利益計算と減価償却費
賃貸アパート経営の利益計算と減価償却費

賃貸アパートを購入又は建築した時点で多額の購入代金又は建築代金等の建物取得コストを支払いますが、この建物取得コストは現金支払時点ですべて経費にできません。建物取得コストは、建物取得後一定の使用可能年数(法定耐用年数)にわたって規則的に配分されて徐々に経費化されます。このように建物取得コストを法定耐用年数にわたって配分することを減価償却といい、各年に配分され経費となる金額が減価償却費です。

減価償却のイメージ図
減価償却のイメージ図

なお、土地も家賃収入を生むために必要な投資元本ではありますが、建物と異なり物理的に滅失しないため、経年減価分としての減価償却費を経費とすることはできません。

建物取得コストを経費化する期間である法定耐用年数が短ければ、その分建物取得後早期に多額の減価償却費を計上することができます。そして、中古建物を購入した場合には、経過年数に応じて耐用年数を短くできる税務上の取扱いがあります。

具体的には、取得後の使用可能年数を見積もって耐用年数とします(見積法)。ただし、取得後の使用可能年数の見積りが困難な場合は、大規模な改良をしていない限り、次の算式で計算した年数を耐用年数とすることができます(簡便法)。

【簡便法の算式】
法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数×0.2=耐用年数

法定耐用年数の一部を経過した資産
法定耐用年数−(経過年数×0.8=耐用年数

よく減価償却で節税できるといわれている理由は、この中古建物の耐用年数の「簡便法」と「損益通算」の仕組みを利用する方法があるためです。例えば、会社役員の方が中古賃貸物件を購入して家賃収入を得ると、給与所得と不動産所得の2種類の所得が得られますが、中古建物の耐用年数について「簡便法」を適用すると取得後早期に多額の減価償却費が計上され、不動産所得が赤字(マイナス)となる場合があります。そして、この不動産所得の赤字(マイナス)は給与所得から控除できるため所得税の節税になるというわけです。このように不動産所得の赤字(マイナス)が他の所得から控除される仕組みを、所得税法上、「損益通算」といいます。

損益通算のイメージ図
損益通算のイメージ図

このような中古建物の耐用年数の「簡便法」と「損益通算」の仕組みを利用した極端な節税スキームとして、国外の中古賃貸物件を取得するスキームがありましたが、令和2年度税制改正で国税庁のメスが入り、既に封じ込められています。

いずれにしても、相続した土地に賃貸アパートを建てても中古建物ではないので、上記のような減価償却での節税はできません。

上記のように減価償却を単に節税の道具としてか見ていないと、不動産投資において思わぬリスクが生じるため注意が必要です。

例えば、中古賃貸物件を多額の借入金で購入することを検討している場合には、デットクロスのリスクに注意する必要があります。デットクロスとは、借入金の元金返済額が減価償却費を上回る状態のことをいいます。実際には、減価償却費がゼロとなる耐用年数満了時以降にこうした状態になるケースが多いです。

デットクロスの状態
デットクロスの状態

減価償却費は、現金支出を伴わない経費ですので、家賃収入のうち減価償却費分が所得税の課税なく残ります(これを減価償却の自己金融効果といいます)。一方、借入金の元金返済額は、現金支出を伴うため資金がどんどん減少しますが、不動産所得の計算上経費になりません。したがって、デットクロスの状態になると、所得税の負担がより重くなり、借入金元金返済の負担もあいまって資金繰りが悪化します。これが進行すると、不動産所得の決算書上では利益が出ていて黒字でも資金がショートして倒産という黒字倒産が起きてしまいます。

中古建物の簡便法による短い耐用年数で早期に多額の減価償却費を前倒しして計上することで所得税が節税できても、耐用年数が過ぎ、減価償却費がゼロとなればその分利益が増え所得税も増えますので、こうした減価償却費による節税は単なる課税の繰延べ(課税の先送り)にすぎません。デットクロスのリスクを考えると、借入金割合を落として自己資金割合を上げるとか、物件売却のタイミングとか、新たな物件を購入してまた減価償却費を計上すること等を検討する必要が出てきます。

不動産投資を行う上で、所得税の節税も意識すべき事項ではありますが、所得税の支払いも不動産投資全体のキャッシュ・フローのひとつの項目にすぎません。最終的に手元にキャッシュが残っていかなければいくら所得税が節税できても意味がないのです。したがって、所得税の節税だけにとらわれず、不動産投資全体のキャッシュ・フローを意識した賃貸経営ができる方が、不動産投資に向いているといえます。

もっとも、不動産投資に当たっては、所得税や固定資産税等の税金の取扱いや不動産賃貸市場の分析等の専門的な知識も必要となります。ただし、不動産投資を行う方がこれらを1人で全部やる必要はなく、税金に関する相談は税理士に、不動産賃貸市場の分析や物件選定等の不動産投資に係る相談は不動産鑑定士に、賃貸開始後の賃借人とのトラブル等は不動産管理会社や弁護士に適宜相談する体制を構築し、自身はキャッシュ・フロー管理に注力するのをお勧めします。

(この記事は2021年3月1日現在の情報に基づきます)

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