目次

  1. 1. アパートを相続すると確定申告が必要に
  2. 2. 必要経費のなかでも押さえておきたい減価償却費
  3. 3. 青色申告のメリットは「青色申告特別控除」
  4. 4. 不動産所得がマイナスになったら

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会社員は、年間の給与収入が2000万円を超える人や、2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人など一定の条件に当てはまる場合を除き、勤務先が所得税(復興特別所得税を含む)を源泉徴収してくれるため、確定申告をする必要はありません。

会社員でも、医療費控除、住宅ローン控除(1年目のみ)、ふるさと納税をして寄付金控除を受けたい場合などは確定申告をします。これは還付申告といい、払いすぎた税金を取り戻したい人が任意で行う申告で、必ず行わなければいけないものではありません。しかし、相続によってアパート・マンション・貸家など(以下アパート)を取得した人は「不動産所得」が生じるため、会社員であっても毎年確定申告をしなければいけません。

税金は、「所得」に対してかかります。所得と混同しやすい言葉に「収支」がありますが、収支とは「収入」と「支出」という実際のお金の出し入れの差のことをいいます。
収支は次の式で計算します。
  収支 = 収入 - 支出 
収入が支出よりも多ければ手元のお金が増え、反対に、支出が収入よりも多ければ手元のお金が減りますが、収支と税金は関係がありません。

一方「所得」は次の式のとおり、「収入」から「経費」を差し引いて計算します。
  所得 = 収入 - 経費(必要経費)
経費は、「必要経費」ともよばれていますが、税務上、収入を得るために必要と認められている費用のことで、支出とは必ずしも一致しません。支出は実際に出ていくお金のことですが、必要経費の中には、実際にお金が出て行かなくても費用として認められたり、反対にお金が出ていったにもかかわらず費用として認められなかったりする科目があります。計算の結果、所得がプラス(黒字)になると所得税を納めることになります。

アパートの必要経費には、次のようなものがあります。

「減価償却費」は、実際の出費ではありませんが、税務上必要経費とすることができます。
減価償却とは、建物や設備などの資産の取得にかかった費用を、取得した年に全て必要経費にするのではなく、その資産の使用期間に渡って少しずつ必要経費(減価償却費)として計上することをいいます。資産の税務上の使用期間を「法定耐用年数」といい、建物については構造や用途により定められています。

減価償却費は次の式で計算します。
  減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率 ×使用に供した月数/12か月
  ※1998年4月1日以降に取得した建物は定額法のみ

たとえば、建築費3000万円の木造アパートの1年間の減価償却費は、
 減価償却費 = 3000万円×定額法の償却率0.046×12か月/12か月=138万円
となります。実際に出費した金額ではありませんが、減価償却費として138万円を必要経費にすることができます。

ただし、木造アパートの場合、法定耐用年数は22年です。そのため、相続した木造アパートが建築後22年以上経っていた場合、残念ですが減価償却費は必要経費にできません。また耐用年数まで残り少ない場合は、必要経費にできるのは数年だけということもあります。相続したアパートの構造や築年数を確認しておくことが必要です。

必要経費と同様、「青色申告特別控除」も確定申告で押さえておきたいキーワードです。
青色申告をした人は、青色申告特別控除という特典が与えられ、所得からさらに青色申告特別控除を差引くことができます。差引くことができる青色申告特別控除の額は、アパートの規模や記帳方法により最高10万円又は55万円又は65万円となります。

アパートの規模が10室(貸家は5棟)未満の場合、青色申告特別控除は最高10万円ですが、10室(貸家は5棟)以上の場合は事業的規模となり、最高55万円の控除が受けられます。さらに事業的規模かつ電子帳簿の保存またはe-Taxによる申告を行う場合は、最高65万円の青色申告特別控除が受けられます。

不動産所得が青色申告特別控除よりも少ない場合、控除しきれない分は他に事業所得があるときには、その事業所得から差し引くことができます。ただし、不動産所得と事業所得の合計額が控除できる限度額になります。

注意したいのは、相続でアパートを引き継いだ人は、親の青色申告者としての資格が引き継がれないということです。青色申告を行うためには税務署に青色申告承認申請書を提出しなければいけません。

相続の場合、青色申告申請承認書の提出期限は次のとおり定められています。

被相続人が青色申告者の場合

  1. 死亡の日が1月1日から8月31日の場合…死亡の日から4か月以内
  2. 死亡の日が9月1日から10月31日の場合…その年の12月31日
  3. 死亡の日が11月1日から12月31日の場合…翌年2月15日

被相続人が白色申告者の場合
死亡の日から2か月以内

青色申告特別控除は減価償却費と異なり、相続したアパートの築年数とは関係なく受けられます。また、青色申告には専従者給与や損失の3年間繰越など、他にもさまざまな特典があります。青色申告のメリットを活かすため、きちんと届出をすることをお勧めします。

1年間の収入よりも必要経費が多かった場合、その年の不動産所得は赤字になります。その場合、不動産所得の赤字分は給与所得、事業所得など他の所得から差引くことができます。会社員の場合、源泉徴収によりいったん所得税を納めていますが、不動産所得が赤字であれば、確定申告をすることにより、納めすぎた所得税は還付されます。

確定申告をするにあたっては、税金のしくみを知っておくと、節税対策にもつながります。
そのためには、正しい知識や新しい情報を入手することが大切です。分からないことは税理士などの専門家に相談しながら、申告を行うようにしましょう。

(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)

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